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【SF 空想科学】

あなたの人生を生きて

作者: 小雨川蛙

 

 買われた日。

 あるいは。

 設定をされた日。

 ロボットは主に写真を見せられてこう言われた。


「この子を真似て。この子になって」


 ロボットは直ちに命令に従い、主の言う通りの姿形に加え声まで真似た。

 その姿を見て主は大変に満足した。

 死んだ息子が帰ってきたとしか思えなかったからだ。


 ロボットは主が喜んだことに気づかなかったし、仮に気づいたとしてもその理由は分からない。

 何故なら、ロボットに心はないからだ。


 それから数十年。

 適宜メンテナンスを行い身体付きをアップデートをしながらもロボットは主の子供を真似続けた。

 誰もがロボットであることを忘れてしまうほど正確に。

 しかし、死の間際に主は言った。


「ありがとう。我が儘に付き合ってくれて」


 主の言葉をロボットは理解出来なかった。


「だからもう大丈夫。あなたはあなたの人生を生きて」


 涙を流す主の心をロボットは理解出来なかった。

 ロボットはロボットだから。


 だからこそ答えた。


「私は命ではありません。あなたが死ねば処分されて終わりです。だから安心してください」


 その言葉に主の顔は歪み、涙を流した。

 人間であったならその顔から後悔を読み取っただろう。

 人間であったならその後悔を癒す言葉を話しただろう。


 しかし、ロボットはロボットだ。


「ご安心ください。あなたが死んだ後、私は誰の迷惑になることもなく処分されます」


 息子の姿形で。

 息子ではなくとも愛情を注いだ存在に。

 突きつけられる、冷たい事実。


 それが滑稽な老婦人に対する罰として機能しているなどロボットは気づくはずもなかった。

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