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登校してくる生徒たちの白い群れを、柏原美里は教室の窓辺から見下ろしていた。教室にはまだ半分ほどしかクラスメートの姿がない。今日から六月ということで、全員が夏服を着ている。
「にしてもさ」
窓際の席に座る美里の周りに、いつものメンバーが集まっていて、そのうちの一人が不満そうに口を開いた。
「赤崎って、しぶといよね」
「あー、わたしもそう思う」
他の女子たちが一斉に同調する。
「宇垣が変なフェミニスト気取ってるから、それで調子こいてるんじゃないの。赤崎の机の中、キレイにしてたのも宇垣でしょ」
「むかつかない? あれだけいじめられたっていうのにさ、平気な顔して学校来て。画鋲だって、平泉に入れさせたのに。もっといじめないとダメなのかな」
「でも、こないだまでみたいにいじめると、ホントに宇垣が先公にチクるかもしれないのよ」
「困ったね~。それにさ、赤崎、なんだかいじめ甲斐なくなってきたことない?」
「それわかる~! この間なんて、バッチリこっち見返してきたもんね!」
「ねー、これからどーすんの、美里ォ?」
意見を求められる。
美里は答えず、窓の外に見える、生徒たちを眺めていた。白い夏服の生徒たちの集まりは、羊の群れのよう。その群衆の中に、赤崎真純の姿を見つける。今日も登校してきた。ぬけぬけと。
ああいう女が、大嫌いだ。
いつも楽しそうに笑っている女。
だから――その笑顔を、壊したい。
泣いた顔を見せろ。みんなに。わたしは泣いていますよ、と。
「絶対、泣かす」
ポツリ、と。
嗜虐と憎悪を込めて、美里は呟き、グループの一人に視線を向けた。
「あんた、たしか今週、宇垣と一緒の給食当番だったわよね?」




