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解き放たれた欲望

 虫の音も止み誰もが寝静まる深夜。

 ぽつりぽつりと灯りはあるものの、全てを照らせるわけもなくその殆どを暗闇が占めている。

 するりと音をたてずに寝床からでると、シンっとした空気に身を震わせる。

 やはり夜はいい。

 俗世のしがらみや、道徳観念などそこには存在しない。

 誰もいない。

 誰も見ていない。

 夜の空気を全身で感じるには些か衣服これは邪魔すぎる。

 私は邪魔な衣服これを無理矢理はずし夜の世界へ足を踏み込む。

 誰もいない。

 誰も見ていない。

 誰も咎めない。

 私は自由だ!

 身も軽く、心も軽く、軽やかに駆け出そう!

 夜の世界へ!!

 私は自由だ!!



 ーーそして彼は走り出す。灯りの無い夜の世界へ。 ……全裸で。



 いらっしゃいませ、こんばんわ。

 又のご来店ありがとうございます。


 真夜中、客足が途絶える頃に気分転換によく外にでます。

 初夏を迎える時分、日中の蒸し暑さも相まって深夜の心地よい風がとても体に染み渡ります。

 店内に居っぱなしだとクーラーで体の芯まで冷えてきそうで、やはり涼をとるなら自然風ですよね。

 人も車も通る気配がない店舗前。

 ちょっと店舗横に移動して制服脱いで涼みたい誘惑にかられます。

 むしろ誰も来ないんだからマッパになってもいいんじゃね?

 などという頭の沸いた考えが浮かびますが、流石にしません。してません。

 無性に奇声をあげて走り出したくなる時はありますが。


 そんな益体もない事を考えながら定番のゴミ箱の掃除をしていると、カッカッカッカッカと何か固いものが当たる音と共に、


「はぁっはぁっはぁっはぁっ」


 という息切れが聞こえてくる。

 ああ、またか。

 音のするであろう暗闇に目をこらしているとそのお客さんが現れる。


 夜間に疾走する全裸の逃亡者!




 はい、脱走常習犯の飼い犬のクロ(仮)君です。

 首輪抜いているので間違いなく全裸です。

 いやー流石に全裸の人間が走っている所はみたことないですよ。

 パンイチはあるけど。

 

 あちらもこちらを認識したようで、一旦スピードを落とすとやや駆け足程度の速度のまま目を合わせたまま通過するとまた一気に駆け去っていきます。

 いやーどこまで走ってるんですかね?

 仕事中なんで追いかけはしませんが。

 このクロ君、店舗から1キロほど離れたお宅のわんこなんですがよく脱走する。

 知ったわんこなので、最初のうちは保護しようと頑張りました。

 無理でした。

 そうこうするうちに、早朝の散歩(リード&人付き)時にコミュニケーションを重ね今では、走り回った後に店舗横で眠り朝を迎える事が多くなりました。

 水桶とか、とりからなどの軽食与えたのが原因ですかねぇ?

 たまたま暇だったので(本当ですよ?)復路のクロ君を店頭でぼーっとまってたら、でろ~んと舌をだして変質者かとおもうほどはぁはぁいっていたのでつい……

 (餌付ける前はちゃんと自宅に帰っていたそうです)



 とりあえず、家に帰ってから寝ろよ!

 早朝、何時もの散歩の時間に首輪とリードをもって飼い主が迎えに来るまで待ってんなよ!



 そんなクロ君、大人しいわんこでとても賢く(?)特に吠える訳でもなく、飛びかかる訳でもなく、車道は決して走らずに歩道と隣接する田畑を駆け回っていたようです。

 最低でも月1で来店したでしょうか?

 最終的には店舗入り口の扉(自動ドアではないのです)に体当たりかましておっさんに水を要求するようになりましたとさ!

 ぬことちがってもふらせてくれるからいいのだけどね(笑)

 ちなみに私服で会うと警戒される不思議!



 最後までお読み頂きありがとうございます。

 またのご来店お待ちしております。

クロ君はご家族の元、老衰でお亡くなりになりました。

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