24.守る
喧嘩をして出ていった夫が帰らない。香里は不安になり…
自己嫌悪と後悔で夜も眠れず朝を迎えた。あれだけ離婚すると言ったくせに、夫が愛想をつかし他の女性と夜を過ごしたと思うと胸が張り裂けそうになった。ふらふらになりながら授乳を終え、満腹で眠った永人の顔を見ながら声を殺して泣いていた。
「香里さん!」
呼ばれて振り返ると額に汗を滲ませヨレヨレの夫が。そして駆け寄り抱き私の心配をし泣いた理由を聞いてくる。あれだけ八つ当たりして後悔したのに感情を押さえられず
「貴方が帰って来ないからてっきり私に愛想を尽かして、一緒に転移してくれる女性を探しに行ったんだと思ったの!」
そう言い夫を責めた。夫は頬や額に口付け私が落ち着くまで何も言わず抱きしめてくれた。そしてやっと泣き止み落ち着いた私に視線を合わせて…
「僕がちゃんと話して来たから。もう香里さんを悩ます事は無いから。だから僕を遠ざけないで…」
そう言い強く抱きしめた。あまりにも強く抱きしめるから、抱っこしていた永人が起きて泣いてしまった。慌てる夫に落ち着く様に言い、再度永人を寝かしつけリビングに戻り夫と向き合う。気まずいがちゃんと向き合う時なのだと自分に言い聞かせじっと夫の目を見る。
すると夫は
「昨日は故郷が近くなる日だったから父上に話をしてきたよ。その後に朝一で≪あそこ≫に行って偉いさんに父上からの提案を伝えて来たんだ。多分あれで暫くは大人しくなるよ。だから僕たちはこの幸せな生活を今まで通り続ければいい。香里さんの条件が満たされるその日まで」
そう言い背中を撫で私を落ち着かせてくれる。
夫のこの行動で日本政府から転移を急かす事は無くなった。そして数日経ちやっと話を落ち着いて聞けるようになった私は、夫が日本政府に提案した内容を聞く事になった。
その前に夫が言った”近くなる日”とは、夫の故郷であるの異世界と地球が月に一度近くなる日の事。その日にゲートと言われる場所で故郷とコンタクトがとれるのだ。夫は月に一ここに行き故郷に近況報告をしている。実は私も二度ほどゲートを訪れ夫の父であるクラトスカ国王と話をした事がある。
長く話す事は出来なかったが、話した感じ普通の父親で、夫の事をとても心配しているのが分かった。二度目話した時に永人が生れた事を報告すると、とても喜び産んだ私に感謝をしていた。
そしてその時に私の日本を離れられない理由も御存じだった、国王は夫が帰って来るまでがんばるからこっちの心配しなくていい言ってくれ、母を大切にする様に言ってくれた。
夫は日本政府を黙らせるために交渉カードを切った。詳しくは教えてもらえず詳細は知らないが、地球で枯渇しそうな資源が、夫の故郷であるクラトスカ王国は豊富に採取されており、その鉱物を日本に優先で譲る事を理由に、夫の帰国に関して口を出さない約束をさせた。
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