表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/83

その日の授業中、珍しく智秀は窓の外へ目をやることが多かった。いつもなら授業中はずっと黒板に向き合っているはずなのに、今日は集中力が今ひとつ欠けていた。

窓の向こうには、薄い雲をちりばめた青空と、その下に広がる街の景色が見える。

ここ最近は晴天が続いている。曇り空を長らく見ていない。梅雨に入ったら、当分この青空は見えないだろう。

五月も、あと少しで終わり。六月になったら、修学旅行の準備が始まって、いろいろと忙しくなる。

四月の頃は、彼女もきっと修学旅行を楽しみにしていただろう。


赤崎さん……。


思考の端に、彼女のことが引っかかっていた。

赤崎真純。同じクラスの女子だが、一度も話したことはない。

だけど、どんな人柄かはそこそこ知っている。

休み時間に友達と楽しそうに話しをしていたり、同じ掃除場所でキチンと箒で掃いていたり。そういう彼女を、何気なくだが、智秀は見ていた。

しっかりした女の子だな、と感心していた。

騒ぎすぎず、静かすぎず。どこにでもいそうだけど、どこにもいない。赤崎真純は、そんな女の子だった。少なくとも智秀の目では、悪いところは見あたらなかった。

その彼女が、いじめられているのを知ったのは2週間ほど前のことだ。例の女子のグループが、朝のホームルームが始まる前、真純を集団で蹴っていたのだ。ちょうど昨日と同じように。

驚いたというよりも、恐かった。

どうしてあんなふうに人を傷つけられるのか。彼女たちのやっていたことは、智秀の理解の外だった。

ひょっとしたら、もっと前からいじめがあったのかもしれない。表面化しただけで、本当はもっと長い間、彼女は耐えていたのかもしれない。


明日は……学校来るのかな。


本当にただの風邪なら、出てこられるだろう。

だが、もし、明日も休んだとしたら。欠席の理由は風邪ではないという疑惑が、確信に変わる。

そして同時に新たな疑いが生じる。

不登校――。いじめのせいで、学校へ二度と来ない。

そういった可能性も、無視できなくなるだろう。


赤崎さん、どうなんだ。


無性に気になった。周りからの視線があるときは無関心を装っていても、心の奥底では彼女のことが気がかりだった。

彼女が明日、登校してくるかどうか。

そんなことは明日になってみなけばわからない。

そう。

神様でもないかぎり、明日のことなんて誰も知り得ないのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ