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追われる少年

 まるで何事もなかったかのようにいつもと変わらぬ朝を迎えた陽翔(はると)は、

 少し寝ぐせのついた猫っ毛の黒髪を適当に整え、いつも通り登校する。


 昨夜の出来事が頭の中でチラつき、まったく授業に集中する事ができなかった。


 放課後の帰り道、胸の奥のざわつきは消えない。

 まただ――背後にまとわりつく、あの重苦しい影。

 気のせいだと思い込みたくても耳の奥で小さな声が囁いていた。


『……まって…おいていかないで…』


「っ……!」


 振り返っても誰もいない。ただ、夕陽に長く伸びた自分の影が揺れている。

 冷や汗が背を伝い、思わず走り出すが影はぴたりとついてくる。


 (俺……どうしたらいいんだ……!)


 視界が滲み、呼吸が乱れる。

 限界だと感じた時、陽翔(はると)は見知らぬ暗い路地に迷い込んでいた。


 (ここはどこだ?…こんな路地あったか?)


 古びた石畳、路地の突き当たりにひっそりと柔らかに灯るランプ。

 ふと目の端に看板が見えた。


 ――《境界喫茶(きょうかいきっさ)カクリヨ》



「……喫茶店?」


 窓からは暖色の光が漏れていた。

 陽翔(はると)は吸い寄せられるように、柔らかな明かりに照らされた木の扉の前に立つ。


 そのとき、背後で気配がした。

 ぞくりと振り返ると、黒い影が地面を這い、こちらへ迫ってくる。

 息が詰まった。


『いっしょにあそぼ……』


 声が耳元で囁く。もう逃げられない。

 肩に影が触れた瞬間、陽翔(はると)は半ば本能のように、目の前の扉に手をかけていた。

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