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いつも通りの時間に、目覚まし時計に起こされた。
朝だった。火曜日の、朝。
結局、昨夜は学校へ行くかどうかを考えながら寝てしまった。
カーテン越しの淡い朝陽に、部屋が照らされている。
「真純、起きてる?」
ベッドの上で体を起こしたままでいると、お母さんが階段を上がってきた。数回のノックの後、部屋に入ってくる。
「おはよう、真純。今日はどうするの?」
いつもの問いかけ。ここ数日、毎朝、訊かれることだ。
そしてわたしの返答も決まっていた。
「……休む」
再びベッドに寝て、背中をお母さんに向けて答えた。
ため息が聞こえた。
「また学校休むの?」
「……うん」
怒られる、と思った。
今日欠席すれば、四回連続になってしまう。そろそろお母さんも我慢の限界が来るだろう。
けど、予想に反して、お母さんの声は優しかった。
「学校で、何かあったの?」
心臓が、素手で捕まれたように、ドキッとした。
とっさに取り繕うことができなくて、わたしは黙り込んでしまう。
すると。
「お母さんでよかったら、教えてくれない?」
今度は針で刺されるように胸がチクチクした。
涙が込み上げてくるのが、わかった。
優しくしないで欲しい。いっそ怒って欲しかった。
優しい言葉は、甘い誘惑。
もしも、今、お母さんに全てをさらけ出して助けを求められたら、きっとわたしは楽になれる。お母さんはわたしを守ってくれるだろう。
けど、そんなことになったら、今度はお母さんが大変になってしまう。わたしがいじめられていたと知って、傷つくかもしれない。
お母さんを苦しませたくない。
だから、わたしは――
「部屋、出て」
なるべく無感情に、言った。
「真純……」
「いいから、出てって!」
すぐに部屋から去ろうとしないお母さんに、また同じ言葉を言った。二度目は、声が震えてしまった。
顔は向けられない。泣きそうな顔は見せられない。
お母さんはしばらく黙っていたけど、やがて「パジャマ、別のに着替えなさいよ」とだけ言って、部屋から出て行った。
お母さん……ごめん。
怒った?
それとも悲しかった?
でも、こうするのが、きっと一番なの。
お母さんには迷惑かけたくないから。
これでいいんだ。
そう自分に言い聞かせる。
甘えてはいけない。
頼ってはいけない。
きっとこれが最善の選択。けれど、どうしようもなく、胸が苦しかった。
「これで、いいの……」
涙が真横に零れていった。




