8.隠し事?
母の電話で不安になった香里は…
「来てくれるのは大歓迎だけどウチは遠いし、移動に丸1日かかるよ」
『まだそれ位の体力はあるわよ。まだパートとはいえ働いているし』
「決して嫌じゃないのは先に言っておくね。でも一応家族と相談したいから、また返事をするわ」
『勿論来てくれてもいいのよ。まぁ旦那さんとも相談してね』
そう言い電話を終えた。明確なものは無いのに何故か引っかかる。考え込んでいたら夫が肩を抱き心配そうに私を見る。大丈夫だと告げ片付けをするためにキッチンに向かった。
そして日課の食後のゲームをしていたら夫のスマホが鳴った。話の感じから井鷺氏からの連絡だ。夫はゲームを中断し書斎に。永人はまだゲームを続けている。片付けを終えて
「永人。ゲームタイムは終了よ。お風呂に入りなさい」
「はーい」
ゲーム機を片付けている永人を見ながら
「永人。もし今年の夏休みお祖母ちゃんの所に行かない事になったら嫌?」
振り返った永人は驚いていたが、少し考え不安げに
「もしかしてお祖母ちゃんお体悪いの?」
「!」
思ってもいなかった返答に私が固まってしまった。心配かけないように笑いながら否定し、お祖母ちゃんが都会観光したいみたいだと誤魔化した。
すると永人は安堵の表情をうかべ、自分が近くの大型ショッピングモールを案内すると意気込む。
その姿を微笑ましく思いながら永人に風呂に入る様に促す。
永人に言われたドキっとした。子供の感は鋭いから、もしかしたら母の体調は良く無いのかもしれない。
『いや。もしそうなら井鷺氏が何らかのアクションを起こすはずだ』
母が重い病を患っていると思いたく無くて、必死に別のことを考える様にした。もやもやしていたら永人がお風呂から上がりリビングでTVを見始める。私は湯が冷めない内にお風呂へ。
湯船に浸かりながら考えない様にしていた【約束の日】を考えていた。
「契約した時はまだまだ先だと思っていたのになぁ…」
時の流れは早く【約束の日】はあっという間に来てしまうと思うと身震いする。今は私の我儘を聞きてもらっているが、【約束の日】が来たら今度は私が受け入れなければならない。どんどん下がるテンションに湯船から上がれずにいたら…
「香里さん。ガス代の節約だから僕も入るね」
と言いながら夫が浴室に入ってきた。どうやら夜のお誘いを断られ、少しでもイチャつきたい夫なりの作戦のようだ。怒られると思っていた様で、テンションが低い私に驚いている。そして直ぐに湯船に入ってきて私を抱きしめた。
「何が僕の愛する香里さんを悲しませたの?僕に言えない事?」
そう言い額に頬に口付けを落とし心配してくれる。夫の愛に更に気弱になりそうだ。少し考えて思っている事を素直に話した。最後まで口を挟まず聞いてくれた夫は
「お母さんの事は会って目を見てちゃんと話そう。そうじゃないと本当の事は分からないよ。それにもし体に何かあるなら早く治療しないとダメ」
「でも本当に病気なら【約束の日】は早まるわ。貴方はその方がいいんじゃないの!」
八つ当たりなのは分かっているが、気持ちの整理が付かずキツイ口調になると、夫は触れるだけの優しい口付けをし
「僕は自分の責務の重さをちゃんと分かっていているし、それを全うする気でいるよ。でもに愛する香里さんが悲しむ事はしたくない。だから【約束の日】が遅くなっても僕はいいと思っている。だから今は香里さんのお母さんの事を優先しよう」
そう言いお盆の前に実家に帰省しようと提案してくれた。そして相談をし7月にある3連休に帰省する事を決めた。また普段は井鷺氏に連絡するのを嫌がる夫が、井鷺氏に連絡してくれる事になった。
この後結局夫に絆されお風呂場でイチャイチャし、2人とものぼせたのは言うまでもない。
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