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君にワスレナグサとブーゲンビリアの花束を。

作者: 春藤優希



拙いので覚悟して読んで下さい。




 「星が…綺麗ですね。」

 ―――その言葉に秘められたこの気持ちを、キミは知りもしないだろう。



―2年前―


 大理石で作られた机に、輝くシャンデリア。その部屋の空間には絢爛豪華なものが多々ある。

 その中で二人の人物が椅子に座りながら、対談する。

 「へ?婚約者と結婚…?」

 ぽかんとした顔を浮かべながら、長い茶髪の少女―――純恋すみれは間抜けな声を上げる。

 「そうよ、あなたもあと二年で20歳でしょ?結婚するには丁度いいと思うの。」

 茶髪の髪を肩で切り揃えた凛とした女性は、純恋の大きく揺れた瞳に対して、全く表情を変えないまま静かに告げた。

 「ど、どうして?だってっ…「だっても何もないのよ。…わかるでしょ、純恋ちゃん?」

 純恋の言葉を遮って、凛とした女性は答える。純恋が長い茶髪の髪を大きく振り乱しながら椅子を大きな音を立てながら引くと、ガタっと音がする。すると純恋の前に座る女性は、冷たい―――笑っているけど笑っていない顔をしながら純恋を見つめる。

 「はしたないわよ。…笠井家の女たるもの感情的になってはいけないって、言ったわよね?」

 「…ごめんなさい、お義母さん。」

 椅子に座り直した純恋は視線を下に向けて唇をギュッと嚙み締めた。

 「じゃあ、明日相手の方に挨拶してきなさい。」

 「…はい。」

 凛とした女性はそれだけ告げると、音がしないような淑やかな動きでその場を後にした。純恋はひとり、震える唇を噛み締めながら俯いていた。

 その翌日の夜。純恋は普段着るフェミニンな服装ではなく、鮮やかな朱色のカクテルドレスを身に着けて、レストランの一室にいた。

 豪華な装飾が施されている内観を眺めながら、ふと思う。

 (待つのって結構、辛いな…。)

 そんな彼女の頭には、愛しい愛しい人の顔。

 (玲央れおっていつもこんな気持ちだったのかな?)

 ぼーっと考えながら、遠くを見つめる。

 「玲央に言ったら、何て言うのかな…。」

 と、口を零したとき、

 「遅れてすいません。仕事が長引きまして…。」

 テノールの低い声が響いた。その声にはっ、とした純恋は姿勢を正し、立ち上がる。

 「いえ、大丈夫です。お仕事お疲れさまでした。」

 筋肉が固まりかけた顔で笑顔を作りながらも、自分の未来の夫になる人の顔をまじまじと見る。勝手に決められた婚約なので相手の顔を見るのは今回が初めてだった。

 優し気な瞳に端正な顔、そこそこ高い身長。義母親が気に入りそうな感じの好青年に思わず顔をが引き攣ったが、相手に失礼のないように純恋は振舞った。

 それからの時間はあまりにも長く純恋にとっては、地獄のような時間だった。

 自分のことをペラペラと喋り、店員には偉そうに振る舞い、食べ方はとても雑。こんな人と結婚するのかと、痛感していた。

 (自分の愛している人だったら、私の長話を延々聞いてくれる。店員さんにも偉そうに接したりしないし、食べ方ももっと綺麗で…。)

 純恋はその時間目の前に座る人をその瞳に映しているように見せて、その人とは正反対の玲央のことを想いながら、その時間をやり過ごした。

 彼は大層純恋のことを気に入ったようで、「一週間に一回は会いたい」と言ってきた。純恋はただその言葉に二つ返事で返したのだった。毎週婚約者に会うのは、日曜日と決まった。純恋にとってその日は、最悪としか言いようがなかった。

 なぜなら日曜日は玲央と逢う日であったから。玲央と一緒にいれる時間が少なることが何より嫌だった。

 でも今日は土曜日。明日は玲央に逢えると、心を踊ろかせながら純恋は眠りについた。明日はいつも通りの日が来ると。

 だけど次の日、純恋は抑えきれない感情のままにふたつの行動を起こした。ひとつは、朱色の手紙を玲央が気づきそうで気づかないような場所に隠した。もうひとつは…。

 勉強に疲れて眠りについてしまった愛しい人。そんな無防備な彼を見つめるうちに涙が溢れだした純恋は、泣きながらも音を立てないように近寄り、頬に手を寄せ

 「あなた以外に興味なんてないの。あなた以外に…。」

 ぼたぼたと流れる涙を拭いもせず、玲央の唇にそっと口付ける。

 (初めてのキスなのに何の味もしない。ただ私の涙で玲央の唇が濡れていることしかわかんなかった。)

 このことを玲央が知ることはなかった。ただ、純恋と満月のみが知る行為だった。


***

 そして、20歳になるまであと3日と迫ったとき、純恋は玲央を旅行に誘った。

 (この旅行が最初で最後だから。これが私の最後の我が儘だから。)

 そんな思いを彼には気づかれないように、笑顔と表情で隠した。

***

 星空を眺めながら、今なら言えるんじゃないかと、純恋は二言の言葉を口にしようと声を出した。だけど、発した言葉は

 「星が…綺麗ですね。」

 だった。

 でも、この言葉に二重の意味を重ねて彼はいつか気づいてくれると信じて、言い直さなかった。それを後悔することはもうできないから別にいい、と。

 握りしめた掌を伝って、この想いが届いたらどんなに楽なのかな?と心で零しながら。

 次の日、純恋は日も登りきらない内に宿をたった。女将さんに花束と二通の手紙を預けて「花束とこっちの手紙を一緒に渡してください。そして、こっちの手紙は彼がまたここに来た時に渡してください。」そう、言った。

 そして、独りで東京に戻った。

***

 ガヤガヤとした場所で長い茶髪を揺らす少女。

 (最期に顔を見たかったな…。返事も聞きたかったな…。)

 大勢の人が行き交う駅のホームで、

 「ねぇ、知ってる?人間ってね、愛する人のためなら命だって惜しくないんだよ?」

 誰にも聞こえないようなそのささやかな声は、電車の音と人々の声で搔き消された。


 少女の身体と電車がぶつかる合う一瞬前、少女は満面の笑顔を浮かべた。




 『これで、私の心は永遠に玲央あなたのものになる。』

 





 

 



 『〇〇駅で人身事故が起きたため――――――。』

 「くそっ!!こんな時に人身事故かよっ!」

 青年の怒りの声が遠い場所で響いていた。



お目汚しました。

感想等していただけると恐悦至極にございます。

ちゃんとして書きたい気もするのですがお試し的な漢字で書いてるので所々省いております。

ちゃんと読みたいと言ってくださる御方がいらっしゃったら、ちゃんと書きます。


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