45 控えの間
城で働いている、慌ただしく行き交う人をガラス瓶の中からこの一週間観察して過ごした。
ついにカール第一王子殿下の婚姻が結ばれる日を迎える。
玄関ホールの絵画として壁の絵に入り込んでいた時に、他の精霊や玄関ホールの騎士、侍女の話を聞いていた。どうやら、お相手はこの国の公爵令嬢とのことだ。子供のころから婚約者として育ち、すでに妃教育も終えている優秀な人物らしい。ひょっとしたらこのお城の玄関ホールの前を通ったことのあるご令嬢かもしれないけれど、どの女性なのか興味もなかったし、顔は思い浮かばない。
今日は、朝から王城内の神聖な聖堂で婚姻の儀式を執り行い、その後、王都の中を馬車で移動してお披露目パレードを行うらしい。そして昼過ぎに各国の王族を招いた大規模な披露宴、そのまま夜にも夜会が行われるらしい。
(王族って大変なのね。今日一日に組まれているスケジュールが盛りだくさんだわ)
私にとって、カール第一王子殿下にも良い印象はない。
レクナ王国のベルガモット公爵家で会食を行い、初めて会った時には気が付かなったけれど、ウィンザルト国にやって来た日の態度を見れば、裏表のある人間だし傲慢な人間だということに認識を改めざるをえなかった。
『精霊コレクター』として名高いザイン第二王子殿下ばかりに気を取られていたけれど、カール王子殿下も人を見下す部分があり、不遜な態度の王子であることはこの王城に来るまでわからなかった。
表向きの顔と使い分けることのできるカール王子殿下の方が、実は油断できない人物だったのかもしれない。
(……ウィンザルト国の華やかな王族の結婚に私は、全く興味がないわ……それよりも、レクナ王国から誰が来るのかしら? 遠目にでも見つけることができたらいいのだけれど……)
私は、レクナ王国からの参列者ばかり気になり、この精霊コレクションが展示されている部屋に入ってきてくれるのかワクワクしながら待つことにした。
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午前中の王都内のパレードが行われているのは、国民にお披露目するためであり、ウィンザルト国の王族、貴族、近隣諸国の招かれた招待客は王城にある披露宴が執り行われる会場に隣接している控えの間に、一足先に集まり始めた。
私がいる控えの間には、飲み物や食べ物はなく、椅子に座ってくつろいで待機する場になっている。
扉一枚奥の部屋に行くと飲み物や軽食が置いてあるので、ガラス瓶に入れられた精霊を一つ一つ足を止めて見る人はあまりおらず、さっと目で精霊を眺めたら奥の部屋に移動していく。
(思っていたよりも、精霊に興味を持っている人は少ないのね……彼らは胸にウィンザルト国の国章のピンをつけているから、この国の貴族ということね。彼らは精霊を目にする機会が多いから、精霊に物珍しさは感じていないようね)
私は右の入り口からこの控えの間を横切り、左側の軽食のおいてある控室に向かう人たちを一人ずつ観察をする。まだレクナ王国から来た人は通っていないようだ。
ずっと入り口の方に目が釘付けになり、見知った懐かしい人物が来るのを今か今かと待ち続けた。




