繰り返される転生と閻魔様の憂鬱
ユーモア欠乏症は回れ右。
閻魔大王…
それは仏教やヒンドゥー教において死者を裁く冥府の王の俗称・総称である。
雅なお子様に笏を盗まれて困り果てたり、いい歳しておしゃぶりが取れない自分の子供の不始末に内心で右往左往したり、超人猿のオレツエーに振り回されたり、酸漿が怖かったりする情けない姿はそこには無い。
超絶、超然、超越…本来有るべき姿の閻魔大王がそこには居た。
「ねぇ鬼助ぇ、最近ワシを通さないで好き勝手に異世界に転生するガキがやたらと多いんだけど、アレはどういう事?」
……いや、居なかった。
鬼助と呼ばれた赤鬼は台帳をペラペラとめくって答える。
「閻魔大王様、最近なろうなる場所において物書き風情が勝手に死者の魂を異世界に送り込んでいる様にございます。」
その数一月に数百は下らないというから、さしもの閻魔大王もびっくり仰天である。
「何かの手違いで死んでしまったので生まれ変わらせてあげますって、それじゃまるでワシが悪いみたいじゃんねぇ。」
鬼助から受け取った資料を眺めながら閻魔大王は不満を口にする。
それはそうだ、人の寿命は閻魔大王が持つ閻魔帳によって管理されているのだから不手際が有れば閻魔大王の責任問題になってしまうのだから。
「全くにもって左様に御座いますな。」
鬼助も現場の対応に追われ中々に大変な様である。
「嫌よ、極楽の釈尊から呼び出し食らうの。」
閻魔大王、ちょっと言葉がオネェである。
貴方もその釈尊の人格の一つじゃ無いですかとツッコミを入れるのを鬼助は我慢する。
「しかもその異世界に転生した連中、その殆どが行方不明というデータも御座います。」
……。
鬼助の言葉に閻魔大王は目を見開いて絶句する。
「なっ、何故じゃ?魂が消えて分からなくなる等と…。」
先程までの緩いオネェの入った閻魔大王はそこには無かった。
六道を外れても尚、魂は彼の管理下に有るのだから基本的に行方不明という事態その物が起こり得ないのだ。
「いえ、全てとは言いませぬ…文庫化のウェーブとやらに乗ってウハウハな作k…いえ、魂も年に数人程居りますが。」
突然リアルタイプ閻魔大王になった彼の上司に鬼助は報告を続ける。
「その様な成功した魂を覗き見たなろうなる集団の物書き風情が何千匹目か知りませぬがドジョウを求めて群がった結果、斯様な事態が起きているようで御座います。」
閻魔大王はリアルタイプを解くこと無く今度は目を瞑り深呼吸をして鬼助の報告の続きを促す。
「それだけなら魂は行方不明等には成りませぬが、何分勢いだけでガキを異世界に放り込む物ですから後が続きませぬ。
大方途中でアイデアも浮かばず途中で飽きて止めてしまうのでしょう。」
アイデアが浮かばないからと放置されたら浮かばれない。
閻魔大王はちょっと上手い事思い付いた等と思いながらリアルタイプの顔を崩さずに居る。
彼的に飽きてきたのだ。
それを察した鬼助が締めに入ろうとする。
「閻魔大王様、なろうの物書き共に何か言ってやってください!」
stop ワンパターン
あなたが書かない事で救われる命があります。