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10 パーティーに向けて

 あれから数週間経った。


 私は数週間の間に社交界のマナーや喋り方、そして踊り方をマレシア先生にレクチャーされ続けていた。


 ヒールを履いての練習はとても厳しくて、すぐにふらついてしまったり転んでしまう。


 けれど、みっちり練習して努力した結果、人並みに踊れるようになった。


 明日はいよいよパーティーの日。


 私の行動次第で公爵様のイメージを損なう可能性だってある。

 

 だから、気を引き締めて挑まないといけない。


「マレシア先生、私はちゃんと出来てますか?」


「まぁ、及第点というところですね。」


 そんな言葉を聞いてがっくり肩を落としていると、レッスン室の扉が開いて公爵様が何故か入ってきた。


「レッスンは順調に出来てるか?」


「公爵様、ごきげんよう。踊れるようにはなりましたがまだまだです。」


 マレシア先生、厳しい。すると公爵様は私に近づいてきて手を差し出してきた。


「明日は俺と踊るんだろう?なら今ここで練習しておいたほうがいい。」


「い、一緒に踊るんですか!?」


「踊らないのか?」


「や、やります!!」


 私はふるふると震え始めた手を公爵様の大きい手に重ねて、踊り始めのポーズをとった。


 マレシア先生が手拍子でリズムをとってくれている。


 そんな中、公爵様と私はゆらゆらと踊り始める。


 私がたどたどしかったのか、公爵様は私をぐっと引き寄せて踊りを続けた。


 ち、近い。


 それに、公爵様ってやっぱり大きいんだな。


 筋肉もついてて……って、何を考えてるの私は!


 雑念は消して、踊りに集中する。


 すると、とある事に気づく。


 公爵様、リードしてくれてる?


 そのおかげなのか、いつもより踊りやすい。


 くるくるとターンをして、最後の決めポーズに……決めポーズって、公爵様に体を預けないといけないよね。


 大丈夫かな……


「集中しろ。」


「ひゃい……」


 私は意を決し公爵様に動きを任せた。


 すると、私の腰に手を添えてくれたので体重をかけて倒れる。


 すると、綺麗なポーズが出来上がった。


 逆さの視点から見たマレシア先生は、拍手をして嬉しそうにしていた。


「公爵様に奥様、とてもお上手でした!素晴らしいです!」


 マレシア先生は私の肩に軽くぽんと手を置いてニコニコしていた。


 私は公爵様にお礼を言う。


「公爵様、リードしてくれてありがとうございます。」


「……別に、踊る上で普通の事だ。」


 公爵様は疲れる様子も無く淡々と告げる。


 踊りが上手でうらやましい。


 これも経験の差なのだろうか。


 公爵様は私をじーっと見てからレッスン室を出ていった。


 公爵様って人間観察が好きなのかな。


 言っちゃえばよそ者だった私をよく見ている気がする。


 私もマレシア先生にお礼を言ってから、今日のレッスンと明日のリハーサルを終わりにした。


 レッスン室は窓はあるけれどカーテンを閉めていたから、廊下の窓が暗くなっていてびっくりした。


 私が急いで部屋に戻ると、リメアと他のメイドさんがバタバタと忙しそうにしていた。


 リメアは私に気づくと、すごい剣幕で私の肩に手を置いた。


「ルチェット様、今すぐお風呂に行きますよ!!」


「は、はい!!」


 リメアは私と他数人のメイドさんを連れて、お風呂場へ向かう。


 リメア達は何やら荷物を沢山持っていて、重そうだから持つか聞くと、大丈夫だと勢いよく言われた。


 お風呂場の脱衣所に着くと、メイドさん達が一斉に私のドレスを脱がせてきて、浴場に押し込まれた。


 そのまま私は体を隅々まで洗われて、湯船に入ると皆が髪の毛をケアしたり、マッサージしたりで忙しなくしていた。


 いつものお風呂とは大違いで、パーティーに出る日は毎回大変だな、と湯船に浮かぶバラの花弁をいじりながら思った。


 湯船から出ると、いい匂いのオイルを体に塗られた。


 擽ったくて身を捩りそうになったけど、それだとメイドさん達が大変かな、と我慢する。


 食事を軽く食べたら、いよいよ明日に向けて寝る時間がやってきた。


 色々不安はあるけれど、マレシア先生のレッスンもちゃんとこなしたし、何より公爵様も一緒だから心強い。


私は明日のパーティーを楽しみにしながら目を閉じて眠りについた。



________



 翌日、いよいよパーティーの日になってしまった。


 私はいつもより早起きをしてすぐ顔を洗って、メイドさん達を呼んだ。


「おはようございます、ルチェット様。今日はとびきり綺麗にしますからね!」


「よろしくお願いします!」


 私はコルセットを締めてもらって、数人がかりでドレスを着せてもらった。


 その後、用意された椅子に座って髪の毛をアレンジしたり、化粧を施してもらったりした。


 座り続けてお尻が痛い。


 暫くして、身支度が終わったのかメイドさん達が私から離れていった。


「ルチェット様、出来上がりましたよ!」


 リメアが鏡を持ってこちらに向けてくれた。


 そこに映っていたのは、自分とは思えないくらいに綺麗に着飾られた私だった。


「これ……本当に私?」


「ルチェット様、とても綺麗です!宝石みたいです!」


「……皆、ありがとう。」


 メイド達は嬉しそうにしながらお辞儀をして、部屋を去っていった。


 私も重いドレスを持ち上げて馬車へ向かって歩き出す。


「今日のパーティー、楽しんで来てくださいね!」


「リメアはお留守番なの?」


「はい……ですが、ルチェット様の綺麗なお姿を見られたので満足です!」


 馬車まで着くと、リメアは手を出してエスコートしてくれた。


 私が馬車に乗ってリメアに手を振ると、リメアは笑顔で手を振り返してくれた。


 初めてのパーティーだけど、きっとうまくいくはず。


頑張ろう、そう私が意気込んでいると、ガチャッと馬車の扉が開く音がした。


「えっ……こ、公爵様!?」


「……俺がいては不満か。」


「い、いえ!断じて!!!」


 ま、まさか、公爵様も一緒に行くの?


 別の馬車じゃないの?嘘でしょう?


 私のドレスが大きいから、体の大きい公爵様は狭いと思うんだけど。


「あの……無理せず……私がいるせいで狭いでしょうし……」


「構わない。」


「あ……はい……」


 そうしている内に馬車が動き始めて、公爵様とお出かけしたあの日のような沈黙が続くと思っていた。


 しかし、公爵様は私にとってとんでもない発言をしてきたのである。


「……君の家の事をくまなく調べたが、君について何も出てこなかった。スパイとして育てられたのか?」



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