14.ビバ!実家
実家滞在2日目。今日は何しようかなぁ〜
「ママ!早く起きて!」
胸に嬉しい重みを感じ目覚めると、永人が私の上に乗っかり声をかける。手を伸ばし永人を抱きしめると、後ろから夫が長い腕で永人と私を抱きしめ団子になった。永人は夫にも早く起きるようにいい、団子から抜け出し客間を出ていった。夫の腕は緩むどころか私に覆い被さり口付けの雨を降らせた。
一頻り口付け満足した夫は私を抱き上げ居間まで運ぶ。この光景を見慣れた永人は何も言わずに朝の子供番組を見ていて、朝食を準備している母は笑っていた。
穏やかな朝を迎え母が作ってくれた朝食を皆んなで食べる。ウチは私がパン好きな事から洋食が多く、母の作る和朝食は新鮮な様で、夫も永人も沢山食べている。それを見る母は目を細め微笑み嬉しそうだ。そんな幸せな食卓を眺めながら
『実家最高!』と心で叫ぶ。
「ママ!天気がいいから父さんと海に行きたい!」
「いいよ。まだ早いから先に父さんと散歩しておいで」
そう言いと永人は返事をし歯磨きをする為に洗面所に向かった。私は片付けとお弁当を作ろうとしたが、母が私も一緒散歩に行く様に言った。
「お弁当は散歩から戻ってから作り、後から私と届ければいいじゃない。この辺町並みが変わったから散策しておいで」
母の言葉に甘えて家族で朝の散歩に出る。永人を真ん中に手を繋ぎ家を出て、海と反対の山の方へ向かう。うちの実家は海と山に挟まれた自然豊かな町で、都会の様に忙しく無くゆったりとした時間が流れている。永人は目を輝かせ楽しそうだ。
「香里さん」
「何?」
「香里さんは素敵な所で育ったんだね。僕の故郷と少し似ているよ」
そう話すとすかさず永人が
「父さんの父さんの家はどこなの?」
察しのいい永人は夫の実家の事を聞いた事がない。物心ついた時に一度聞かれ、凄く遠くの所にあって簡単には行けないと話したことがある。
それから永人はその事を聞いてこない。きっと不思議に思っているはずだ。しかし夫も故郷の話をしないので、聞いてはいけないと直感的に感じているのだろう。
『聞き分けが良すぎて色々我慢しているんだ』
そう思うと罪悪感が芽を出した。すると夫が抱き寄せ頬に口付けそして永人に
「父さんの故郷の話は家に帰ったらしてあげる。だから今はおばあちゃんの田舎を堪能しよう」
夫の発言に永人も私も驚き固まる。思わぬ返事に戸惑う永人は私の手を握った。私は微笑み目の前の坂道を指差し駆けっこを提案して、フライングして先に走り出した。二人は人外的な速さだから、これ位のハンデは許してほしい。
「!」
ものの数秒で二人に抜かれ最下位になった私。夫と永人はハイタッチをして喜び、さっきの気まずい空気を払拭できた。また楽しそうに散歩を再開した二人を見て、心の中でいい仕事をしたと自画自賛し上がった息を整えた。
楽しい散歩を終え家の前に来ると中年の男性が立っている。嫌な予感しかしない。振り返り散歩を延長しようとしたら、こちらに気付いた中年男性が足早に向かって来て…
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