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次の日になっても、クラスのみんなのわたしへの対応は何も変わらない。教室に入っても、誰もわたしに見向きもしない。ただ一人、すでに登校していた宇垣くんだけがわたしの方を見て小さく手を振ってくれた。
朝のホームルームが始まるまでの、さわがしい時間。どこかの女子のグループが、衣替えについて話をしていた。
今日は五月三十日。来週の月曜日からは、もう六月。夏服は、明日と明後日のうちに準備しなければいけない。
もう六月かぁ。
ついこの間までは、春休みだったのに。
過ぎてみれば、月日の経つのは早い。
きっと、このまま夏も駆け足にやってくる。
夏休みが始まる頃には、わたしはどうしてるんだろ?
いじめは無くなってるのかな?
ぼんやりと教室内に視線を漂わせていると、前の方の席に固まっている女子グループの一人と目があった。
――柏原さん、だった。
彼女は、間違いなくわたしを見ていた。ニヤニヤと。嫌な笑顔を浮かべて、冷たい視線を向けてくる。
きっと、柏原さんは、画鋲のことで笑っている。わたしが傷ついたことを面白がっているんだ。
嫌悪と憎悪で、顔が強ばりそうになる。
それをわたしは我慢した。
我慢して、顔一面に笑顔を浮かべて見せた。ニコッと。上手に笑顔を作れたか自信は無い。
けれど、それでも効果があったようだ。
わたしが笑い返すのを見て、柏原さんの顔から笑みが消え、あからさまに彼女は不機嫌そうな表情になった。期待していたものとは違った反応に、柏原さんは怒ったんだ。
ナマイキ、と。彼女は思っただろう。
決して思い通りの顔は見せない、というささやかな抵抗は成功だった。柏原さんは顔をそむけ、他の人たちとのおしゃべりに戻っていった。
やっぱり柏原さんだ。
柏原さんが、靴に画鋲を入れたんだ。
絶対に、柏原さんには負けない!
強い気持ちで、わたしは心の中でそう呟いた。




