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再生

作者: duck

 何もかも初めからやり直したいと最近よく思うようになった。彼氏に振られたり、会社を辞めさせられたり、原因はその時々で複雑だけれど、いつも向こうから一方的だ。

 出来れば、生まれた瞬間に戻りたい。全てをやり直して、最高の人生を。




 テレビのスイッチを入れた。クイズ番組がやっている。

 選択の問題。

 彼女には答えがわからなかったようだ。首を傾けて、解答を待った。

 コーヒーのポットが音を立てる。彼女はそちらに手を伸ばすが、視線はテレビ画面上にあてられている。

 まもなくして、難しい問題に解答者はあえなくドロップアウトを決めた。

 彼女はそれが良い判断だと評価した。

 自分があの場にいても、同じことをしていただろう。

 それが正しい。

 彼女は答えを聞かずにテレビのスイッチを切った。

 熱いコーヒーをすする。手には求人広告。それを眺めながら、彼女は先ほどの問題について考えた。


 10分ほど考えて諦める。

 そして彼女はそのことを忘れた。今はそんなことを考えている場合ではないと思ったからだ。

 それから5分後、彼女は受話器を手にとって、面接の約束を取り付けた。

 彼女が帰ってきたのは、午後7時を少し過ぎた頃。

 かなり酔っているのか、靴を脱ぐのもおぼつかないようだ。

 どうやら収穫がなかったらしい。彼女はテレビに抱きつくようにして倒れ込んだ。

 習慣的に手が動き、スイッチを入れる。

 ニュース番組。

 高速道路で衝突死。

 良くある事故だと思ったが、彼女は名前を見て、思わず立ち上がる。

 それはさっきのクイズ番組の解答者だった。

 事故現場は凄惨を極め、立ち上がる煙りと一緒に札ビラが舞っている。

 とても他人事には思えなかった。

 見物目的でそこにいたはずの人間たちは今や金を拾い集めることに夢中だ。


 叫びたくなった。その金に手を出すな、と。正しかったはずだ。私たちは何も悪くない。





 初めからやり直せないのだろうか。誰でもいいから言って欲しい。全ては嘘だった、と。









エイプリルフールが過ぎて、念のためもう一日待ったが、誰も嘘をついてくれない。僕はきっと騙しがいのない奴なのだろう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 僕はリアルと同時に、サイケ(ディクなもの)を感じました。人生について、今と違った角度から、改めて見直してみたいと思いました。
[一言] 妙にリアルですが考えさせられるテーマです。残酷ではありますが、これが現実なのでしょう。独特の雰囲気が良かったです。一応言っておきますが、嘘ではありません。
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