表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/83

リビングへ入ると、お母さんが朝食を並べているところだった。食卓にはご飯と味噌汁が並べられていた。今朝は典型的な和食だ。

「あら」

わたしを見ると、お母さんは少しだけ驚いた様子だった。

「今日は、学校に行くの?」

「うん」

「……そうなの」

お母さんはあまり気にした素振りを見せなかった。キッチンの方へ行き、緑茶の入ったコップを持って戻ってくる。

「もう休まなくてもいいの?」

椅子に座ったわたしの前にコップを置いて、お母さんは優しい声で尋ねてきた。

その言葉とほほ笑みに、一瞬、決意が揺らぐ。

けど、わたしは笑って返した。

「うん……もう、大丈夫。お母さん、ごめんね、ずっと学校休んじゃってて」

「無理、しないようにね」

お母さんの表情が、ほんのわずか、暗くなった。わたしのことを心配してくれているようだった。

わたしがどうして学校を休んだのか、その原因をお母さんは知らない。

それで、いい。

「じゃあ、早く食べちゃわないと。時間無くなっちゃうわよ」

「え……あ、ホントだ!」

ニュース番組を映しているテレビの左上にある時刻表示を見て、すぐに箸を手に取った。

「いただきまーす!」

久しぶりの、制服を着たまま食べる朝食だった。


ありがと、お母さん。

何も訊かないでいてくれて。

いじめられてるって、知られたくないんだ。

だけど……もし、どうしても我慢できなくなったら、お母さんに相談するから。

それまでは――


時間が無かったので朝食をすぐさま食べ終えて、一通りの身支度を済ませると、駆け足で玄関に向かう。

靴を履く前に、鞄の中をもう一度のぞき込む。時間割を見間違えていないかどうかの確認をするためだった。休んでいたので、どうしても不安だったのだ。


えっと、一時間目は数学で……


上がり框に腰掛けて教科書をチェックしていると、後ろから階段を降りてくる足音が聞こえてきた。

「なんだ、真純、学校行くのか」

振り返ると、スーツ姿のお父さんがいた。大きな口を開けてアクビをしている。

「うん」

短く答えて、わたしはすぐに視線を鞄の中へ戻した。


六時間目の英語……ある!

よし、これで全部!


教材の過不足が無いことを確認し終えて、鞄のファスナーを閉める。

靴を履き、玄関を出る前にお父さんを振り返った。

「それじゃ、行ってきます!」

「ん……あぁ、車に気をつけるんだぞ」

お父さんは軽く手を上げて応えた。それを見てから、玄関を開け、家を出た。

今日も天気は晴れ。

朝陽が眩しい。

わたしは深呼吸して、学校への一歩を踏み出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ