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本日最後の授業が終わり、清掃時間になった。
冬園元と宇垣智秀の担当場所は、同じ教室だ。
机と椅子を背面黒板に寄せて、箒を使ってゴミを一カ所に集める。冬園元は他の教室掃除の男子たちと雑談をしながら、適当に箒を動かしていた。
宇垣智秀を見ると、離れた場所で、黙々と掃除をしている。いつも周りに誰かがいるような中心的な男子ではないので、その光景は日常のものだ。しかし、今日だけは、その姿が物寂しく感じる。
――赤崎真純を保健室に連れて行くため、宇垣智秀が教室を留守にした、あの時。教室内では、彼を訝しむ声がいたる場所から聞こえていた。
いじめられている女子を必至に守ろうとする姿が、周囲の風景から飛び抜けていて、奇異だったのだ。
宇垣智秀は、この教室で異端者として認識され始めている。だから、誰も寄りつかないし、目も合わせない。
バカなやつ……。
俺が、注意してやったのに。
掃除も終わりに近づいた頃。
宇垣智秀は満杯になったゴミ袋を、誰に言われたわけでもないのに、校舎の外にあるゴミ集積所まで持って行く。
その後ろ姿を、みんなが横目で見ていた。そして口々に、彼のことを話し始める。まるで陰口を叩くように。
「なァ、やっぱ、宇垣って変だよな」
「赤崎のことか?」
「それもあるけどさァ……。なんか、宇垣ってつかみ所が無くてよ。なに考えてるのかイマイチわかんね」
「……だよな。オレもそう思う。あれだけやられてる赤崎をどうして守ろうとするんだろうな。メリットなんてなんも無いだろ」
「――まさか、なんか取引でもしたとか。守ってやるから、エッチさせろ、とか」
「ええっ、赤崎と宇垣がぁ? そりゃいくらなんでも、ありえねーだろ。……でも、もしそうだったら、面白いけどな。あの清純そうな赤崎と、お勉強のできる宇垣がそういう関係だったら」
男子たちの笑い声に、冬園は無言で箒を振るった。その内の一人の男子の尻に、箒の先が勢いよく命中した。
「ッテ、なにすんだよ、冬園!」
「くだらねぇ話ばっかしてんじゃねーよ。あいつが……そんなこと、するわけねぇだろうが」
苛立ちながら言って、冬園元は廊下に出た。
掃除用具入れのロッカーに、箒を戻し、荒々しくその扉を閉める。
〝僕のことを考えられるなら―――〟
耳の奥で、親友の言葉が思い出されていた。




