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企画もの

『拝啓。ピンクの貝殻、青いチョーカー様へ』 ~2017GWコラボ企画~

作者: 小田虹里

「ゴールデンウィーク:コラボ企画」


リュフ・ソボンさん

小田虹里


「なろう」にて、仲良くさせていただいてます、リュフさんとのGWコラボ企画!!


挿絵:リュフさん

文章:小田


二枚のお題をもとに、3000字~5000字程度の短編を描きます。


リュフさんのコラボ作品には、小田の挿絵が使われます。


リュフさんの作品はこちら


http://ncode.syosetu.com/n7402dy/



それでは!


GWコラボ企画、スタートです!!



『拝啓。ピンクの貝殻、青いチョーカー様へ』



 覚えていますか。

 

 あの、照りつけるほどの眩しい日差しの中。


 あなたはずっと海を見て、待っていましたね。


 今、私はまた「あなた」に会いたいと、旅に出ます。




挿絵(By みてみん)




 今から、もう十五年も前のこと。当時、三歳だった女の子……名を、「未来」という少女は、GWに家族で旅行に出かけていた。

 少女が住んでいる県は、海に隣接しておらず、山や川ばかり。そこで、父親が「海」という世界を見せようと、電車を乗り継ぎ旅館泊まりの計画を立てたのだ。


 そこで、少女はある「青年」と出会うこととなる。



「ママ、パパ、いってくる!」

「危ないから、待ってなさい。ママもパパも、もう少しで支度できるから」

「やだぁ!」


 きゃきゃっと笑い声をあげて、少女は目の前に広がる大きな青い「水の世界」へ向かっていった。こんなにも広く、そして青い世界を少女は知らなかった。大きなまんまるの瞳を輝かせて、「うわぁ!」と歓喜の声をあげる。

 小さな足には、小さなピンク色のサンダル。砂浜を歩くと、足がズズズッ……と、うまっていく。子どもには、その感覚すら面白い。笑顔が止まらず、少女は何度もアツアツの砂の上に足をうずめ、足をあげては、またうずめ……そんな単調なことを繰り返しながら、笑っていた。


 もう少しで支度できる。


 そういう割に、子どもからみると大人の「支度」というものは、時間がかかる。大人が来ない間に、少女、「未来」の中では好奇心が膨らんでいた。未来の探求心は、他の子どもよりもひと際高く、どこまでもひとりで突き進んでしまう傾向があった。


「あ!」


 未来が見たものは、ピンク色の貝殻だった。よく見ると、ところどころにピンク色の貝殻が落ちている。もちろん、ピンクだけではなく、茶色や黒っぽい、あまりパッとしない貝殻がほとんどだ。しかし、未来の目には「ピンク」しか見えてはいなかった。


「きれいねぇ!」


 ひとつ、またひとつ。


 未来は、貝殻を拾っていく。不思議と、海には近づかなかった。身体が小さすぎる未来にとって、青く偉大なる世界の「青」は、ちょっとだけ怖かったのかもしれない。ザザーッと水が来るギリギリのラインまでしか歩み寄らず、砂浜の上をトテトテと歩き、ひとつ、ふたつと貝殻を拾えば、またひとつは手から貝殻がこぼれ落ち……それを繰り返し、気づいたときには、旅館なんて見えないほど遠くへ……ゴツゴツとした、岩肌の目立つところまで、やってきてしまっていた。


「ママ、パパ…………?」


 あまりにも「ひとりぼっち」になってしまった未来は、だんだん心細くなってしまった。夢中で拾い集めたピンクの貝殻は、小さな手のひらに六つだけ。ほとんど、落としてしまっている。


「ママ! パパ! どこー!」


 声をあげる。


 しかし、ママもパパも居ない。


「ひっく、ひっく…………うぇ、ママ、パパぁ」


 とうとう、泣きだしてしまった未来。大粒の涙がボロボロと頬を伝う。目を閉じて、エンエンと泣き叫ぶ未来は、心底、寂しくて、心細かった。


 ふわり。


 そんな未来の頭を、撫でる者が現れた。未来は当然、ママとパパだと思って、パっと目を開け笑顔で上を向いた。


 しかし直ぐに、きょとん……とした顔へと変わる。


「だぁれ?」

「…………」


 茶色の髪をベースにした、青年。しかし、サイドの髪には青のメッシュを入れている。中肉中背で色白。黒い瞳は、くっきりとした二重。しかし、やや切れ長。スッと上がった眉に、サラサラした茶色の髪がかかっている。鼻筋も綺麗に通り、唇は薄くて口角が上がっている。首元には、青いペンダントが輝くチョーカー。


「親御さんと、はぐれちゃったの?」

「おやご?」

「パパと、ママ。いなくなっちゃったの?」


 とても、優しい声だった。すべてを包み込むような、あったかい音域。聞いているだけで、とろけてしまうほどの美声。


「うん。いなくなっちゃったの。みらい、ひとりなの」

「そっか。寂しいね。じゃあ、帰ろう?」


 青年は一度、海に視線を移した。何かとコンタクトをとっているかのように、ひとり、頷く。その様子を、未来はただ「何だろう?」と、ぽかんと見つめるだけだった。


「未来ちゃんっていうんだね。さぁ、帰るよ」


 青年は、未来の小さな手を取ろうとして、その小さな手の中に、ピンクの貝殻があることに気が付いて、手を一度引っ込めた。


「桜貝を拾っていたんだね? 可愛いよね。僕も、大好きなんだ」

「これ、すき?」

「うん」

「じゃあ、あげる!」

「え?」


 未来がにっこりと、ピンク色の貝殻を、青年に向かって広げた。それを見た青年は、驚いた顔をして目を見開いた。黒く優しく光るその目には、もっと輝く少女の笑顔が映し出されていた。

 それを見て、青年はくすりと笑みを浮かべると、素直に受け取った。


「ありがとう、未来ちゃん。それじゃあ、僕からはこれをあげるよ」


 青年は、自分が身に着けていた青色のチョーカーを外して、未来の首につけてあげた。青年にとっては、チョーカーサイズだが、まだまだ小さい未来にとっては、ちょうど「ネックレス」サイズになる。

 キラキラとしたものは、女の子なら大人でも嬉しい。子どもである未来にとっては、それはもう、「貝殻」よりも素敵な「宝石」だった。


「わぁ! きれい!」

「とても似合ってるよ」


 泣き止んでくれたこと。


貝殻をくれたこと。


それが、青年にとっては嬉しいことだった。


「さぁ、行こう?」

「うん!」


 手をしっかり繋いで、未来は青年とゆっくり、来た道だと思われる砂浜を、歩いて行った。


 しばらく歩くと、ひとの気配がしてくる。まだ、そこまで日が傾いた訳ではないが、騒々しい。未来が居なくなったと、周りのひとに両親が頼んで、探しはじめていたのだ。


「ここまで来たら、もう、大丈夫だね」

「あ!」


 未来の目に、血相を変えたママとパパの顔が映る。すると、未来は青年から手を離して、ぺたぺたと砂に埋もれながらも、ママとパパに向かって駆け出した。首にさげてもらった、青いペンダントがキラキラと輝いている。


「ママ、パパ!」

「未来! もう、居なくなっちゃダメじゃない……心配したのよ!」

「無事でよかった、未来」


 未来には、事の重大さが分かっていない。ただ、またママとパパに会えてほっとしているだけだった。無邪気な笑みを浮かべている。


「あら? 未来、そのネックレス……どうしたの?」

「本当だ。そんなもの、持ってないだろ? 拾ったのか?」

「んーん? もらった!」


 そこではじめて、未来の頭の中に「青年」の姿が蘇えった。ついさっきまで一緒に居た場所を振り返って、「あのひと!」と、指をさす。しかし、そこには誰かが居た形跡がない。


「?」


 砂浜に残った足跡も、未来の小さなサンダルだけ。大人のような大きな足跡は残っていない。


「おにーちゃん?」


 少女は、きょとんとしたまま、しばらく今度は「青い世界」を見つめていた。



「懐かしいな……この、旅館だった」

「おや、あんたは?」

「こんにちは、おばさん。十五年前に私、ここで素敵な体験をしたんです」


 胸元には、青いチョーカーが光っている。それを見た四十代ほどのおばさんは、見覚えがあると頷いた。


「名前までは憶えてないが……そのペンダントの不思議ちゃん。あんた、よう来たねぇ」

「えへへ。このチョーカー……当時は、ネックレスサイズでしたよね」

「なんだっけ? 男のひとにもらったんじゃろ?」

「えぇ、そうなんです。とっても格好いい……私の、一目惚れなんです」

「そんなひと、おらんけぇよ?」


 おばさんは、未来の言葉を「冗談」と思っている。当時も、今も、誰も未来の体験談を信じては居なかったのだ。未来自身、正直なところ真相がどうだったのか、分からなくなりつつあった。


当時三歳の記憶だ。


しかし、確かなものがある……青いチョーカー。


「私、会えると思うんです。そのひとに」

「そうかぇ? まぁ、行っておいで? 迷子にならんようにな?」

「はい!」


 少女は、西に向かって駆け出した。岩肌がある方角だ。

あのときと、同じ時期。GWを利用して、少女は高校三年生の本格的受験戦争突入前に、この、もやもやとした記憶とこころに決着をつけるため、ここまでひとりで出向いたのだ。

 家を出る前に、未来は部屋でひとり、手紙を綴ってきた。その手紙を渡す相手に、会える保障はどこにもない。それどころか、もしかしたら本当に、幻だったのかもしれない。それでも、やらずに後悔するくらいなら、やってみて後悔したいと、未来は一歩を踏み出した。


(会えなくてもいい。ただ、あのときあなたは、あそこで何を見ていたの?)


 眩しい日差しの中。


 大きな青い世界を、ひとり佇んで見ていた。


 あのときと、まったく変わらない姿の青年が……そこには、居た。


「!」


 青年は、未来を見て優しく微笑んだ。



 ~私の一目惚れさんへ~


 はじめまして……じゃ、ないか。

 私は、「築城未来」といいます。

 あのときのこと、覚えていますか?

 十五年前のGW……私は、この海であなたに助けていただきました。

 ピンク色の貝殻を、あなたへ。

 そして、私は青いチョーカーをいただきました。


 あのときの出会いを、誰も信じてはくれません。

 

 正直、私もだんだんと、自信がなくなってきているのです。

 でも、あなたに救われたこと、そして……。


 あなたに、一目惚れをしたという事実は、変わりません。


 私は、このチョーカーを「あなた」との最初の思い出にしました。

 ずっと、ずっと、大切に身に着けてきました。


 おかげさまで、今日まで無事に、元気に生活できました。


 ただ、願いが叶うのならば……もう一度だけ。

 あなたに、会いたいと思うのです。


 どうか、私のワガママを聞いてください。

 この想いを、手紙に残します。


 この海の世界の、どこかに居る「あなた」へ。




挿絵(By みてみん)




2017.5.1~ GWコラボ企画 With リュフ・ソボンさん  Thanks!



 はじめまして、こんばんは? 小田虹里です。

 本日、五月一日にございます。GWがはじまって、中二日の平日です。


 今回は、「リュフ・ソボン」さんと一緒に、GWコラボ企画ということで、挿絵お互いに2枚描いて、それをもとにストーリーを3000字~5000字内で描き、短編をつくる! そういうものでした。


 小田は、「駅にいる少女」と、「手紙」という、なんとも素敵なイラストをいただきました。


 さて、どうしたものか。


 基本的に小田は、ファンタジーを好んで書いております。現代ものって、そんなに書いていなくて。これを、どうファンタジーへ飛ばそうか。そんなことばかりを考えていました。

 

そして、考えながら寝ておりました(笑


 しかし、なんか書いているうちに、不思議な話へ……。うん、小田としては、これで満足いたしました! 皆さま、いかがでしたでしょうか。


 リュフさんは、私の描いた二枚の絵でどのような作品を書かれたのか。そっちの方が楽しみで仕方がありません! 現段階では、まだお互い完成作を知らない状況なのです。


 「挿絵」ということを、小田はしたことがなかったので、やり方がわからなくて。リュフさんに教えていただきましたが、これで出来ているのかな?


 リュフさんのコラボ作品URLは、こちらとなっております。




 是非ぜひ、皆さま。お話、楽しんでいただければと思います!!


 最後となりますが、このたび、素敵な企画を一緒に考え参加させてくださったリュフさん。

 そして、読んでくださった皆さま。本当に、ありがとうございました!!


 また是非、このような企画を立ち上げられたらいいなって思います。

 今後とも小田虹里とリュフ・ソボンさんを、よろしくお願いいたします! 2017.5


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― 新着の感想 ―
[良い点] 花鳥風月と言うのでしょうか、大自然の煌めきが感じられる美しい小説でした。 主人公《未来》の視点から書かれているので、未来ちゃんの気持ちを感じ取れました。 [気になる点] 台詞に対して地の…
2017/05/03 21:00 退会済み
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