第26話 黒船経営会議(19/3月)
(簡易人物メモ)
糸瀬貴矢(9): 黒船SC 代表
矢原智一(8): 黒船SP 代表
細矢悠(8): 黒船TA 代表
真弓一平(6): 黒船SC 管理部長
福島亜紗(6): 黒船TA 広報担当
ーーーーーーーーーー
2019年3月末。黒船幹部がサッカーパークに集合する。最近はそれぞれが忙しくしているため、一同が会するような機会はこれくらいしかなく、ちょっとした同窓会の気分でもある。
参加メンバーは、黒船サッカークラブから代表の糸瀬と管理部長の真弓。黒船サッカーパークからは代表の矢原。黒船ターンアラウンドからは代表の細矢と新入社員の福島である。
打ち合わせの場所は、前回同様にコンテナハウス。今回から動画撮影用に機材一式が設置されていた。もちろんノーカットで流すのは難しいが、経営状況を地域住民に公開するのは当初からのコンセプトだった。
以下は当日配られた資料と、経営会議の議事録である。
・・・・・・・・・・
黒船サッカークラブ
(実績報告)
2月24日のプレシーズンマッチは2-2のドロー。相手が3カテゴリ上の相手だったことを考えれば、今期1部昇格に向けた戦力は整ったものと判断。4月6日より県リーグ2部が開幕する。
ややイレギュラーな形で試合参加した西野裕太は正式に南紀ウメスタSCに加入。
またトロングジムに続き田辺組からスポンサー料2,000万円、チームエンブレムのデザインを担当してくれた寺田デザインからも100万円を獲得。
(今後の方向性)
リーグ戦の日程が後半に集中しており、5月から7月の3ヶ月間試合がない。これは県リーグ全体で同じスケジュールであるため、この中断期間をなんらか埋めるべく対応を検討中。
戦力補強については引き続き実施するが、ターゲットの選手のレベルはひとつ上を目指す。
・・・・・・・・・・
細矢「中断期間を埋めるというのは?」
真弓「チームとして試合勘を維持することが目的ですが、やはりせっかくみんなの身体が空いているので商業的な意味でもこの時間を無駄にしたくないということですね。それに、公式戦は権利の関係でうちの動画として取り上げられる時間が極端に少ないので、フルで挙げられる試合の動画を確保したいこともあります」
糸瀬「なんか独自で大会やろうと思ってるんだよね」
細矢「大会、ですか?」
糸瀬「そう。調べたら1部も3部も同じ中断期間があるから、県リーグのチーム全員暇なのよ。だからせっかくならそういう企画やって、儲けにいこうかなと。動画にもなるし」
福島「すごく良いアイデアだと思います。広報は動けますので決まったら教えてください」
真弓「続いて補強についてです。リーグ戦の途中からでも新しい選手は登録できますので、引き続き選手は探していきます。現時点で2部リーグを突破できる戦力は整っているとの認識なので、1部リーグで勝てる選手がターゲットです。つまり、さらにその上、関西2部レベルで通用する人材を探しにいきます」
矢原「ふーん、それは…難しいのか?」
真弓「例えばセレクションで入ってくれた大西くんや小久保くんは、県1部リーグのクラブに所属していた選手なので、もちろん彼らが関西リーグで通用しないと言っているわけではありませんが、外形的には彼らよりも上のレベルを求めるということです」
細矢「県リーグは都道府県ごとだからいっぱいチームありますけど、関西リーグだと全部集まってひとつだから、チーム数自体が少ないですよね」
真弓「その通りです。しかも彼らからすると今の我々は県の2部。2カテゴリ落とすことになるので、正直獲得のハードルは高いと言わざるを得ません」
細矢「重点的に補強が必要なポジションはあるんですか?」
真弓「前回のセレクションで埋めきれなかったポジション。インサイドハーフの選手ですね。練習試合で後半から真田くんの入ったポジションです。あれは正直苦肉の策でして、本職の選手がいれば真田くんの攻撃力を活かせますから」
糸瀬「将来的には強化専門の人間をチームには入れようと思ってる。スカウトってやつだな。それまでの間は既存のメンバーでやっていくしかないね」
・・・・・・・・・・
黒船サッカーパーク
(実績報告)
第一練習場の人工芝化工事が完了。第二練習場も完成したため、来月から人工芝化の工事に着手を予定。駐車場も完成しておりプレシーズンマッチから収益が生まれ始めている。
(今後の方向性)
ベースとなる施設は形になったので、収益を産むための施策を考えるフェーズに移行したい。
・・・・・・・・・・
矢原「あー、工事はいずれも予定より早く完工。駐車場も練習試合には間に合ったので、当日はほぼ満車で稼働。500×1,000台で50万円の収益が出ている。さすがにリーグ戦で1,000台埋められるとは思っていないので、他に収益を広げていく必要があると思う」
細矢「メインスタジアムは芝の養生が必要だから、そんなに頻繁には使えないですよね。そうなると、やっぱり完成した第一練習場は活用したいなぁ」
真弓「チーム練習で使うのも週の半分ですから、稼働していない日があるということですよね」
矢原「下村監督がスポットで手伝ってるサッカースクールに声掛けしている。うまくいけば半日くらいは毎週埋められるかもしれん。練習場のレンタル代は1万円で固定しようかなと思ってる」
糸瀬「あのちびっ子たちのクラブは?」
細矢「あー、木国JSCでしたっけ。いいかもしれないですね。多分どこかのグラウンド借りてるはずですよね」
真弓「下村監督に確認しますね。彼のお子さんも所属してたはずなので」
矢原「他はちょっとまだ未定。土地はまだいくらでもあるが、今までは『あるもの』を活用する話だったからスピード重視で進めてきたけど、ここから先は『ないもの』を一から作る世界になってくるから、慎重にやりたい」
糸瀬「了解。サッカーパークはある程度試合で集客が見込めるようになるまで周辺ビジネス立ち上げたところで儲からないから、慎重でいいよ」
・・・・・・・・・・
黒船ターンアラウンド
(実績報告)
wetube事業は目標通り登録者1,000人達成したため無事に収益化。広告収益が毎月入ってくるようになる。
トロングジム2件の稼働が開始。今月から月額合計600万円の家賃収入が発生する。またジム開発に投じた1億円の先行投資については今月末に紀伊銀行から同額の融資調達が決まっている。
さらに今月末に株式会社西野農園に対して1,500万円の出資を行うとともに別途1,000万円を西野黒船食品の設立資金として投資予定。食品ビジネスに参入する。
最後にECや練習試合当日に販売していたユニフォームやタオルについての初期ロットほぼ完売が見えてきたので、今後も最小ロットで継続生産を予定。
(今後の方向性)
まずは立ち上がったビジネスを軌道に乗せることに注力する。2019年についてはwetube、黒船食品ともにセグメントレベルでの黒地着地が目標。来年以降で利益貢献できる土台を作る。
並行して新規案件発掘のためのネットワーク作りにも力を入れたい。
・・・・・・・・・・
細矢「wetubeについては担当の佐藤くんがちゃんとやってますので、とりあえず任せようと思います。それとジムについてはーーー」
矢原「wetubeとジムはいいよ。問題は黒船食品だろ。…お前できんのか?」
細矢「あれ、矢原さん賛成してくれてると思ったのに」
矢原「西野農園は良い会社だと思うよ、俺も。でもな、加工食品の販売なんて、完全に新規ビジネスじゃねーか。リスク取りすぎたんじゃないかって言ってんだよ」
細矢「西野農園への貸付なんてやっても儲からないでしょ。1,000万円貸し付けて、上限金利15%取ったって年間150万円ですよ? そんなちょっとの利息もらってなんの意味があるんですか。200億円銀行から借りれる会社にしないと、Jリーグに上がれないことは分かってるでしょ」
矢原「分かってるが、この案件は選手の働き口を確保する意味で十分取り組む価値はあったから、それに加えて儲けに走らなくてもよかったんじゃないかって言ってんだよ」
糸瀬「ストップ。双方の言い分は分かるから、ほっしー。結果で示すしかないな?」
細矢「…まぁ、そうなりますよね。矢原さんのご指摘はその通りだと思います。とりあえず来期1年間で貸し付けた場合の150万円以上の利益は出せるようにやります」
糸瀬「よし、矢原もそれでいいな?」
矢原「いいですよ。ただ勘違いしないで欲しいのは応援はしてるからな。愛の鞭だよ細矢」
細矢「へーへー」
・・・・・・・・・・
グループ事業計画
(連結業績報告(2018/11-2019/03))
売上 38,380,000円
利益 17,910,000円
収支 ▲3,222,090,000円
(来期事業計画)
売上 300,000,000円
利益 100,000,000円
・・・・・・・・・・
まず業績報告における売上の内訳として、スポンサー収入が3,100万円と大半を占めている。その他、トロングジムからの家賃収入やユニフォーム等グッズの販売売上などである。
次に費用については、メインスタジアムの芝メンテナンス費用が全体の70%を占めており、その他人件費やグッズのデザイン代、製作代など。利益としては黒字で着地できた。
資金繰り、収支ベースでは、最初の土地取得資金30億円を抜きにしても約2億円の赤字となっており、一部銀行からの資金調達で補填しているとはいえ、サッカーパーク関連施設への開発や地域企業への出資などの先行投資が嵩んだ結果となった。なお、グループの赤字については、黒船の親会社である三矢ホールディングスから追加の資金調達にて手当済みである。
来期事業計画は売上3億円、利益1億円を見込む。スポンサー収入とジムの家賃から一定の売上を確保しつつ、その他新規事業の収益にて目標達成を目指すものとする。
以上。




