婚約破棄RTA
※本作は「婚約破棄もの」をRTAとして扱う短編ギャグです。テンポ最優先・倫理観はログアウトしています。
「計測完了! タイムは5分8秒! 記録は二位です!!」
「くそ、5分の壁が切れなかったか!」
辺りに失意の声が広がった。婚約破棄RTA、今RTA界で最も熱い界隈であった。婚約破棄だの言葉と同時に計測を開始し、エンディングを迎えるまでのタイムを競う。
一位を取って何かもらえるわけでない。RTA走者とはつまり求道者であった。
「細かいミスが出てしまいましたものね。ギロチンのタイミングとか」
「しかしあれは早すぎると死刑宣告前と判定されて記録が無効になってしまう」
悪役令嬢が悔しそうに言うと、隣国王子が待ったをかける。
「王ははじめ婚約破棄現場にいてはならず、後から現れなければならないルールがなければなぁ」
最速とはミスとの戦いである。急げは急ぐほどリスクは高まるのは当然として、短縮するためには非常に高度なテクニックを有する事も。だから時には安定択を取るのも戦略の一つであった。
「おーい、今死後の世界から戻ってきたんだけどタイムは?」
「殿下おかえりなさい。残念ながらまだ二位でしたわ」
記録のためには死んでも構わない王子は走者の鑑であった。時間経過で自動的に死者蘇生を発動させるのはRTA走者王子の嗜みだ。
なお死後の世界では昨今のRTAブームのせいで、やったら死んでは生き返る王子ばっかりで、無駄働きさせられる死神たちは過労死寸前であったりする。
「残念ですぅー。私達こんなに頑張ってるのにぃー」
舌っ足らずで話すこの者こそが断罪されるヒロイン。一見ゆるくて頭が悪そうに見えるが、王子と一緒に何度もギロチンにかけられている猛者だ。面構えが違う。
「今度こそいけると思ったのに!! あいつらTASさんかよ!!」
一番体を張っているのは間違いなくこの王子とヒロインだ。毎回首チョンパされては繋げてをひたすら繰り返す。しかし二人の努力もむなしく、一位の壁、5分1秒は高い。
なお悪役令嬢と隣国王子も楽というわけではなく、何気に毎回死にかけていたりする。と言うのも最後は隣国で幸せ宣言しなければならないので、その移動のためにいつも人間大砲でぶっ飛んでいるのだ。打ち所が悪くてうっかり死んだ事もある。
実のところ、昨今の国同士の移動はワープが主流なのだが、それはレギュレーション違反であるのであしからず。
「でも言葉を短くする方向は間違ってません。全力疾走しながら台詞言うのは疲れますし、最小限の言葉でもちゃんと婚約破棄ものと認識される事が判明しました。これは大きな一歩です。後は一つ一つの動きを洗練させていくことですね」
「だな!」
「「「「目指せ5分ぎり!!」」」」
狂人達の挑戦は続く。
ざまぁで国が丸ごと滅ぶ系の民「うちもRTA始めそうかな?」
死神「頼むからやめてくれ!!!」




