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体育館内に、ボールの弾む音、シューズが床と擦れる音が絶え間なく響いていた。

女子バスケットボール部は、体育館の半分、舞台側を使っている。今は基礎練習中で、三年生の部員たちは壁際に集まって休憩していた。

「しっかしさー」

それまで隣に座って、後輩たちの練習風景を傍観していたクラスメートが声を出したので、柏原美里はそちらを振り向いた。

「どーしようね、美里ぉ」

「なにが?」

「なにがって……」

クラスメートの女子は、ハァとため息をついた。

「いじめだよ、いじめ。まさか宇垣が出てくるなんて思ってなかったよ。しかも、しまいにゃセンコーに言いつけるなんて」

「そう言ってたわね。発想がガキよね」

「そうだけど……ちょっと、恐いじゃん」

「なに、あんたビビってるの?」

「だってさぁ、戸塚ならいいけど、他のセンコーにまでって言うんだよ。内申書に響くとメンドーじゃん。受験だってあるんだし。美里だって、あの時、けっこービビってたじゃん」

「――」

美里は横目で、彼女を睨んだ。

「う……ご、ごめん。だけど、さ」

真剣に困った顔をする彼女は、柏原美里のグループ内の一人だ。どうやら今朝の宇垣智秀の言葉を真に受けて、いじめをやめたほうがいいと思っているらしい。

「ねえ、美里、もういじめやめよ。これ以上やると、マジで危ないって」

具申と警告。

それを聞いて、美里は手元でバスケットボールを回した。

「いじめは、続ける」

「……どーして? 美里って、赤崎さんになんか恨みでもあるの?」

人差し指の先に乗せてボールを回転させていた美里は、ふいにボールを両手で勢いよく挟み込んだ。

「イライラするのよ、ああいう女って。自分はイイ子ですって顔してさ。だから、いじめるのよ。――他に理由なんて、要らないでしょう」

嗜虐心に口もとを歪めた美里に、クラスメートの女子は表情を固まらせて言葉を失った。

「いじめは、宇垣の目に入らないようにするわ。誰がしたか判らなければ、教師に訴えられないでしょうからね。それとも、なに、あんたは宇垣の味方になる気?」

氷のような冷たい、矢のような視線を向ける。

「そんなこと……あるわけ、ないじゃん。やだなぁ、もう」

ハハッ、と渇いた作り笑いをするクラスメート。

美里は「ふん」と鼻を鳴らして、手に持っていたボールを、練習中にも関わらず立ち止まって話し込んでいる一年生に思い切り投げつけた。


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