1話 新人冒険者
初投降練習作です。主人公の個性を出来るだけ無くした作品ですが、ひょっとしたらその内人格を付けて再構成するかもしれません。
R15と言うほどではありませんが、エロ系統は控えめですので安心?してお読みください。
「ほう、冒険者か。しかし、小汚い食いはぐれ共とは違って腕がたちそうだ。期待させてもらおう」
眼帯をした隻眼の男はそう言うと、羊皮紙に書かれた貴方の経歴に目を通し、インクに浸した羽ペンを羊皮紙に走らせた。
冒険者協会人事部部長、グラヴィス・バナー。
厳つい外見に似合わず流麗な文字で書かれたそれは、貴方の面接を務めた隻眼の男の名前だ。
現在最も盛んなアドベンチャーズ・ソサエティ、エレシア支部の部長ともなればそれなりの立場にあるはずなのだがと、貴方は少し面食らった。
「はは、なにせ人手不足も甚だしいからな。さっきも言ったが、周辺の食い詰めた餓鬼共が着の身着のままで冒険者になろうとやってきやがる。その対応でてんやわんやよ」
隻眼の男グラヴィスはそう言うと、男臭く笑った。
言葉遣いは乱暴なようだが、その行き場の無い子供達を疎ましくは思っていない様だ。
どうやらグラヴィスは、男臭い見た目そのままの兄貴肌であるらしい。
「だからこそ期待しているぞ新人。多少の腕がたち、装備も確りと整えている、そんな手のかからなさそうな奴は大歓迎だ。ほらよ、こいつを新規受け付けカウンターに持っていけばお前はもう冒険者だ」
サインの入った羊皮紙を受け取った貴方はグラヴィスに軽く頭を下げ、簡易な敷居に遮られていただけの面接室から退室した。
クリフォト王国。それが貴方が今いる国の名前だ。
この国はセフィロト王国と双璧を成す冒険大国で、その名の由来となったセフィロト天塔とクリフォト地塔と言う大迷宮をそれぞれが有していている。
そんな国の一つに訪れた貴方と言えば、当然冒険者になるためにやって来た有象無象達の内の一人である。
ここから何者でも無い一人として生きるか。それとも富と名声を得て英雄となるか。
それは全てこれからの貴方のしだいである……
◆
「……おかね……ください」
アドベンチャーズ・ソサエティを出て、宿を探そうと町を歩いていた貴方にそう言ったのは、みるからに浮浪児然とした子供だった。
貴方が纏うローブの裾を掴んだ手は、骨と皮だけとしか思えない枯れ枝のような細さ。その体は垢にまみれて赤茶け、申し訳程度にかぶった服は襤褸切れ一枚だけだ。
まともな人間なら病気が移る、汚れるだろうと叱りつけ、荒っぽい人間なら蹴り飛ばすような状況だ。
「おかね…ください。おねがい…します」
しかし何も言わず、蹴り飛ばしもしない貴方に、浮浪児は怯えた目をしながらも必死に言葉を繰り返した。
これはいったいどうしたものか。貴方は頭を悩ませた。
当たり前の話ではあるが、浮浪児を一々相手にはしていられない。
人間同士の戦争が遠い過去の物となった現在、戦争孤児の類はほとんど存在してはいないが。冒険者と言う兵士よりも死傷率の高い職に就く者が多い現代社会では、残された家族、特に子供が浮浪児となって、孤児院ですら受け入れられない程の数となっている。
それは、ほんの少しの善意で接するには余りにも多すぎる数であった。
中には国の方針で炊き出しなどを行う事を税金の無駄遣いなどと称し、社会貢献だと嘘ぶって彼等彼女等を狩り殺す不届き者が存在する程である。
「……なんでも、します。……なんでも、します」
貴方は仕方なく、家族はいるのか?と聞いた。
つい先ほど冒険者になったばかりで宿すら決まっていない貴方ではあったが、浮浪児の一人二人程度ならば使い道があった為だ。
「い、います。おとうとが、ひとりと、いもうとが、ひとり」
……三人か。貴方は少し頭を悩ませた。
今貴方が相手している浮浪児は酷く痩せていて解りづらいが、大よそ8歳前後と言った所だろう。
その弟妹ともなれば当然それ以下。とても使える年齢では無い。逆に手がかかるだろう。
だがそれも良いか。手間も暇もかけて手駒を育てても面白いかもしれない。と貴方は算段した。
幸いにも資金に多少の余裕があった貴方は、浮浪児に僅かばかりの銅貨を握らせ、今の生活を抜け出したければ明日の朝、アドベンチャーズ・ソサエティの入り口近くで待つように告げてその場を去った。
◆ B面 ◆
「レス、リア、ごはんだよ!」
「ほんと……ねーちゃん」
「わあ……」
今日、決死の覚悟と言葉通りの意味で物乞いをした成果で買った、三つの黒パンと干菜。私たちはそれを貪るように食べた。
孤児院にも入れない浮浪児である私たちは、国が1日に一度だけ行う炊き出しだけしか食料を得る事が出来ないのだが。
それは一食分だけ、それも全員には行き渡らない量しかなく、子供としても幼い私たちは、競争状態の炊き出しは満足に手に入れる事が出来ないのだ。
「ごほっ! ごほっ!」
「レス、もっとよくかんでたべなきゃだめ」
「がじがじ……」
水と食べれる草以外、殆ど一週間ぶりの御飯。空腹も限界を超えていたレスは固い黒パンを大して噛まずに飲み込んでしまったようだ。
仕方が無い弟だ。次に食事が取れるのが何時になるか解らないのだから、できるだけ味わって食べるのが良いだろうに。リスの様に黒パンを齧っているリアを見習って欲しい。
私は塩漬けされたキャベツの葉、干菜を少しづつ齧りながらレスの背中を撫でる。
「ごほっ、しぬかとおもった」
「がじがじ……」
ふふっ。でも良かった。これでもう少しだけ生きていられる。
私はもう何時死んでもいいけれど、レスとリアだけは何をしてでも生き残してみせる。
夢中になって黒パンを齧るレスとリアの痩せた顔を見ながら、私は新たに心に決めた。
「いまのせいかつからぬけだしたければ……」
私のような汚い浮浪児に服を掴まれても嫌な顔一つしなかった、優しい冒険者さんの言葉を思い出す。
だけれどそれは思い出すまでも無かった。何故ならずっと、起きている間なら、ううん、寝ていても想い願っている事だからだ。
だからこそ私は例え何があろうとも明日、アドベンチャーズ・ソサエティに行くつもりだ。
どの道このままでは他の浮浪児たちと同じ、誰にも見向きもされず、餓えて苦しんで死ぬだけなのだから。
例えそれが破滅への道だったとしても、僅かにでも希望があれば行く。
でもどうしてだろうと考える。私なんて、それも弟や妹も一緒に来いだなんて、なんの役にも立たないだろうに。
ひょっとして私の体が目当てなのだろうか? ……なんて考えて自分が情けなくなる。
冒険者だったお父さんとお母さんを亡くして、それから浮浪児になって一年。お風呂どころか水浴びすらほとんどできなくて垢だらけの汚い体。自慢だった金髪は茶色同然にくすみ、体は鳥がらの様にガリガリだ。そんな薄汚く汚れた、まだ10歳の子供である私なんて誰が見向きをするか。
……だからこそ不安だ。正真正銘、何の役にも立たない私たちに何の用があるのかと。行かないと言う選択肢は無いのだから余計に。
「ねーちゃんどーかした?」
「がじがじ……?」
「あ、ううん。なんでもないよ。でもあした、みんなでアドベンチャーズ・ソサエティにいくからね」
私は不安に苦しくなる胸を押さえながら、弟と妹に今日あった優しい、そして不思議な雰囲気の冒険者さんの事を話した。
願わくば、私の可愛い弟と妹に希望を……。
名前 XXXX
クラス エレシア新人冒険者 シャマシア初級冒険者
LV 10
HP 50 SP 50
能力補正
身体+30% 精神+30%
アドベンチャースキル
初級戦闘術《極み》 中級戦闘術《未熟》 初級魔法術《極み》
中級魔法術《未熟》 初級冒険術《極み》 中級冒険術《未熟》
装備
良質の鋼の剣 良質の鋼の部分鎧《全身装備》 良質の鋼の小盾
魔法の指輪《全属性》 冒険のお守り《犬》 冒険のお守り《猫》
所持金 500000エン