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真純の靴に画鋲を入れた犯人を現行犯で捕まえよう。そうすれば、ひょっとしたら、いじめ解決への道が見えるかも知れない。

そんな単純な考えのもと、宇垣智秀は放課後になると図書館には向かわず、下駄箱近くの物陰に隠れて犯人を待っていた。

そして、今その犯人をこうして掴んでいる。クラスメートの平泉瑠璃を。


なぜ――平泉さんが?


真純の話で、平泉瑠璃が友達だったことを知っていたことで、ショックもひとしおだった。

瑠璃は右手に、画鋲の入ったプラスチック製の箱を持っていた。各教室に置いてある、掲示用の画鋲入れだ。

それを、智秀は空いている手で奪い取って、

「平泉さん……コレは、柏原さんに言われてやってることだな?」

問いかける。

目の前の瑠璃は抵抗こそしないものの、視線をそむけて答えようとはしない。その表情からは、悪事が見つかり焦っている気持ちと、絶対に何も話さないという意志が読み取れた。

「こんなことをやって、平気なのか!?」

「―――」

無言のまま、視線だけが向けられた。その目には敵意の炎がありありと浮かんでいる。

そんなことは、どうだっていい。敵と思われようが知ったことではない。問題なのは、そんなことではない。

「平泉さんは、赤崎さんと友達じゃないのか!! 友達にこんなことして、平気なのか!?」

彼女の表情が、一瞬、泣きそうに歪んだ。

けれどもすぐに、敵意に満ちた顔に戻り、睨んでくる。

「――宇垣くんには、関係ないでしょ」

「関係ある。赤崎さんのことは、僕にとってもう無関係じゃない」

「だったら、どうするっていうのよ!」

いきなり語調を荒げて、瑠璃が言った。

「真純にバラすなら、バラせばいいじゃない! わたしが画鋲入れた犯人でしたって! 言っとくけどね、もうわたしと真純は、何でもないんだから!」

〝何でもない〟という言葉に、虚を突かれて、彼女の手を掴んでいた力が緩まった。その瞬間に、瑠璃は手を振りほどき、廊下を走って行った。

追うこともできた。けれど、智秀はそれをしなかった。


何でもない、か。


瑠璃の発言に、苦い気分を味わう。

昨日の帰り道で、真純は瑠璃ともう一度友達になると明るく言っていた。なのに、その平泉瑠璃の口からは、真純を突き放すような言葉が飛び出したのだ。


これじゃ、赤崎さんの気持ちは――


このいじめの実行犯はわかった。けれど、そのことを真純には言わないでおこうと決めた。宇垣智秀の口からは、とてもじゃないが言い出せない。

そうして平泉瑠璃が去った後。

智秀は真純の靴に入れられた画鋲を取り出し、画鋲入れの箱に戻すと、教室にその画鋲入れを返しに行った。

西日に照らされた廊下の隅に、早くも暗闇が忍び寄っていた。


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