17.似たもの父子
やっと海へ。でもここでも遣らかす夫と息子に…
朝から一輝に絡まれ散々だったが、夫の機嫌も直り永人と海に行く準備をしている。母と私はお弁当作り中で、散歩の間に母が大方作ってくれていて思ったより早く出来そうだが、永人が待ってられず夫が先に海に連れて行く事になった。
「危ない…から浅瀬で遊んでね」
「分かった」「うん!」
2人はいい返事をしてビーサンを履き手を繋いで海に向かった。残った私と母は出来上がったおかずを弁当箱に詰めていく。おかずは私の好きなものばかりでテンションが上がる。
そして母の身支度中に私が調理器具を洗い、身支度を終えた母が戸締りを確認し私が着替える。そして1時間遅れで海へ。
海に着くと結構な人が来ていて、うちの目印の水色のパラソルを探す。パラソルを見つけ覗くと2人はいない。母に荷物番をお願いし波打ち際に向かうと、背後から話が声が聞こえてきて
「お一人ですか?」
「よければ一緒しませんか?」
ビーチ定番のナンパの様だ。それより夫と永人はどこだ?
「いや妻と息子と来ているので」
『この声は夫!』
振り返ると夫がギャルズに逆ナンされていた。それにいつも隠している御尊顔が露に。溜息をついて夫の元に行くと夫は破顔し抱きついて
「僕の愛妻の香里さん」
そう言いギャルに私を紹介する。ギャルズは私を頭の先から舐める様に見て鼻で笑う。恐らく自分達の方がイケてると判断したのだろう。彼女らは胸を強調したビキニ。それに対して私は長袖と10部丈のラッシュガードの上下を着て、サングラスに帽子を被った日焼け対策万全のフル装備だ。色気のいの字もない。
『正解!普通ならあなた達が勝者』
しかしウチの夫は別次元の男だから違うのだ。私を嘲笑うギャルズに珍しく気付いた夫は驚くほど冷たい視線をギャルズに送り
「表面しか見えない可哀想なお嬢さん達だ。心から愛してくる人と出会えればいいですね」
そう言い私を抱き上げその場を去った。残されたギャルズは後ろで何か言っているが聞かない事にした。それよりなんで顔を晒しているの?
「あーそれは仕方ないね」
どうやら浮き輪で遊んでいた男の子が流され、助ける為に全開で泳いだそうだ。そして
前髪が濡れる→顔に張りつく→前が見えない→髪を撫で上げる。
経緯は分かったがビーチ客の視線が集まり私に突き刺さる。仕方ない事とはいえ辛い。
「それより永人は?目を離したらダメじゃん!」
「大丈夫だよ。僕の子だよ。あのブイまで泳いでも余裕さ」
そう言い遊泳エリアを示す沖に浮かぶブイを指差した。それは分かっているけど、誘拐とかそっちが心配だ。目を離した夫を注意し2人で永人を探すと…
「どこの小学校?」
「好きな子はいるの?」
浅瀬で砂山を作っている永人に女子が話しかけている。そうこっちも逆ナンに合っていた。そんな所似なくていいの…
「永人」
「あっママ」
そう言い私の元に来て夫と同じ様に少女に私を紹介する件が始まった。そして同じ結果になり永人に手を引かれ母が待つパラソルまで戻る。
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