29.体力測定
日を変えて永人に話の続きをし、現時点の永人の能力を測る事になり…
息子に真実を明かし気が楽になった夫と、父親の秘密を知った息子は絶好調で、回転寿司の皿数を更新し私のお財布は寂しくなってしまった。
そして翌日曜日。朝はゆっくりしてお昼前から永人には昨日の話の続きをした。永人は昨日とは違い夫の正体を知り落ち着いて夫の話を聞いていた。時折永人が理解できない表現を説明しつつ、噛み砕き分かりやすく話し午前中には全て話し終えた。
永人は父親がアニメの主人公の様な超越した能力者と知り、そして自分にもその能力が受け継がれている事に興奮を隠せない。高揚し鼻息荒い永人に、昨晩夫と話し合い決めた事を永人に話す。
「父さんの能力はひけらかすものでは無いんだ。危険な時や必要な時にしか出してはならない」
そう能力が開花しつつある永人に力の使い方を教えておく必要がある。今までは他の子に比べ運動神経がいい位の認識だったが、先日の体育祭で夫に感化され本気で走った永人を見て、能力の制御の必要性を感じたのだ。
早速行動に出た夫は今朝井鷺氏に連絡を入れ、≪あそこ≫の職員が使う運動施設を使えるようにお願いし午後から借りれる事になった。連絡を受けた心配性の井鷺氏は休日返上で付き合ってくれるようだ。こうして人目のない施設で永人の身体能力を測る事にした。
そして昼食を軽めに食べ井鷺氏に教えてもらった都内にある公安警察の施設へ向かう。道中夫に走りを見てもらえる永人は上機嫌で、助手席に座る夫はうたた寝をしている。小1時間走り施設に着くと既に井鷺氏が入口で待っていた。
「お休みの所申し訳ありません」
そう言うと井鷺氏はいつも通り抑揚のない声で気にしない様に言い、視線を永人に向けた。小さい頃に何度か会った事はあるが、物心付いてからは初めてだ。井鷺氏は親戚の子を見るかのように目を細めて屈み、永人の視線に合わせ挨拶をする。永人は元気に井鷺氏に挨拶すると少し考え私を見て
「僕おじさんに会った事ある?」
「何故そう思うんだい?」
井鷺氏が聞くと永人は
「おじさんの目の上にある黒子を見た気がする」
そう言い大人を驚かした。その様子を見ていた夫は開花した能力は身体能力だけではなく、知能も高いかもしれないと言い、井鷺氏に知能検査も依頼した。
そして井鷺氏の案内で施設の室内グランドに来ると、公安警察の職員が体力作りで走り込みをしている。永人は大人の真剣な走りに目を輝かせて、井鷺氏は測定を始める前に他の職員の退場を促していた。
そして夫は上着を脱いでストレッチを始める。夫は細身に見えるが中世の彫刻の様に美しい体をしており、御尊顔と同じく美しい体をしている。私が夫の筋肉を愛でているのに気付き、夫は近寄り顔を寄せて
「僕のすべては今晩見せてあげるからね」
「!」
夫婦になって10年経つがこの手の話は苦手な私。顔が熱くなるのを感じ、照れ隠しに夫の背中を思いっきり叩いた。その様子を見て井鷺氏が苦笑いしている。
「父さん早く走ろうよ!」
永人が駆け寄り目を輝かせ夫を急かす。こうして体力テストを始めるた。
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