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砂漠に立つもの  作者: 三塚未尋
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今週、宇垣智秀は給食当番だった。

「全員揃った?」

教室の前に、白のエプロンを着た給食当番を全員並ばせると、配膳室まで率いていく。そこで、ご飯やおかず、汁物、食器などを受け取り、教室まで運ぶ。

宇垣智秀は一番楽な箸・スプーンの担当だ。

「おい、宇垣、ちょっと待てェ……」

箸が並べ入れられたカゴを持って配膳室を出ようとしたところで、配膳室内からの声に呼び止められた。声の主は、冬園元だった。

「冬園。どうしたんだ?」

「どうしたんだって……見りゃわかるだろうよ、手伝ってくれ」

冬園元は牛乳瓶の詰め込まれたケース担当だった。一本一本は軽い牛乳瓶も、十数本ともなると、かなりの重量。これを一人で持ち運ぶのは、なかなか骨の折れる作業だった。

「冬園ならこれぐらい一人で持てるだろう。甘えたこと言うなよな」

「バカ野郎、俺はさっきの柔道で指痛めてるんだぞ!」

「あ。そう言えばそうだったね」

柔道で技のかけ合いをしていた折のこと。冬園は何をどうやったか知らないが、利き手である右手の中指を突き指したのだ。

物を手に提げる際に、中指が不全では、たしかに大変だ。

「……まぁ、ならいっか」

ひとつ息を吐いて、

「いいよ。手伝ってあげる。冬園は左手で持ちなよ」

「へへっ、恩に着まぁす」

智秀は片手に箸を持ち、もう片方では牛乳瓶のケースの取っ手を掴んだ。


塾の予習の範囲を教えたり。

なんだか、僕は冬園に甘い気がする……。

気のせいかな?


疑問に思いながら、冬園の牛乳瓶の運搬を手伝った。教室に入ると、背面黒板手前のロッカーの上にケースをどんと置いた。

「助かったぜ。センキュな」

「早く指、治すんだよ」

「おう」

冬園は牛乳瓶を各自の机に配り始めた。

智秀も自分の仕事を始める。といっても、箸を全員の机に置いていくだけの作業なので、かなり楽だ。

手際よく箸を配っていく。

真純の机にも、他と同様に箸を置こうとした時、彼女が小声で「ありがと」と言ってくれた。周りに気を遣ったような、潜めた声だった。

給食の時は席を二列ごとに、隣同士で向かい合わせになるようにピッタリ連結させなければいけない。しかし、真純の席は、誰の机とも触れ合っていなかった。

学校に出て来るようになっても、給食の時間は毎日あんな状態だ。誰も机を寄せようとしない。どうにかしてやりたいと思うが、宇垣智秀とは席が離れすぎているので、何もできない。

箸の配布が終わり、一息ついて真純のほうを見ていた智秀の耳に、女子の呼び声が聞こえた。

「ちょっと宇垣くーん」

「ん?」

おかずを食器に盛っていた給食当番の女子に呼ばれて、そちらへ向かう。

「どうしたの」

「なんだか、おかずが足りなくなっちゃったみたいで」

容器の中を見ると、今日のおかずである、コーンコロッケが一つも無かった。一方で、あらかじめ当番がクラスの人数分に枚数を揃えておく食器は、一枚だけ残っている。つまり、おかずが一名分足りないのだ。

「いつも一つ多めに入ってるはずだけど?」

「それも今日は入ってないの。悪いんだけど、隣のクラスからもらってきてくれない?」

「なんで僕が?」

「だって、宇垣くんならそういうの得意そうじゃん。ね、お願い」

「――まぁ、いいけど」

自分の仕事も終わっていたので、特に断る理由も無かった。それに誰かがやらなければいけないなら、なおさら断ることもない。

「ありがとネ」

「いいよ、これぐらい」

智秀は食器を一枚持って、教室を出た。


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