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学校の空気に触れるのが、とても懐かしかった。

予鈴が鳴ると、授業が始まる。

授業中は静かなようで、耳を澄ませると所々から小声のしゃべり声が聞こえてくる。

先生が黒板にチョークで文字を書くときの、あのチョークの削れる気持ちのいい音。

しゃべり声に我慢できなくなると、先生は名指しでその人を怒る。このクラスで、私語に関して怒られるのは、冬園元くんという男子だ。今日も彼は「コラァッ、冬園ォ!」と先生に何度も注意をされていた。

休み時間になると、仲のいい人達同士が集まって、おしゃべりする。


「このまえ、駅前で見たんだけどさァ……」


「げぇッ! 理科の副読本忘れた!」


「ねぇ、知ってる? 三組の久本クンって」


そんな教室の風景が、すべて懐かしかった。一週間しか離れていなかったのに、まるで何年ぶりかに見るような気持ちになる。

心配していた、柏原さんたちからのいじめや嫌がらせは無かった。今朝の宇垣くんの一件で、大人しくなったのかもしれない。

嬉しいことに、いじめてくる人はいなかった。

けど、わたしに話しかけてくる人も、いなかった。

休み時間になっても、わたしの傍にきて話しかけてきてくれる人は、一人もいなかった。まだわたしはこの教室に、受け入れられてはいないんだと思う。

大の友達だった瑠璃も、柏原さんたちのグループに入っていて、ちらっとも視線を向けない。

瑠璃だけじゃない。教室にいる誰も、わたしのほうを見ない。見ようとしない。

存在を無視しているかのように。

誰もわたしを見ない。

ただ一人、宇垣くんを除いて――。

休み時間中、宇垣くんはたいてい冬園くんと一緒にいるけど、わたしが彼の方をちらっと見ると、いつも目があった。そして、目が合う度に、彼は口もとだけに小さな、わたしにしかわからないような笑顔を浮かべてみせる。

それだけで良かった。

今は、それだけで。

わたしと視線を合わせてくれて、存在を認めてくれる人がいる。そのことを実感できるだけで、わたしの心は軽くなった。

ここに……教室に、いてもいいんだって、思えたんだ。


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