13 王宮の書庫にて
私が王族の方にお会いしてから、時々アルタイルに同行して、彼がヴィクトル王太子殿下と訓練をしている間に王宮の書庫にある書物を読ませていただくことになった。
もちろん私に分厚い本は持てないので、先にランバートに目を通してもらい、選んでおいてもらった本を書見台に立てかけてもらい、ページをめくるだけにしてもらっている。
幸い、この国の言葉も近隣諸国の言葉や文字も勉強していないけれど、勝手に脳内で翻訳することができている。精霊が持つ特殊能力なのだろうか。通訳なしで他の国の人と話せるなんて、とても素晴らしい能力だ。
私は精霊として、役に立つ能力が一つでもあって本当に良かったと少し安堵した。
「さて、今日はこないだの続きから読みましょう」
私は、本の前に置いてもらった小さな椅子に座って、大きな本の文字を目で追っていく。
やっぱり羽があるのだから、当たり前のように精霊様は飛ぶことができるとしか書かれていない。飛ぶことを前提に記載されている。
ただ、気になる文章も見つけた。
卵から生まれてくる精霊というのは研究対象として品種改良をして作り出しされた精霊だという記載を見て、息を飲む。
「品種改良をして作られた精霊……」
私の卵も研究施設で作られたのだろうか。
そんな想像をしてちょっと怖くなる。
(研究して生み出されたのなら……私と姿形が全く同じ精霊もいるかもしれないのよね……)
私は前世のクローンのような存在で、同じ顔をした自分がたくさんいる可能性もあることに思い至る。
(私とそっくりの精霊がいたとしたら……アルタイルは私を見つけることは……できなくなるわよね)
そんな想像をして、ブルブルッと身震いをする。
傍で見守っていた王宮の宮女が、心配そうに声をかけてくれる。
「精霊様。室内の温度が寒いようでしたら、温かくなるお飲み物でもご用意致しましょうか?」
「えっ、はい。宜しくお願い致します」
私は、自分の考えたことが現実にならないといいなと思い、休憩することにした。
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別室で温かいミルクティーを飲み終えた私は、宮女にお礼を述べて再び文献の続きを読む事にする。
「えっと、研究を始めた目的は精霊様の信仰が厚い国が精霊様と話し合いをして、お互い恩恵を受けられるようにするために研究されたと考えられている。また精霊の減少や弱体化に伴い、それを補う為に卵を生み出したという説もある。……結局は、なぜ卵を生み出すようになったのかというきっかけは明確にはわからないってことね……」
(でも、精霊様と人間が相談してお互いにメリットがあったから、研究を始めたということかしら?)
「力の弱まった精霊たちは、力の回復を強く望み、人間の前に姿を現して強くなるために自身の身体を使って研究しても良いと差し出した。その代わり、強さを取り戻した時には、国に安寧を取り戻すよう努めると約束をしたとも言われている……」
文献だけをみると、このレクナ王国では問題になっていないけれど他国では、精霊の強さが急激に弱まっていたようだ。それを危惧した精霊たちが人間たちに相談を持ちかけて、研究して強さを取り戻すようにお願いしたという解釈になる。
確かに前世でも、山や緑など自然を破壊してしまうとそこに住まう精霊の数が減り、力が弱まるという考えがあったわよね。……それと同じことが起こっているということかしら。
だとしたら、本来ならば自然を愛し、豊かな大地と緑を大切にしてこなかった人間の行動にも少なからず非があるはず。自然を大切にして環境を守ろうと取り組むべきところを省いて、精霊の力を研究して意図的に増幅させようとしてしまっているということだ。
「……私は、そういう場所で作られた卵で、それがどういうわけか、自称魔女だと名乗る人物の屋台で売られていた……?」
私は自分の生まれてきた仮説を立てて、確証はないけれどそうなのではないかと思い始めていた。
「まぁ、研究施設で生み出された卵だったにせよ、やっぱり本来は飛べるってことなのよね。羽の生成に失敗した欠陥品という可能性もあるのかしら。でも、羽自体はついているのだから、付け根の筋肉をつけて動かす練習あるのみということよね!! きっと!!」
私は、前向きに考えてベルガモット公爵家のドールハウスに戻ってから、毎日、羽の付け根のストレッチと羽を動かして筋力をつけてみようと新たな目標を設定し、自主トレーニングに励むようになった。




