32.母と息子
母が我が家に来た。家に着くとご近所さんがいて…
母を連れて家に帰って来た。車を降りるとお迎えの鈴木ご夫妻がいらっしゃりご挨拶する。母にはお向かいの奥さんが夫目当てで、面倒くさいと愚痴っていたので母の反応が怖い。母は持って来た荷物から地元で有名な和菓子を取り出し、お向かいの旦那さんに挨拶をする。ドキドキしながら見ていたら無難に挨拶をする母。母が挨拶する間、永人は母の後ろでそわそわしながら待っていた。そして母の挨拶が終わるとお向かいのご主人に
「僕のおばあちゃん。初めてお家に来てくれたんだ」
そう言い永人はおばあちゃん自慢を始めた。お向かいのご主人は優しく母と永人と世間話をしているのに、片やブレない奥さんは夫に話しかけ、夫は逃げ腰になりながら母の荷物を家に運んでいる。夫が会釈をし家に入ってしまうと不服そうな顔をした奥さんは、旦那さんに先に戻ると言い自宅に戻って行った。そんな奥さんに溜息を吐いたご主人が申し訳なさそうに戻る。永人も直ぐに家に戻ると母が
「話に聞いていたけど厄介な奥さんね。ご主人が良い人そうだから無下に出来ないわね」
そう言い適当にお付き合いする様に言った。こうして私もやっと自宅に戻りゆっくり過ごす。
永人は母が滞在中は客間で母と寝ると言い母にべったりだ。実は永人の一番仲のいい男の子が祖父母と同居しており、口には出さないが永人は祖父母への憧れが強い。
『夫の故郷に行けば祖父とも会えるんだけどね…』
そう思うとまた気分が急降下する。永人には悪いがもう暫くはおばちゃんだけで我慢してねと、心の中で謝ったのだった。
翌日。永人の希望で家から近い大型のショッピングモールへ向かう。永人は勝手知れた店内を母の手を引いてウインドウショッピング。普段会えない孫に色々買ってあげたい母の財布は、最大に緩んでいて私が何度も止める事になった。こうして欲しかったゲームのソフトと、スニーカーを買ってもらい超ご機嫌の永人。
そして母は永人が選んでくれた明るめの色のカーデガンを購入し、楽しいショッピングになった。ずっと付き添いをしてくれていた夫が、夕食も食べて帰ろうと提案してくれ、皆でイタリアンレストランに入り楽しい食事をする。そして食後のデザートを食べていたら母が
「明日は9時10分の電車に乗りたいの。送ってくれる?」
「OK!どこまで行くの?」
何気なしに聞いたがはぐらかされた。もしかして秘密の恋人でもいるのかもしれないと思い少し楽しくなる。その事を寝る前に夫に話すと
「お母さんはとても素敵な人だからあり得るね。でもそうなら相手がちゃんとした人か僕が確認しないと」
そう言い空想上の母の彼氏に厳しい目を向ける。その様子は娘を持つ父の様で笑えた。こうして私の家族も愛してくれる夫の愛に感謝し休む事にした。
そして翌日。いつもと同じ時間に起きてモーニングルーティーン。そして8時半過ぎに母を乗せて最寄りの駅に向かう。母はスマホで電車の乗り換えを確認している。田舎と違い複雑な電車の乗り換えだけど、高齢の母は一人で大丈夫だろうか…
心配に思いつつ駅前に着きロータリーで母を下ろすと、母は礼を言い改札に向かって歩き出す。何気に改札に向かう母を目で追っていると、母は改札前で女性と合流している。
「誰?」
その女性は面識がない。年のころは私より少し上位で品のある女性だった。母との接点が分からず考え込んでいたら、後ろに停まっていた車にクラクションを鳴らされ慌てて発車し、疑問に思いながら家路に着いた。
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