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14

「それで――」

椅子に座ると、早速、智秀は口を開いた。

「さっきの電話は、なんだったの? やっぱり学校のこと?」

「うん」

いつものように、赤崎真純はベッドに腰掛けていた。

「どうするか、決めたんだね?」

「……うん」

真純は手元に枕をたぐり寄せると、胸元に抱いた。

そして伏し目がちに智秀を見て。

「わたし、明日から、学校行く」

そう、ハッキリと口にした。

「赤崎さん……」

驚きで、言葉が上手に出てこなかった。

すると真純の眉が不安そうに寄った。

「ダメ、かな?」

「ううん、全然! ダメだなんて、僕は思ってないよ。ただ……」

驚いているのをなるべく面に出さないようにして、尋ねる。

「どうして、急に学校に行くって決めたの?」

「……ホントはね、転校するっていうのも、考えてたんだ。そうすればいじめも無くなって、また新しい学校生活が送れるって。けど、やっぱり、わたしはそんなの嫌なの」

真純は顔を上げて、まっすぐにこちらを見つめてきた。

「今まで友達だった人達と別れて、このまま終わりにするのは、嫌なの。また前みたいに、みんなと楽しくおしゃべりしたい。だから、もう一度、頑張ってみようって思ったの」

強い瞳で、彼女は決意を訴えた。

「そっか……うん、そうだね」

赤崎真純の言葉に、力強く頷く。


行けば傷つくと知っていて、なおその道を行く。

それが赤崎さんの選んだ道だというのなら、

僕は全力で応援しよう。


応援するよ、と。

智秀は言葉をかけようとした。

が、それよりも早く、真純のほうが口を開いた。

「でも、ね……やっぱり、恐い」

ぽつり、と。

心細そうに言って、真純は唇を枕に押しつけた。

「またあの、柏原さんたちにいじめられるのが、恐い」

一転して彼女の瞳には怯えの色が滲む。


ああ……やっぱり、恐いんだ。


きっと、真純は楽観などしていない。宇垣智秀が近くにいたところでいじめは無くならないと、わかっている。友達とまた以前のような関係に戻れる保証も無い。

それでも。

学校へ行くと決めたのだろう。

逃げ出したい気持ちを必死に抑えて。

「ね、宇垣くん。お願いがあるんだけど」

「なに?」

「もう一度、わたしに言って」

すがるような視線が向けられる。

「言うって、何を?」

「あのね……」

「うん」

「学校でもわたしの味方……って」

思いがけない言葉に一瞬、面食らった。

「そんなの改まってお願いしなくてもいいのに」

おかしくて、少し笑ってしまう。

真純は恥ずかしそうに目を伏せて黙っていた。

そんな彼女に、笑いかける。

「味方だよ。学校で、僕は絶対に赤崎さんを独りにしない。周りがなんと言おうと、僕は赤崎さんの味方だ」

宇垣智秀の言葉を、真純は瞳を閉じて、大事そうに聴いた。

「……ありがと」

真純は瞳を開けて、照れたように笑った。

つられて、智秀も照れてしまう。


お礼を言われるほどのことじゃないんだけどなぁ。


彼女は安心しきった、柔らかな表情をしている。

「宇垣くんの言葉って、不思議」

「え……そう?」

「うん。なんだか、すっごく優しい感じがするの。不思議。どうしてだろうね」

「どうしてって……」

返事に困る。

言葉が優しい、なんて言われたことは今まで無かった。

「なんて言うか、宇垣くんに味方だよって言われると、本当にわたしは独りじゃないんだって思えるの。あの人たちも、同じ〝言葉〟を使って、わたしをいじめてるのに」

幸せそうに笑って、真純は言う。

「宇垣くんが優しいからかな?」

「……さぁ、どうだろ」

脇をくすぐられたような恥ずかしさに襲われて、つい真純から視線を逸らしていた。


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