2.体育祭
体育祭に前に絡まれる息子を心配したが…
こうして夫がリレー走者に選ばれ永人は機嫌良くなり、安心していたらどうやら学校であの子に絡まれているらしい。心配で悩んだ末に連絡帳に状況を書いた。先生の返事はその日直ぐに返って来た。先生の文からあの子の扱いが厄介で苦労しているのが窺える。読んだ後に連絡帳を永人に渡すと
「ママ。大丈夫だよ。体育祭でパパがあの子を黙らせてくれるって信じているから」
「永人…あまり期待しないでね」
こうして不安を抱えつつ体育祭当日を迎えた。
朝からお弁当を作り永人に持たせ子供たちは先に登校。親は事前に観覧場所の抽選がされていたので始まる少し前に学校に向かった。学校からの案内プリントを見ながら席に着くと、隣は永人と仲がいい佐久間君のママが座っていた。席を夫と代わりママさんと並んで話し始める。少しすると夫は入場する息子の写真を撮るべくカメラを持って撮影エリアに移動をした。私は保護者席から観覧しながら佐久間ママと楽しいお喋り。佐久間ママは看護士だけあり、人当たりがよく話し易い。楽しく話をしていたら後ろから声をかけられた。振り返り
「っげ!」
思わず声に出してしまうと相手が嫌な顔をした。そして座っている私を見下ろして
「あら永人君のママさん。ごめんなさいてっきりお祖母様かと思いましたわ」
声をかけて来たのは拓斗ママ。古典的な嫌みで自分が他のママに比べ若いと言いたいのだろう。確かに私は他のママに比べ年上だが、祖母に間違われるほど老けてはいない。
挨拶だけし佐久間ママとまた話を始めると、拓斗ママは私の後ろの席の様で他のママとあからさまに私の話を始めた。
佐久間ママか嫌そうな顔をし気にしない様に言ってくれる。気にはしていないがいい気はしない。少しモヤモヤしていたらアナウンスがあり体育祭が始まった。
保護者席はママが多く父親は撮影エリアに行っている様だ。撮影エリアにいる夫を確認すると、あれだけ自慢した拓斗パパを見てみたくなる。でも正直言ってウチの本気の夫に勝てる人はこの世界にいないだろう。
本心を言えば私も夫を思う存分自慢したい。しかしそれをすると秘密がバレ、また引越しをする事になってしまう。
『だから夫自慢を我慢しているのに…』
そう思いながら入場する息子を必死に探し、スマホで写真を撮っていた。
そして可愛い生徒の選手宣誓が終わり、撮影を終えたパパが保護者席に戻ってきた。帰って来る父親達を見ていたらひと際目立つ父親が。ブランドもののスポーツジャージを着て、体育祭になのにがっちり髪形を決めた甘いマスクの30前半の男性。そんなイケメンパパに他のママの視線が集中する。
すると後ろ席の拓斗ママが【どこから出たの?】って声でパパを呼び手を振る。そのイケメンパパはどうやら拓斗パパの様だ。近づいてくると同じクラスのママが溜息を吐いた。
『確かに芸能人みたいに整った顔をしているわ。でも私のタイプじゃない』
そう思いながら戻って来るパパたちを見ていたら、拓斗パパの後ろからゆっくりウチの夫が歩いてくる。だぼだぼのジーンズにぼさぼさの長髪の夫。顎に少し無精髭もあり深夜に遭遇したら通報しそうな風貌だ。
「香里さん。いい感じの写真が撮れたよ。帰ったらゆっくり見ようね」
「はい。お疲れ様」
そう言いお茶が入ったペットボトルと渡すと後ろから笑い声が。きっと拓斗ママと取り巻きがウチの夫を見て揶揄しているのだろう。隣の佐久間ママが気を使い話題を振ってくれる。
『ありがとう佐久間ママ。でも大丈夫。午後からの保護者リレーでウチの夫を初披露するから!』
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