30.超人
初めて見る夫の本気に期待半分…不安半分で…
永人の身体能力の測定が始まった。初めに夫と2人で1周500mのトラックを準備運動でゆっくり走る。夫は永人の走りを確認しながら走る速さを調整している様だ。楽しそうに走る2人を見ながら
「ウォーミングアップでこの早さって。本気はどんだけ早いの!」
驚き思わず心の声が出ていた様で、隣で見ていた井鷺氏も静かに頷いた。夫は今まで能力について話してくれた事がなく、私も夫の本気を知らない。
段々見ているのが怖くなってきたら、井鷺氏が私の背に手を添え椅子を勧めてくれ…
「きゃあ!」
トラックで永人と走っていた夫が一瞬で目の前に来て、私手を引き反対の手で井鷺氏を払いのけた。恐らく訓練をしていない普通の人だったら吹っ飛んで大怪我していただろう。しかし井鷺氏は公安警察だけあり普段から鍛えいる為、瞬時に夫の動きに反応し後ろに下がり転倒を免れた。永人は立ち止まり手を叩き父親の能力を間近に見て興奮している。
井鷺氏は溜息を吐きながら
「貴方は10年前から変わりませんね。この様な事は一般人にはしないで下さい」
井鷺氏はそう言い身なりを整えた。夫は普段から能力をコントロールをしているが、相手に能力があると感じるとコントロールできない様だ。
悋気の強い夫は異性が私に触れるのを嫌う。そう聞くと愛されていると言う人もいるだろうが、規格外の夫を持つと嬉しい事も多いが、予想だにしない事をしてくれるので気苦労が絶えない。
井鷺氏は夫を刺激しない様に細心の注意をはらいながら、私から離れて見学をしている。永人の元に戻った夫はランニングを再開した。
こうしてウォーミングアップを終えた2人は短距離100mのタイムを計る事に。夫は自動計測器をセットして、永人と並びスタート位置に着き準備はOK。夫は走る前に永人に全開で走る様に伝え…
「えっ」
ピストル音が鳴ったと思ったら、2人はゴールの先にいる。一瞬の事で全く見えなかった。驚き井鷺氏に視線を向けると、流石に鍛えている井鷺氏にはゴールだけは分かったそうだ。
「なにこれ超人じゃん」
そう言うと井鷺氏が
「はい。超人ですね」
そう言い珍しく表情を崩した。そして夫に負けた永人は悔しい様で再戦を申し込んでいる。その姿が父親として嬉しい様で、2人して話しながらスタート地点に移動を始め再度計測する。
「恐らく…」
井鷺氏はそう呟き立ち上がり、自動計測器に走っていった。そして機器を操作した後に夫に何か話している。夫は井鷺氏の話に苦笑いした後に計測器を端にあるベンチに移動させ、再度スタートラインに着いた。離れているここからは状況が分からず、戻って来た井鷺氏に聞くしか無く
「計測器の故障ですか?」
「いえ。計測不能です。ここにある計測器は一般人用でお二人のスピードに対応できません。恐らくお二人のスピードを計測できるのは、専門の研究所や企業にある精密機器でないと無理でしょう」
そう言いまた競争している2人に視線を向けた。そして井鷺氏は2人のスピードを計測できる機器は、世界各国を回っても見たかるか定かだはないと言う。つまり…
「お二人はこの世界の理から外れた能力をもち、それは超人の域です」
そう言いスマホを取り出しどこかに連絡をする井鷺氏。頭では分かっていたつもりだが、真の夫を目の当たりにし何ともいえない気持ちになった。
これはを境にウチへの監視が増えたのは言うまでもない。
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