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16 ウィンザルト国から

 アルタイルとともに貴族学院の寮に入寮した私は、アルタイルが授業を受けている間は王城に行って、キアナ王女殿下とお喋りしたり、彼女の淑女教育を隣で見学させてもらうという生活を始めた。


 貴族学院は、王城と隣接しているので低空飛行で行ってもそんなに時間を要することは無かったし、キアナ王女殿下の護衛の人たちともすでに仲良くなっていたので、王城まで辿りつくと彼らは手のひらに乗せてキアナ王女殿下がいるお部屋まで連れて行ってくれるようになっていた。


 今日もいつものようにキアナ王女殿下の淑女教育を見学させてもらってから、その後は一緒に温室でお茶をすることになっている。


「はぁ~、今日も私頑張ったわよね?」

「えぇ、お疲れ様でした」


 テーブルの上には、三段重ねのティースタンドにマカロンや、スコーンなどのお菓子が並んでいる。そのティースタンドの横に小さな私専用の椅子を置いてもらい、そこに腰を掛けて話を聞いていた。


「そういえば、アルタイル様は婚約者がいらっしゃらないけれど、貴族学院でもご令嬢の方に言い寄られたりしていないのかしら?」


私は急にアルタイルの婚約者についての話題になり、ドギマギしてしまう。

(私、挙動不審になっていないかしら……)


「貴族学院でどのようなご令嬢とお話しているかは……私にはわかりかねます。私は貴族学院の中にまでは入っておりませんので……」


「私ね、チラッと耳にしたのよ。アルタイル様には心に決めた女性がいるからっていろんなご令嬢との会話も積極的にはされていないようよ」

「……心に決めた女性ですか……」


(私の気が付かないうちに、アルタイルには心を寄せる女性がいたのね……それにも気が付かないで、私ったら寮までついて来てしまうなんて……)


私のひどくガッカリした表情を見て、キアナ王女殿下は何か感づいたようだ。


「でもね、どうやらその心に決めた女性っていうのがね……彼が六歳のころからずっと大好きな女性なんですって。……それって、クレア様のことではありませんか?」


キアナ王女殿下の話を聞いて、その話が真実ならどれだけ私は幸せ者なのだろうと思ってしまう。


「……ちなみに、クレア様はアルタイル様のことをどう思っていらっしゃるのですか?」

「……私は……、もうっキアナ王女殿下!! 精霊をからかうのは止めていただけませんか!」


私は顔を真っ赤にしながら、話題を逸らそうと必死になる。


「うふふふ。わかりました。私はアルタイル様もクレア様もお二人が幸せになってくれれば、それだけでいいのですよ」


目の前にいるキアナ王女殿下は含み笑いをしながら、恋愛に関する会話を終わりにしてくれた。

でも、その後にキアナ王女殿下は急に思い出したかのように別の話を始める。


「ねぇ、そういえば北のウィンザルト国から第一王子と第二王子がレクナ王国の貴族学院に留学に来られるそうよ」

「え? 本当ですか? アルタイルは何も言っていませんでしたが」


「えぇ、先ほど宰相が父に話していたばかりだから、まだヴィクトルお兄様もご存じないはずよ」


 北のウィンザルト国といえば、以前調べたことのある国だ。たしか、老若男女問わず人間に精霊の姿が見えると言われている。


「クレア様。以前、ここでウィンザルト国についてお話したことを覚えていらっしゃいますか?」


 もちろん、忘れるはずがない。私は静かに頷く。


「あの後、調べてみたのですがどうやら『精霊コレクター』と呼ばれているのは、第二王子の方でしたわ。……その方の年齢は十三歳ですので、アルタイル様よりも一つ上の学年に通われるとは思いますが……くれぐれもお気をつけ下さいませ」


 私もキアナ王女殿下が言いたいことを察する。


「私が目をつけられると厄介ということですよね?」

「えぇ、第二王子が精霊の何に関心をお持ちになって集めていらっしゃるのかは、情報が掴めておりません。クレア様のお姿は見られないようにされた方が宜しいと思います」

「……そうですね。留学に来られている間は、貴族学院の寮ではなくてベルガモット公爵家に戻っておいた方が良さそうですね」


 私は、早速アルタイルに相談してウィンザルト国の王子二人が貴族学院にやってくる前にベルガモット公爵家にしばらく戻って生活をして、彼らの目に留まることがないように細心の注意を払って過ごすことにした。

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