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44 カール第一王子の結婚

 私は絵画の中で季節ごとに掛け変えられる絵に、引き剥がされては再び貼り付く、という生活を四年ほど送る。


 変化のない日でも平和が続いていた。

 そんなある日のこと。

 玄関ホールで話し込む侍女や騎士たちの声が耳に届く。


「カール第一王子殿下の結婚式が行われるまであと一か月しかないのよ! 隣国の王族の方もお招きしているのだから、もっと華やかに飾らないといけないわ!!」


 階段の手すりや床もピカピカに磨きあげられていく。

 その様子を私は絵画の中から見ていた。


 掃除をしている人間の中には、私と同じ時期にガラス瓶から人間化した元精霊の顔ぶれがある。

 人手が足りないのか『卵工場』と呼ばれている場所から配属先が変わったのか、今は掃除をする仕事を就いているようだ。


(隣国の王族っておっしゃっていたわよね……レクナ王国からもヴィクトル王太子殿下やキアナ王女殿下がお祝いを述べにやってくるのかしら)


 きっと絵画に入りこんだ私は絵の一部となってしまっているから、気が付かないかもしれない。それでも、一目彼らの姿を見ることができたら、勝手に再会した気持ちになれるだろうなと少し楽しみにしていた。


 結婚式の一週間前。


 ザイン王子殿下が招待客に『精霊コレクション』をお披露目するのだと、玄関ホールに飾られていた絵画を取り外し、養生してある絨毯の上に置くように指示を出す。その後、絵画の中にいた私を含めたくさんの精霊たちは絵の中からひっぺ剥がされていく。


(いたたたた……強く摘まみあげないで欲しいわ……)

 私は一瞬、顔を歪めたけれど、次の瞬間には再び見た事のあるガラス瓶に放り込まれ、蓋をされてしまう。


 その時、絵画が掛けられていた壁に人間の頭と同じくらいの大きさで濃い紫色をした八角形の魔石が埋め込まれているのが初めて目に留まった。


(いつもは、私自身が絵の中にいたから絵画の裏に、こんな魔石がはめこまれた壁があるなんて気が付かなかったわ。……まるで目立たないように隠しているみたいね……)


 そんなことを考えている内に、ガラス瓶に入れられた私たち精霊は、多くの侍女たちに運びだされて、別の部屋に移動させられていく。侍女たちが「貴賓室の控えの間」だと言っているので、その場所に向かっているのだろう。移動した部屋にはおびただしい数のガラス瓶がところ狭しと並べられ、貴賓室の控えの間の壁沿いにズラリと並べなれて飾られ、展示されていく。


「おい。他の国のやつらに盗まれないようにしっかり警護しろよ。万が一、一つでも数が減っていたら、命は無いと思え」


 ザイン王子殿下は、傍にいる警護をしている騎士たちに釘を刺す。


(ガラス瓶の中にいる私を見たら……レクナ王国の人はどう思うのかしら……お願いだから悲しまないでほしいわ)


 見世物になるのにはもう慣れてしまった。

 でも、丁重に扱ってもらえると思っていた私が粗雑な扱いを受けていると知ったら、きっとショックを受けるだろう。ヴィクトル王太子殿下やキアナ王女殿下と再会したら、彼らは自分の解毒薬と交換に私の身を差し出してしまったのだと、嘆いてしまうかもしれない。


 だから、もし彼らと再会することができたとしても私ができることは最高の笑顔を見せて、元気にやっているのだと思ってもらえるように演じようと思う。


 アルタイルがこの衣装を着てくれる日があるのか、本当は教えてもらいたいけれど声を出すのは難しいだろう。


 キアナ王女殿下と一緒に私もレクナ王国にて読唇術を学ばせてもらった。

 小さくて見えないかもしれないけれど、口をパクパクしたらひょっとしたら私と会話が成り立つかもしれないと少しだけ淡い期待を持って、その日を待ちわびた。

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