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17 ランバートとのティータイム

「はぁ~、あと二日かぁ」


 私は、雨がしとしとと降って木々を濡らしていく様を室内から見て溜息をつく。

 マホガニーの窓枠の上に寝転がりながら、頬杖をついている。


 アルタイルが貴族学院に通い出しても、寮の部屋に戻ってくれば毎日会えていたから寂しくはなかった。でも、今は北のウィンザルト国から留学生が来ているから、私は目を付けられないようにベルガモット公爵家に戻ってきている。


 学院の授業がある日はアルタイルと会えない。だから、週末に外泊届けを出して、彼がベルガモット公爵家に帰ってくるまでの会える日にちを指折り数えてしまう。


 することも無くぼんやりと窓の外を眺めていた時のこと。


 コンコン


 主不在のアルタイルの部屋の扉をノックする音が聞こえる。


「クレア~、一緒にお茶でもどうだろう?」


 自らティーワゴンを押して、入室してきたのはベルガモット公爵家の当主であるランバートだった。

(私が退屈をしていると思って、話し相手になるために来てくれたのね!)


「は~い! 喜んで!!」


 ランバートは、私が窓枠から下りるのを手伝うためにティーワゴンを窓枠の近くまで押して持ってきてくれる。

(こういう優しい気遣いができるのは、さすが親子ね!)


 私はランバートと向かい合えるように、テーブルの上に置いてある私専用の椅子の向きを変える。


「さぁ、お茶会の始まりだ」


 ランバートは私にウィンクして、アルタイルがいなくて寂しくないように気持ちを高めてくれる。


「うふふふ。私ね、一度、奥様について聞いてみたかったの。どんな出会いだったか聞いてもいいかしら?」

「あぁ、もちろんだよ」


 アルタイルの語ってくれる母親としての想い出と、ランバートから見る愛する女性として見る感覚は異なるはずだ。だから、機会があればランバートから見たローラの話を聞いてみたいと思っていたのだ。


「じゃあ、彼女との出会いはね。王家主催の夜会パーティーで、体調を崩してしゃがみ込んでいた彼女をたまたま私が通りがかって見つけたんだ。彼女を休憩室まで運んだ時にね、一目惚れをしてしまったんだよ」

「きゃ~、まるでロマンス小説みたいな出会いだったんですね。王家主催のパーティーということは、彼女もどこかのご令嬢だったのですね?」


 私は以前、ランバートの執務室で見た絵姿の女性を思い浮かべる。サファイアブルーの瞳が印象的だった。


「あぁ、彼女は侯爵家の令嬢だったんだ。……でも、彼女は養女だったから、侯爵ご夫妻と血のつながりはなかったんだけどね」

「養女ですか……では、侯爵ご夫妻のご家庭に入る前は別のところにいたということですね」


 どこまで深く聞いていいのかはわからないけれど、ランバートも愛する女性との思い出話をするのは楽しいようで、記憶を辿りながら教えてくれる。


「もともと侯爵ご夫妻は子供に恵まれていなくてね、養子縁組を検討していたようだ。そんな時に、ローラに助けられて……彼女を引き取ることにしたって、言っていたかな」


「奥様は侯爵ご夫妻の何を助けたのでしょうか?」

「ん~、何だったかなぁ」


 ランバートも話を聞いたことはあるようだが、すぐには思い出せないようだ。

 紅茶を手に取り、少し目線を天井に向けて記憶を呼び起こしているように見える。


「あぁ、思い出したよ! 馬車で峠を越えようと街道で休憩していたらしいんだが、ボロボロの服を着たローラが突然話かけてきて、『峠道が崩落するから、遠回りになるけど別の道を通った方がいい』って教えてくれたらしいよ。それでローラもたまたま行き先が同じ方向だったから、侯爵ご夫妻は馬車に乗せてあげたらしい。後でわかったことだが、本当に峠道が崩落したらしくてね。もし、ローラの助言が無かったら命は無かったよって言っていたよ」


 ランバートの話が、奇怪すぎてにわかには信じられないけれど、実際に侯爵ご夫妻が恩を感じて、養女に迎え入れたのなら真実なのかもしれない。


「不思議な話ですね……奥様は、身体が弱かったのに一人で歩いていらっしゃったんですね」

「あぁ、確かに。北のウィンザルト国からレクナ王国に向かって歩いていたらしい。でも何で隣国からこちらに入国しようとしていたんだろうね。ローラからは話を聞いていなかったなぁ。当時、ボロボロの服を着ていたから、孤児みたいだったと侯爵夫妻から聞いていたんだ。だから、辛いことを思い出させないように私からも詳細は尋ねたことがないんだよ」


「……そうですねよ……」


 アルタイルのお母様はウィンザルト国内で捨てられたのか、両親が亡くなったのかわからないけれど一人で安寧を求めてレクナ王国に来ようとしていたようだ。

(……でも、何かしら。北のウィンザルト国からっていうのが何か引っかかるわね……)


 彼女は、誰もが精霊の姿を見ることができるという国からやってきている。彼女も精霊に会ったことがあったのだろうか。

 そんなことを考えながら、ランバートとのお茶会はお開きとなった。

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