53 魔石 【side アルタイル】
包装が終わった家具を受け取ると魔女Kはある話を始める。
「実はですね、かなり昔の話ですが私の所有物である大きな紫色の魔石が家から盗まれたのです。それには大きな魔力が込められていて、ペガサスやドラゴン、火の鳥などの卵を作り出すのに使っていました。あなたが購入した卵は、盗まれた後にまた新たな魔石を入手して、その力を利用して作っているのですよ」
オレは、自分が六歳の時に「魔女Kのたまご屋さん」で購入したたまごが、魔女Kの手と魔石の力で生み出されていたという真実を初めて聞かされる。
クレアは、魔石が盗まれた後に、再び魔女Kが新たな魔石を手に入れて、作り出したということがわかる。魔女Kがクレアという愛しい精霊を生み出した、生みの親ということだ。
「でも、残念ながら盗んだ人はその魔石からある物ばかりを作り出して、しかも悪用しているのです。まぁ、盗んだ人たちがドラゴンなどを作る技術がなかったことは幸いだったのですが。それで、その悪事に使われている魔石を処分したいと考えているのですよ」
魔女Kは不思議な話をする。その魔石を取り戻したいのではなく、処分したいらしい。
「その盗まれた魔石を処分してしまって大丈夫なのですか?」
オレは、取り返す事を考えていないのか確認する。
「えぇ、処分して構いません。魔石はもともと魔物を退治したら出てきますよね? レクナ王国に魔物はおりませんが他国にはたくさん生息しているのです。退治した後に我が家に住んでいる精霊の職人たちが魔石を浄化して、その後、私が魔法をかけているのです。それが盗まれたのです。ですので同じような工程を踏めば、何度でも作ることが私には出来ます」
こんなに簡単にその大事な魔石の作り方を口外しても良いのかと、僅かに疑問が浮かぶが、恐らく魔女Kにしか作り出せないのだろう。
「ちなみにその魔石が今どこにあるのかご存じなのですか?」
「えぇ、ウィンザルト国の王城です」
オレは魔石の在りかを聞いて、息を飲む。ちょうどオレ自身も情報を集めていた場所だったからだ。
「なぜ、あなたの魔石が悪用されているとわかったのですか?」
「それはですね……その魔石の力を使って、ある卵をいくつも生産しているのをこれで視たからです」
魔女Kの手には手鏡があり、彼女が手を振りかざすとどこかの場所が映し出される。
大きな筒状のノズルからポンッポンッと一定の間隔ごとに卵が排出されている。その卵は、トレーに入れられて、別の機械の中に入れられていく。その横では孵化した卵から精霊が生まれている姿まで映っていた。
「こ、これは……ウィンザルト国の王城にあるという卵工場と呼ばれている場所でしょうか? 精霊が無尽蔵に生み出され作り出されるという……」
「えぇ、そうです」
オレがまさに知りたいと思っていたウィンザルト国の卵工場の状況がわかり、食い入るように鏡を見る。
「その盗まれた魔石は一体どこにあるのでしょうか?」
「大きな八角形の魔石は、ウィンザルト国の玄関ホールの絵画が掛けられている絵の後ろにございます」
予想以上の情報をもらい、オレはいくつかのことを追加で確認していく。
「その玄関ホールの絵の後ろに隠されている魔石を壊せば……卵工場も動かなくということですか?」
「えぇ、そうです。何も生み出せなくなります」
魔石の場所も、どんな悪事に使われているのかもわかっているのになぜ自分自身で壊しに行かないのだろうとふと疑問に感じる。魔女Kと言うくらいなのだから、簡単に壊すことができそうにも思える。
オレの思考を読み取ったかのように、魔女Kはオレへの説明を続ける。
「あの魔石は、魔女の私には破壊できません。正確に申し上げますとアルタイル様にしか破壊できません」
オレは意味がわからなくて少し考える。オレよりも強い騎士団長とかでも壊せると思うのに、なぜオレだけだと言い切るのだろうか。
「あの魔石は剣で中心を貫けば壊すことができます。あの魔石は精霊の力に反応するため、精霊力の力がないと壊すこともできません」
「精霊力?」
初めて耳にする単語を、聞き返す。オレは人間だから精霊力なんてものは持ち合わせていない。
「アルタイル様は、ご自身でお気づきになられていないと思いますが、あなたの精霊力はずばぬけて多いのです。きっとお母様であるローラ様がたくさん注ぎこんでくれたのでしょうね」
「? 言っている意味がわからないのですが……」
魔女Kの話が難解すぎて理解が追い付いていない。
「簡単に言うと、あなたの精霊力がとても高いので、あなたにしかあの魔石が壊せないという話です」
魔女Kはそこまで言うと、トランクケースに荷物をしまい出す。
「話を聞いて下さりありがとうございます。私、そろそろ失礼いたしますね」
「あ、あぁ」
魔女Kが予想しない行動をとるので、それをただ見守っていた。
「では、またのご利用をお待ちしております」
そう言って、ペコリとお辞儀をすると魔女Kは軽快な足取りでベルガモット公爵家を立ち去った。
「……一体なんだったんだ? いろいろ情報が多すぎて頭が追いつかないのだが……ひとまず、オレがウィンザルト国の王城に行き、絵画の後ろの大きい魔石を剣で突き刺せば破壊できる……そういうことだよな?」
オレは、魔女Kから受け取った家具を握り締めたまま、しばし呆然とし頭の中の情報を整理することに注力する。
予期せず知り得た情報で、卵工場の生産を止められる可能性が出てきたことで、クレア奪還に少し前進することができた。
お読みいただきありがとうございます!
第五章はここまでです。次回からついに最終章に突入致します。
クレア視点から始まります。
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