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制服の袖に腕を通す。たったそれだけの動作が、すごく久しぶりに思えた。一週間近く着られなかった制服は、ピッタリ、わたしの体を包む。当たり前。だって、この制服はわたし物なのだから。
今日は水曜日。
五月の学校も、今日を含めると、あと三日。
冬服も、あと三日かァ……。
鏡の前で胸元のリボンを結びながら、わたしは緊張しながらも、どこかでホッとしていた。こうして今月中に冬服をもう一度着ることができて嬉しかったからだった。
キュッと、首周りで蝶結びにしたリボンの両端を引っ張り、形を整える。
「おっけー、と――」
鏡の向こうのわたしと、目が合った。自分で見てもわかるぐらい、わたしの頬はこわばっていた。
……そうだね。
恐い、よね。
鏡に映るわたしは素直だった。
わたしは学校に行くのを恐がっていた。
蹴られて、罵られて、無視されて。そんなことをいっぱいされたのだから、よく考えてみれば、恐がるなというほうが無理だ。
だから、無理せず、弱い自分を認めようと思った。
うん、そう。
学校に行くの、ホントは恐いよ。
けど。
〝僕は赤崎さんの――〟
昨日の夜に聞いた、彼の声を思い出す。
大丈夫だよ、きっと。
わたしはあそこで、独りじゃない。
宇垣くんが、いてくれるんだから!
学校に行くのは恐いけど、そこに彼がいることを思えば、勇気を出せた。
「大丈夫!」
そう声に出し、気持ちを入れ替えるために、パンッと自分の両頬を手の平で叩いた。
次に鏡を見ると、そこには柔らかくなった表情のわたしがいた。




