39 精霊王とのやり取り
私がガラス瓶に閉じ込められて、もうすぐ二年が経とうとしている。
ついにその日がやってきたようだ。
ザイン王子殿下が私を含めて、十個ほどのガラス瓶を侍女に運び出すように指示を出す。
(ついに、この日がやってきたのね……何が起こるのかしら……)
私は、不安を感じているけれど、これから行われることを受け入れようと覚悟を決める。
移動して連れてこられたのは、研究室からほど近い薬品が置かれている部屋だった。
「さぁ、始めるかな」
ザイン王子殿下は、ガラス瓶を手にとり一体ずつ精霊を取り出して、そこに並ばせる。ザイン王子殿下の手には虫眼鏡のような機械がある。
「う~ん。お前は魔力多いし精霊王に渡そうかな。お前は……人間行き。お前は……もうダメか、処分。そしてお前は……しばらく絵画の中かな」
顔の表情や、髪の色、羽の状態を確認して行き先を振り分けていく。虫眼鏡のような機械を通して精霊を見ると魔力も測定できているようだ。
私は絵画行きになったらしい。
(絵画行きってどういうこと? それに、精霊王行きというのは、きっとこの国の精霊としての自然を豊かにする役目を担うってことよね?)
何となく、この中の選択肢を聞くと精霊王行きが一番幸運のような気もする。
(それに……人間行きってどういう意味かしら? 人間に手渡すってこと? 処分というのは、あの精霊はもう生きていなかったのだわ……可哀そうに)
私は、どうやって分類されたのかよくわからないまま、成り行きを見守る。
まず、処分とされた精霊を鷲掴みにしたザイン王子殿下は、窓を開けて、ゴミを捨てるかのようにポイッと外に投げてしまう。
(なんてこと!! 自分でガラス瓶に閉じ込めておいて、世話もしない上に息を引き取った精霊をあっさり捨てるなんて!!)
私は、さきほどの精霊の魂が安らかに眠って欲しいと願い、両手を組んで弔いの言葉を心の中でつぶやいた。
「さてと、次は精霊王行きかな」
そうつぶやいたザイン王子殿下は壁にかかっていた姿見の鏡に向かって、声をかける。
「精霊王! 一人そちらに送りたいのだが」
そう声をかけた次の瞬間。
鏡がピカッと一瞬光ったかと思うと、精霊王と思われる緑色の長い髪を後ろで束ねた、長身の男性が姿を顕現させた。
美丈夫とは彼のような顔に使う言葉なのだろう。
整い過ぎている顔を持っているけれど、あまり威圧感は無さそうだ。
「あぁ、ザイン。いつもありがとう。卵の生産は順調かい?」
「もちろん。それで、この精霊は魔力強いみたいなんで、そちらで役に立てるかなと思ってね」
「ふ~む。確かに、少しは役に立ちそうだな。でも、まだ緑豊かにするには精霊の力が足りないな。もっと精霊の卵をたくさん作ってくれると助かるんだが、増産はできそうか?」
「じゃあ、もう少し増やそうかな。さっき、一体処分したけど、うまく育たなくて使えない精霊も含まれているからね」
私は、精霊王とザイン王子殿下のやり取りを静かに聞いて、内容について考える。
(やはり、ウィンザルト国は精霊の力を落ちてきているから、精霊王が人間と手を組んで人工的に卵を生み出しているのは間違いないようね。……私の卵は……なぜ魔女Kが持っていたのかしら?)
新たな疑問が浮かぶが、今は精霊王との会話に集中しなくてはいけない。
ザイン王子殿下が作り出した精霊の中で魔力が多い精霊は精霊王の元で仕事に就くということかしら?
見た目は弱っているように見えるけれど、問題ないのだろうか。
「精霊もね、力を使い切ると消滅していくから、数が多い分には助かるんだが」
「じゃあ、消滅していく数だけ、精霊を渡せるようにこれからはしていこうかな」
「そうしてもらえると、助かる」
私は精霊王の言葉に耳を疑う。森や林、草花を生き生きとさせて豊かにするために力を注いだ精霊は消滅してしまうらしい。
(……そんなの酷使させて死んでしまうということじゃないの!!)
精霊王行きになった精霊に向けて、無事を祈るしかなかった。
その後、精霊王は手の上にザイン王子殿下から受け取った精霊を乗せて、鏡の中に消えて行ってしまった。




