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51 サーマン公爵夫人 【side アルタイル】

「私も、卵工場と呼ばれる場所に壊滅的な打撃を与えないといけないと考えている。いつまでも精霊が大切にされることなく、むやみやたらに生み出されている状態は良くない。だから、今回、サーマン公爵夫人と協力関係を結ぶ事に成功した」


 ヴィクトル王太子殿下は、きちんと成果を出してきたのだとニンマリと笑う。


「私の護衛騎士を何名か、サーマン公爵夫人の邸宅に置いて参りましたの。彼らはクレア様をウィンザルト国に送り届けた者たちで、クレア様を取り返すためならウィンザルト国に留まることを了承してくれたのよ」


 キアナ王女殿下もご自分の護衛騎士を動かしてくれ、カール第一王子殿下の披露宴を終えた後にウィンザルト国にそのまま残ってもらい、情報を集めてくれることになっているらしい。


「ヴィクトル王太子殿下、キアナ王女殿下、ご協力ありがとうございます。しかしながら、レクナ王国の協力をしてサーマン公爵ご夫妻はお立場を悪くされることはないのでしょうか?」


 オレはサーマン公爵家に迷惑をかけることを懸念する。謀反だと捕らわれてしまう可能性もある。かなり危険な行動なのではないだろうか。

 すると、ヴィクトル王太子殿下は首を横に振る。


「それについてもサーマン公爵夫人とよく話し合ったんだ。まず、サーマン公爵夫人の夫はすでに病気で早く亡くなっている。前当主は病気を患っていたんだが、その時に子供のいなかったご夫妻はウィンザルト国の国王陛下に相談したそうだ。跡継ぎが必要だから、少しでも公爵家当主の仕事を引き継げる若者を養子に考えていると話をしたらしい。……その結果、養子に迎えいれたのが、人間化された元精霊様だったんだ」


 オレはサーマン公爵ご夫妻の養子に元精霊だった人物が選ばれていたことに驚きを隠せない。でも、養子となった精霊は他の精霊のように乱暴に扱われることなく大事にしてもらっていたのだろう。


「公爵夫人は夫亡き後も息子同然にその養子を育てたのだが、その過程で卵工場で生まれたことや、精霊を薬で人間化させて危険な仕事を任せたり、大変な仕事、それこそ奴隷のように扱われていることを聞いたらしい。サーマン公爵夫人は心を痛めて、神聖な精霊様を道具のように使う王家のやり方に疑問を感じていたようだ。このままでは、ウィンザルト国の国力は落ちていくだけで、もっと根本的な部分から改善しないと腐敗していくとおっしゃっていた」


「だからサーマン公爵夫人は我々の考えに賛同してくれているのですね?」


 オレは納得することができた。ウィンザルト国の全ての貴族が王族のやり方に従っているわけではない。一枚岩ではないとわかっただけでも収穫だ。


「では、今後の方針としては、まず王城の敷地内にあると言われている卵工場の位置を確認することと、どうやって卵工場を壊滅させるか……ということですね」


「あぁ、いつになるかはわからないが、アルタイルには壊滅させる機会が来たら、最前線に立って指揮を執ってもらいたいとは思っている。それまでにもっと強くなっておけよ」


 ヴィクトル王太子殿下は笑いながらも、もっと励めと伝えてくる。


「えぇ、わかっております。オレを副団長に推してくださったのは、地方を管轄する隊長だと一部の地域の騎士しか動かす権限がないからですよね? 統率してウィンザルト国に攻撃を仕掛けるためには副団長以上の役職がいるから、こんなにも異例の昇進だったのですよね?」


「いや、まぁ確かに隊長だと一部の部隊しか動かす権限がないからというのは合っているが、国王陛下も私たちも、もちろん騎士団長もアルタイルの優秀さと強さを認めたからであって、評価に手心を加えたりは一切していない。全てお前自身の力が認められて、今の役職を与えられている、そこは勘違いするなよ」


 オレはてっきり手心が加えられたから、早く副団長に昇進したのだと思っていたがどうやらそうではなかったらしいとわかり、純粋に実力を認めてもらえていたことが嬉しかった。


 剣術はもちろん、一番得意な土魔法での攻防戦や、風魔法も扱えるようになった。でも、まだクレアを取り戻すためにはもっと強くなりたい。鍛錬を積まなければならない。


「あぁ、そう言えばクレアはあなたの姿絵を見て、カッコいいって言っていたわよ。もっと強くなったらクレアも嬉しいかもしれないわね」


「ははは。精進します」


 オレはそう返事をすると、卵工場の壊滅方法について調べることにしたのだが、思わぬ人物から重要な情報を手に入れることができるとは、この時、考えてもいなかった。

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