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16.有意義な出張 - 井鷺side -

裏方井鷺の意外な一面を見る事ができ…

『あぁ…今回の出張は有意義だった…』


帰りの飛行機で撮り溜めたお猫様の写真を拝み頬が緩んだが、明日の上司への報告を思うと大きな溜息が出た。そして長く担当しているあの家族を思い出し、この出張を機に別れが近い事を感じていた。

10年前のあの日。同僚が任務中に負傷し代わりに出動した任務が10年も続くとは思わなかった。

監督する事になった黒川家は問題が多く、特に異世界人の夫に悩まされていた。しかし今回は妻の香里さんに関する任務で、彼女の実家がある町に向かっている。


黒川家は奥さんの香里さんが年上。勝気で真面目な性格の香里さんが、夫を上手くコントロールしてくれている。私と彼女との出会い方が悪く初めは嫌われており、コミニケーションを取るのに気を遣った。だが最近は少しは信頼を得たと思っている。

今回の出張は今後の黒川家の行き先を左右すると感じており、今日会う院長の資料を持つ手に力が入る。


そしてやっと香里さんの母親が勤める医院の最寄りの駅に着き、タクシーに乗り運転手に目的地を告げ医院に向かった。そう香里さんの母親の健康状態を確認する為に院長に会う。


30分ほど走り医院に着く。事前にアポは取っており院長に直ぐに会うことが出来た。警戒されない様に聞きだすために事前に(院長)の情報は頭に入れてある。

会う医師の名は笹川哲郎。長く都内の大病院に勤務し、医師である父親が引退するのを機にこの町に戻り医院を継いでいる。応接室に入って来た院長は資料で見た写真より若々しく実年齢より10歳は若く見えた。


「こんな田舎まで政府の役人さんが何をお調べですか?」


医師の第一声に警戒されているのを感じた。自分でも愛想が良くないのは分かっている。だがお世辞(おべんちゃら)を言うつもりはない。ただ仕事をこなすだけだ。


「今日はお伺いしたのは、こちらにお勤めの黒川雅子さんの件でお聞きしたい事がありまして…」


香里さんの母親の名を出した瞬間に医師は空気を変えた。直感で何かあると感じ慎重に話を持って行く。そして…


「休日にご対応いただき、ありがとうございました。この件に関しては上には報告いたしますが、香里さんには内密に致しますので」

「よろしくお願いします。あの人の為にお願いします」


初めと違い愛想よく話かける笹川氏。確認が取れ帰り事になり時計を見るとギリギリ日帰りできそうだ。すると笹川氏が


「こんな何もない田舎にきてトンボ帰りはお辛いでしょ。真相を聞き出す為に話が長引いたといい、今日はこちらに泊まっていかれるといい。知り合いが旅館を営んでおりますから部屋は直ぐ取れますよ」


確かに仕事とはいえ、このままとんぼ返りは辛い。少し考えて笹川氏の提案を受け入れる事にした。すると笹川氏はスマホを取り出し部屋の空きを確認してくれる。そして


「部屋は空いているそうです。旅館には私の知り合いだからサービスする様に言ってありますから。そうそう先に聞いておくべきでしたが、猫は苦手ではありませんか?」

「大好きです!」


猫と言われ思わず声のトーンを間違えてしまった。そう私は大の猫好き。仕事柄飼うことが出来ず、猫カフェのヘビーユーザーなのである。

辛い仕事を続けられるのもあのお猫様の肉球のおかげだ。

返事を聞いた笹川氏は笑いながらその旅館の特色を教えてくれた。その旅館はオーナーの猫好きが高じて、敷地内の中庭に沢山の猫が放し飼いされているのだ。

笹川氏曰く生き物なので粗相する事もあり、猫好きでないと宿泊は難しいそうだ。だが猫は本館のみで別館に泊まれば猫に会う事は無い。それを聞き


「是非本館で!」


こうして笹川氏と別れ旅館に向かう。メールで上司には話が長引き宿泊すると連絡したので問題ない?だろう。

部屋に案内されネクタイを緩め早速中庭に向かう。そしてここからチェックアウトまでお猫様を堪能し楽しい旅…もとい出張となった。


『俺にもこれくらいの癒し、神様は許してくれるだろう』


そう呟き撮り溜めた写真を整理しいい気分で1日を終えた。

お読みいただき、ありがとうございます。

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