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2.私の願いごと


「アルト様、今日もいい天気ですね」


アルト様の部屋のカーテンを開ける。

眩しい太陽が綺麗に整頓された部屋を明るくする。


「ん〜、まだ寝たい」


「ほら、だめですよ。起きてください。私が副団長になってだいぶ経ちますが、本当に朝が弱いですね」


上にかかっていた布団を取ると寝着から僅かに見える肌に胸が高鳴った。

クローゼットからシャツとパンツを取る。まだ眠たそうにしているアルト様の体を起こし、寝着のボタンを取っていく。

細い割に引き締まった体が現れた。その白い肌に触れたかった。


ーー私は何を思っているんだ。


失礼します、とシャツを着せボタンを閉じる。


「アルト様、本日の報告なのですが……」


アルト様が寝着の下を脱ぐ。綺麗に筋肉が付いた足に目が奪われた。


「なんだよ」


「あ、いえ、綺麗な足だなって思って」


「見るなよ、変態か!?」


「はは、すみません」


私は何もなかったように報告をする。

しかし、目はアルト様に奪われていた。


「そうだ、今日は街に行こう」


「今からですか?」


「そうだよ、そろそろ髪紐が欲しいんだよ」


さらり、と腰まで伸びた髪。伸ばし続ける理由は願掛けだと言っていた。

団員達が誰1人死なないように願う優しいアルト様の願いだった。


「その髪紐、私が選んでもいいですか?」





街は活気が溢れていた。道端にいた商人の前で足を止めた。アルト様は先に行かれて、宝飾店に入って行く。


「おーい、こっちだぞ」


「私はちょっと見たいものがありまして。先に入ってて貰っもいいですか?」


「そうか、わかった」


アルト様を見送り、髪飾りの品々を見る。

私の髪と同じすみれ色の髪紐があった。


「まいどあり」


店主から髪紐を受け取った。

アルト様は喜ぶだろうか。


ーーーそうか、私はアルト様が好きなのか。


アルト様を見ると高鳴るこの気持ち。やっと何なのか気付いた。

あの唇に私の唇を落としたい。そう思ってしまっているのだから。


その晩、私はアルト様の部屋にいた。


「これ、アルト様に似合うと思って」


街で買った髪紐を渡す。


「……お前の髪の色と一緒じゃないか」


「付けて欲しくて」


「…………オレのこと好きみたいに聞こえる」


少し頬を染め、目線を落とすアルト様は美しかった。

私はアルト様の手を握り、ゆっくりとベッドに2人で横になる。顔を真っ赤にしたアルト様が私を見上げていた。


ーーーああ、もう止まらない。


「好きですよ」


「急に言われてもなぁ」


照れくさそうに笑うアルト様の髪を指先で触れる。

私の手は震えていた。

初めて打ち明ける思いに震えが止まらない。


「キス」


「……え?」


「キスしてみろよ。それでオレが嫌じゃなければ……考えてやってもいい」


嬉しかった。

胸が苦しい。もうどうにかなりそうだった。


ーーー好き。アルト様。好きです。


私はアルト様にキスをした。


「……!?」


その瞬間、視界が赤く塗り潰されていく。何も見えず、何も聞こえなかった。


「アルト様はどこですか!?アルト様!」


手探りに探す。しかし、どこにもいない。


何か生温かい物に触れた。それは液体のようでどこか違う。微かに鉄の臭いがした。何度も戦場で嗅いだことがある臭い。

心臓の音が警告音のように全身に広がる。


視界が徐々に戻っていく。

自分の手を恐る恐る見る。真っ赤だった。


「はっ……はっ……アルト様、アルトさ、ま?」


見下ろすとアルト様がいた。その傍らにはべっとりと血が付着した私の剣が落ちていた。


「ああ、アルト様っ、なぜ……なぜこんなことに!!」


先程まであんなに幸せだったのに。


「いやだ!……いやだ、いやだ!」


どんどん冷たくなっていくアルト様を抱きしめる。


「ああああああっ!!」


私の胸元が光る。祖母から貰った魔法石だった。


「そうだ、願い事」


ーーー大きな願い事にはそれと同等の対価が必要だよ。


「対価って何を、どうすれば」


目の端に私の剣が入る。震える手でそれを取る。


「大きな願いにはそれと同等……私の命でもいいのかな」


アルト様がいなければ私の世界は真っ暗だ。

これで死んでしまっても構わない。


私は震える手で首元に剣を這わした。

流れた血がアルト様と混じり合う。まるでキスの続きをしているようだった。


血溜まりが、魔法石が、光った。


「アルト様、待って、て」


ーーー今、会いに行くから。









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