33.母の告白
母の滞在3日目。母は友人?と出かけて行き…
疑問に思いながら家に着くと、母が出かけて暇そうな永人。うだうだ言い出したら夫が室内遊園地に行こうと言ってくれ、男子’Sは直ぐに用意を始める。少し疲れた私は遠慮し送迎だけする事になった。
実は夫は運転免許を持っていない。交通ルールは理解できているが、能力のせいか自身以外の物のコントロールが壊滅的に下手で、練習中に公安警察の車を数台破壊したそうだ。だからバイクもダメで辛うじて自転車には乗れるようになった。だが夫の自転車は失礼だが高齢者の運転の様にふらふらするので見ていて怖い。そんな夫に大川氏は『移動は公共の乗り物を使って下さい』と言い全ての運転を控える様にお願いした。
遊びに行く事になり喜ぶ息子と夫を乗せ室内遊園地に向かう。車内で2人に注意事項を伝え3時間後に迎える来るといい送り届ける。
私は一旦家に帰り心に引っかかっている母と会っていた女性を思い出していた。もしかしたら擁護施設にいた頃の知り合いかもしれないし、大学病院の元同僚かもしれない。そう思いながら1人の時間を過ごす。
「そろそろ迎えに行こうかなぁ」
出かける準備をしていたら井鷺氏から連絡が入る。明日は以前公安警察からお願いされていた母の検診で確認の連絡だろう。
『明日ですが10時にこちらの本部にお越しいただけますか?』
「え?病院じゃ無くて?」
検診なのに本部ってどうゆう事? 理由を聞いても井鷺氏は当日来てもらえば分かると言い教えてくれない。
『もしかして母が検診を受けるのを渋ったのだろうか?』
そう思っていたら察した井鷺氏が母は渋ったのでは無いと言い、なんかハッキリしない物言いにモヤモヤしながら電話を切り2人を迎えに家を出た。
運転しながら母に健診の受診のお願いをした時の事を思い出していた。いつも母は健康状態を聞けば大丈夫しか言わず、しつこく聞けば勤めている病院で定期的に検査受けていると言い健診を渋る。しかし今回は心配だからと強めにお願いすると、最後は渋々受けことを了承してくれた。
『7月の連休時に母が勤める病院の院長に井鷺氏が話を聞きに行っている。もしかしたらその時に母の健康状態に問題が無いと分かり、急遽予定が変更になったのか?』
色々考えるがピンとくるものがなくモヤモヤしていると室内遊園地に着いた。そして2人をピックアップし帰りに買い物をして家に帰る。そして家に着くと母から着信が入り
『今日会っていた知り合いと夕食を食べる事になったの。当然でごめんね。帰りは時間が分からないから駅からタクシーで帰るわ』
珍しく声が弾んでいる母。中々会えない友人と話に花が咲いたのだろう。昼間のモヤモヤが少し薄れた様な気分になる。楽しんで来てと言い電話を切った。
そして日付が変わる少し前に帰宅した母は珍しく酔っていた。普段からあまり感情の起伏が無く淡々としている母のほろ酔い姿は衝撃的だったが、母の意外な一面をみれて少し嬉しかった。
翌日。母を≪あそこ≫に連れて行く。母も事前に井鷺氏から予定変更を聞いていたようだ。まだ小1の永人を一人で家に置いておくわけにいかず、結局4人で≪あそこ≫に向かう。
約束の10分前に着くと大きな会議室に案内され、夫と永人は別室で待機となった。なぜか分からないが不安になって来るが、隣で座っている母は冷静で動じていない。緊張が高まったタイミングで井鷺氏が現れた。
そして母に丁寧な挨拶をし席に着く。そして予想外に母が話し始めて
「お母さん香里に話があってね。その話はウチの家族だけで終わる話じゃないから、井鷺さんにも同席してもらう事になったの」
「何?改まって。怖いよ!」
そう言い母を見ると…
「お母さん。残りの人生共にしたい人がいてね。その事を話し合いたいの」
「!」
予想外の話に口を開けて固まってしまった。
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