発見文書 No.077
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発見文書 No.077
種別:教師による記録
日付:2026年7月20日
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2026年7月20日(月) 終業式
終業式後、教室にて。夏休みの宿題について説明。
私、浅川静は、このクラスの担任になって4か月。だいぶ打ち解けてきた。
黒板にカレンダーを書いた。7月21日から8月31日まで。何日間あるのか、数えようとして、やめた。数えなくてもいい気がした。
課題の説明。「夏休みの思い出」作文。一人一日ずつ、担当日を決めて、原稿用紙5枚程度。
一人の男の子が一番に手を挙げた。
「先生、ぼくは何日がいいですか?」
「山田くんは7月21日。夏休みの最初の日ね。トップバッターよ」
「やった! 一番だ!」
椅子がガタンと鳴った。
担当日の割り当て。42人、全員分。
【以下、42人分の割り当てが記載されているが省略する。なお、この割り当てリストの筆跡はNo.001の北村ひろみの筆跡と酷似している——鏑木】
「近藤さん、8月13日」
「8月13日って、お盆ですよね」
「そうね。特別な日かもしれないわね」
——教室がひんやりした。窓の外に赤い光が走った気がした。目の錯覚だと思う。
全員分を伝え終えてから、ふと付け加えた。
「前のクラスを担当した先生の分と、あともう一人……前任の記録者の分も合わせて、43冊の作文になりますね。クラス全体の夏休みの記録になります」
言い終えてから、なぜそう言ったのか分からなかった。前任の記録者、というのが誰のことなのか、自分でも分からなかった。それに、42人のクラスなのに、なぜ43冊なのか。数が合わない。合わないのに、43という数字は正しい気がした。
「先生、もし担当の日に特別なことがなかったらどうするの?」
「大丈夫。どんな日でも、よく観察すれば、きっと特別なことが見つかるわ」
「では、良い夏休みを!」
教室を出ようとしたら、後ろから声がした。
「先生」
振り返ると、一人の女の子が立っていた。
「夏休み、本当に終わりますよね?」
変な質問。「もちろん。8月31日で終わって、9月1日から2学期が始まるわ」
「そうですよね」
微笑んだ。安心したような、不安そうな顔。
——なぜこの子の質問が気になるのか、自分でもわからない。前にも同じ質問をされた気がする。いつ、だれに。思い出せない。
廊下を歩きながら、窓の外を見た。
真夏の青空に、太陽が三つ並んでいた。朝の太陽、昼の太陽、夕方の太陽。私はそれを「美しい」と思い、足を止めた。おかしい、という感覚はなかった。
職員室に戻り、出席簿を開いた。42人分の名前。赤いペンでチェックを入れていく。43番目の欄が白紙だった。なぜ43行目があるのか分からなかったが、そのままにしておいた。
時計塔の針が3時33分を指していた。今は午前10時のはずだった。確認しようとしなかった。
カレンダーを見た。9月のページを探したが、見当たらなかった。8月のページがずっと続いていた。
おかしい、という感覚はなかった。
ここから先は個人的な記録として書く。
——何を書くつもりだったのかわからない。ペンを持ったまま手が止まっている。
机の上に、赤ペンが一本置かれていた。
誰かが置いていったのだろう。
手に取ると、インクがまだ乾いていなかった。
浅川静




