中二な彼の24時間
前回の短編を書き始める前に突発的に書いたものです。
一度書きなおしをしたので投稿が遅れてしまいました。
僕自身、書いている途中でどんどん恥ずかしくなってきた作品ですので、皆様も覚悟の上読んでください。
俺、漆黒の断罪者の朝は早い。
何故なら、毎朝損傷した結界を修復しなければならないからだ。最近は別次元よりやってくる侵略者達の攻撃が激しい。折角結界で守りを固めていても、激化した攻撃のせいで侵入を許してしまう事も多くなってきた。
(そういった輩は俺が始末しているがな)
俺はベランダに出て、懐から取り出したルーン文字の書かれたカードを一定の間隔を置き貼り付ける。そしてその中心に立ち、魔力の精製を始める。
「全てを退ける守護者よ。我が生命の力を糧とし、遠方より来る我らが外敵を退ける盾となれ!」
………………結界の修復は完了した。魔力とはそれすなわち生命力を変換したもの。その生命の力を糧とし、俺と契約を交わした数多の精霊や悪魔達の力を借りる事で結界を展開、及び修復したのだ。
「さて、そろそろ行くとするか……」
この世界での俺の身分は高校生。正体を隠し、高校生という身分を隠れ蓑にしているのだ。そうでもしなければ、俺を狙った侵略者により無関係の者達が被害を受けるだろう。それを避ける為に、俺は高校生として学校に通っているのだ。
授業中。高校程度の範囲、俺にはぬるすぎる為、問題を全て終わらせた俺は精神世界にて戦闘訓練を行っていた。現在の戦績は五戦四勝一敗。咄嗟の判断をミスした事が原因で生まれた負けだ。
ここ精神世界では負けてしまっても死ぬ事はない。つまり、失敗から学ぶ事が可能なのだ。
「焦りが生まれた事が敗因か……。どの様な状況でも冷静でなくては」
「そこでぶつぶつ言ってる江藤―。ここの角度を解いてみろー」
江藤と言うのはこの世界で俺が名乗っている名だ。
「213度だ」
「不正解」
…………たまにはこんな日もあるものだ。
昼となった。俺は即座に席を立ち、ある場所へ向かう。そこに向かう間に、俺はポケットから取り出したカロリーメイトを口にする。これは短い時間で食事を取れるので重宝している。
そうして辿り着いたのは屋上。俺は毎日、昼になるとここで精神統一兼索敵を行っている。
「風が良くないものを運んでいるな……」
俺は南東の空を見上げる。どうやらその方角から侵略者の気配が漂ってきているらしい。帰りに様子を見た方が良いかもしれない。
「あいつ、今日も居るな……」
「二組の中二病の奴だろ? 恥ずかしくないのかねぇ」
全く、聞こえているぞ。俺は中二病などではない。侵略者から世界を守るためにこの世界へやってきた漆黒の断罪者なのだ。何を恥ずかしがる必要があると言うのか。
「そういやあいつ、この間不良に絡まれて思いっきり素に戻ってたぜ」
「あぁ、俺も見たなそれ。なんか情けない悲鳴あげて謝ってたな」
…………断じて違う。そんな事実はなかったぞ。誰もひぃぃ、ご、ごめんなさい許してなんて言っていないぞ。
――――とりあえず、今度からはあの店の前は通らないようにしよう。
放課後、俺は学校から少し離れた位置にある公園にやってきた。侵略者の気配を感じたからだ。
「居ない、か。どうやら逃げたみたいだな」
だが、何が起こるか分からない。俺は辺りを警戒しながら捜索を開始する。
そして茂みを覗きこもうとした時に――――。
「のわああああああっ!」
その茂みから、大きな物体が飛び出してきた。
何だ! 一体何が出てきたんだ! ま、まさか本当に侵略者が出てきちゃったのか!?
「にゃー」
「へ……? な、何だ猫かぁ。びっくりし……はっ!」
しまった! 驚きのあまり素に戻って、じゃなくて俺のもう一つの人格が表に出てきてしまっていた! まさか、この猫は侵略者の刺客!?
「その手には乗らんぞッ……! 死に誘う地獄の大鎌!!」
俺は今日、たまたま持っていた折りたたみ傘――――じゃなくて、俺の主力武器である死に誘う地獄の大鎌を目の前で座り込みこちらに目を向ける猫――――ではなく侵略者の刺客に向けた。
刺客と漆黒の断罪者である俺の、激しい戦いが幕を開けたのだった。
「お母さん、あの人何やってるの? 傘で猫と遊んでるの?」
「見ちゃだめよ!」
近くで話す親子の言葉が、俺の心にぐさりと突き刺さった。
夜。自宅で空を見上げる俺の頬には、一枚の絆創膏が張られていた。先ほどの猫に見せかけた刺客との戦闘で付けられたものだ。結果は残念ながら引き分け。決着はつかなかった。
俺の右腕がずきりと疼く。この力が自由に扱えれば誰にも後れを取る事はないのだが、残念ながらまだこの力を扱うには誓約が多い。
「ふっ……。俺もまだまだ未熟という事か」
今日得た教訓は、焦りは死を呼ぶという事だ。この教訓を得た事により、明日からの俺は今日の俺とは比べ物にならない程に成長を遂げている事だろう。
「さて、そろそろ休むとしようか。明日以降も戦い続ける為に……」
俺は部屋に戻り、俺はベッドに横になる。そうしてゆっくりと、俺の意識は闇の中に沈んでいくのであった。
これはとある邪気眼系中二病患者の一日の記録。この後の彼は、侵略者の策略により足が攣ってベッドから飛び起きたり、翌日の体育の授業で封印された力を解放しようとしたり、先日の猫、もとい侵略者の刺客と再び相見える事になったりするのだが、それはまた別の機会にお話するとしよう。
いかがでしたでしょうか。
ファンタジー物を書いている身として、こういった中二的要素には多く触れる僕ですが、実際にそれを主軸に置いて書くとなるとかなりの恥ずかしさがありました(笑)
これは素面で書いていいものではないですね……。
宜しければ、感想等お聞かせください。