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裁判と忍び寄る魔の手

 あの日から一週間後。


 私は無事に教会で療養生活を終えて、今は裁判所の中で、証人として席に座っている。


 療養を終える直前に、教会を抜け出して皇帝陛下の元へ赴いたのである。


 そこで、お茶会で起きた出来事と、ロザリー様とカリン様の家の件や、それに巻き込まれたカリン様について話した。


 陛下はレアンを可愛がってくださっているらしく、そんなレアンの妻である私が、カリン様の処罰について提案したのだ。


 すると、悩まれた末に了承してくださり、カリン様は約束通り、自由な縛られない生活を送れることになるそうだ。


「全く、一昨日はとても焦ったんだからな。

「ご、ごめんなさい……」


 先程席に座ってから、私はずっとレアンに説教されていた。


「教会からいなくなったと聞いて、俺がどれほど……」


「……友達を助けたかったんです。」


「はぁ……ルチェットは優しすぎる。」


 レアンと私がこそこそと話していると、裁判官数名と長いヒゲの裁判長が席についた。


「では、これより裁判を開始する!」


 裁判長がそう言うと、ざわざわとしていた法廷内は静かになる。


「被告人、前へ。」


 すると、カリン様が騎士の方々に連れられて、証言台に立った。


 前よりも明らかにやつれていて、眠れていないのか隈も濃く出ていた。


「被告人、カリン・エナード男爵令嬢は、マリー・ノディ侯爵令嬢の茶会で、毒を茶に仕込み殺人を犯そうとした……間違いはないな?」


「……はい、ありません。ですが、一つだけよろしいでしょうか。」


「発言を許可する。」


「私に毒を仕込むように命令したのは……ロザリー様です。」


 茶会に来ていなかった令嬢がざわつき、裁判官がそれを制する。


 貴族の男性方も、ロザリー様の名前が出たことに驚いている様子だった。


「それは……ロザリー・ベルベット伯爵令嬢のことか?」


「はい、そうです。彼女が私に指示しました。」


 カリン様は暗かった雰囲気から一転、はっきりと指示されたことを発言していた。


「ふむ、では後日呼び出さなくてはいけないな。」


「調査もしなくては……」


「そうであるな、では量刑に移ろう。」


 裁判官さんたちと裁判長が相談を終えて、法廷に大きな声が響き渡る。


「被告人、カリン・エナード男爵令嬢に量刑を言い渡す。

毒殺未遂で、エナード家の爵位剥奪と、被告人を辺境へと送ることにする。」


 カリン様は涙ぐんでいて、その姿を見ると心が痛む。


 毒殺未遂を起こしたとはいえ、彼女は周りを取り巻いていた環境の被害者だから。


 カリン様は私よりも年下で、社交界にも慣れていなかった。


 だから、あの時お茶会に参加したのは、初めてのことだったのに。


 金の問題があったとはいえ、そこに付け入ったロザリー様も許しがたい。


 カンカン、と槌の音が響き、私の考え事は止められた。


「では、これにて閉廷する!被告人を連れていけ。」


 騎士の方たちが、カリン様を連行していく。


 とりあえず、私が陛下に提案した通りに裁判が進んでよかった。


 まあ、本来の刑の内容を変えるのは気が進まなかったけれど……


 カリン様が罪を償って、この先少しでも幸せになれるなら、提案してよかったと思う。


________



 裁判所から出ると、レアンが私の額を優しく小突いた。


「ルチェット、優しさは時に縛りになるんだ。」


「縛り……」


「君が縛られると同時に、相手も縛られる。

……例えば、君を愛せずにはいられなくなった俺のように。」


一理ある、というより、身に覚えがありすぎる。


私が苦い顔をすると、レアンは困ったようにほほ笑んだ。


「でも、それはルチェットの武器でもあるな。」


「武器ですか?」


「あぁ、その優しさのおかげで今があるだろう?」


「……ふふっ、あははっ!」


「なっ、どうして笑うんだ。」


いつもと違うレアンの様子に、思わず笑ってしまった。


心配してくれてるけれど、私に対して怒ったことがないから、叱り方がわからなくなっている。


たぶん、そういうことだと思う。


「私は、心配しなくてもいなくなりませんよ。」


「……なぜそう言い切れる?」


「レアンを世界で一番、愛しているからです。」


「……はは、毒気が抜かれてしまったな。まいった。」


私達は手を繋いで、真上で輝く太陽に照らされながら、ランチを食べる店を探した。


________



「なんなのよ……!!」


 ロザリーは、ルチェットとレアンが中々離れないことに対して、怒りを募らせていた。

 

 彼女は今日、裁判に来たルチェットを、他の貴族に監視させていたのだ。


 二人が一瞬でも別れれば、エレンから渡されたネックレスでルチェットを攻撃できる。


 そして、小さなナイフをレアンに刺して、自分のものにできる。


 静かに、息を潜め、二人を尾行する。


 その瞳は、獲物を虎視眈々と狙う獣のようだった。


 すると、レアンがルチェットから離れていくのが見えた。


(これはチャンスよ、絶対に成功させてやるわ)


 後ろから、ゆっくりと、確実に近づいていく。


「ッ誰ですか!?」


 ルチェットが振り向いたが、すでに遅かった。


 ネックレスが眩しいほどに光って、ルチェットに向かってガラスの破片のようなものが飛んでいった。


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