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目覚まし時計に起こされてから、ずっとベッドの上に座り込んで窓の方を見ていた。カーテンの隙間から部屋に光が差し込んでいるのをぼんやり見て、朝がまた来たことを疎ましく思った。
朝だ。
今日も学校に行かないといけない。
嫌だな……。
学校、行きたくないよ……。
「真純、朝ごはんよー」一階から、母がわたしを呼ぶ声。
いつもなら、ここでわたしは返事をして、制服に着替え始めるところだ。けど、今日は違った。
ベッドから出る気がこれっぽっちも起きなかった。
学校へ行かないといけない、と頭でわかっている。なのに、体はピクリとも動こうとしない。それは、つまり、もうわたしは限界ということだった。
今まで我慢していたものが、一気にあふれ出てくるのがわかる。心の底に深く沈めていた気持ちが、わたしの意志とは関係なく、浮上してくる。
わたしはその気持ちに、もう抵抗できない。
学校になんて、行かない。
朝陽を見ながら、そう決めた。
階段を上ってくる音がドアの向こうから聞こえてきた。
「真純、起きてるの?」
いつまで経っても下りてこないわたしを、母が見に来たらしい。
ドアが二回ノックされる。
「真純、まだ寝てるの?」
ドア越しに呼びかけられた。
ドアに向かって声を投げ返す。
「お母さん」
わたしの声のトーンはいつもより低くなってしまったが、母はそんな小さなことなんて気にしない。
「なんだ、起きてるんじゃないの」
母はため息をついたようだった。
「早く着替えて、下りてらっしゃい」
「お母さん」すぐ呼び止めた。
「なに、どうしたの?」
「あのね……」
ドアの向こうにいる母は、いったいどんな顔をするだろう。やっぱり怒るだろうか。
そう考えて、一瞬弱気になってしまう。
しかし、昨日のことを思い出して、わたしはその弱気を奮い立たせた。
もう、あんな痛み、あんな孤独、感じたくない。
怒られたっていい。
お母さんに怒られるぐらい、学校へ行くことと比べれば、なんともないんだから。
わたしは、一言ひとことハッキリと、決意を伝えた。
「お母さん、わたしね……今日、学校、休む」