表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】精霊なので愛されても困ります  作者: 龍 たまみ
第一章 転生と出会い
1/65

1 不運な出来事

どうぞ宜しくお願い致します。

「あ、危ない!!」


 私は、転がるボールを追いかけて道路に飛び出した子供を思いっきり突き飛ばした。

 右から近づいてくるトラックのライトを見るのと同時に身体に衝撃が走る。


 ドォン!!


 そこで、私は生を終えた。


 ■■■


(ん? ここは、どこかしら?)


 私は意識を取り戻す。

 とても狭い空間にいることはわかる。

 膝を折り曲げた状態で、体育座りのような格好をしている。

 両手を左右に広げてみると堅い壁に、つるつるとした感触。


(あれ? 私……死んだのよね? 確かトラックにはじき飛ばされたはず。ここは死後の世界ってことかしら?)


 私の記憶は失われてはいない。

(……よく小説や物語の世界だと、この後、神様が来て転生させてくれるとかそんな話があるはずなんだけれど……このまま待っていたら、神様が来るのかしら?)


 私は、さすがに神様に会う前に狭いところで待機することになるとは思ってもいなかったので、ひとまずそのまま座った状態で待ってみることにした。


 ■■■


 それから長い間待っていたと思う。

 ウトウトして眠ったり、狭い部屋が更に狭く感じるようになってくる。

 でも、温度はとても快適で気持ちの良い空間だった。

 何日もそこにいるのに、不思議とお腹がすくことはない。


(ここには、昼も夜もないからこの状態で何日過ごしているのか、全くわからないわね。しかも、私の身体……どんどん大きくなっているのかしら? それともこの部屋がだんだん小さくなってきているのかしら? さすがに狭くて居心地が悪くなってきたわ)


 手の平で、つるりとした壁を両手で触って、おでこに当ててみる。


(はぁ~気持ちいいわね。しかも、何だか白くて外が明るく感じるわ)


 そう感じた私は、試しに拳でコンコンと壁をノックしてみる。

 すると、壁の外からくぐもった声が聞こえた。


(あら? この壁の外側に誰かいるみたいだわ!! よし、もっと叩いてみましょう!)


 私は、一人だけの寂しい空間から抜け出したくて、必死に壁をノックしてみる。

 すると、先ほどの同じように誰かの声が聞こえてくるけれど、なんて言っているのかは聞き取れない。


(この壁、グーパンチしたら、外に出られるのかしら? まぁ、一度やってみましょうか)


 私は、窮屈な体育座りの状態で、思いっきり前方にある壁に力いっぱいパンチをお見舞いする。


(はぁーーーーーーーーーーーーーパンチッ!!)



 パリッ パリパリッ


(やったわ! 外に出られそう!!)


 パンチを何度も繰り返すうちに、壁がドンドン取り払われていく。

 自分の身体が通り抜けそうなくらいの穴がポッカリ開いたあたりで、私は久しぶりに立ち上がってから、壁の残骸をまたぎながら壁の外側に出てみる。


「あーーーー! 最高!!」


 私は、のびのびとした解放感を味わうために、両手いっぱい上に突き上げて大きな伸びをする。

 それから、やっと外の景色を確認することに意識がいく。


 私の足元には、巨大な藁のような物が敷き詰められている。

 前方には白い壁。

 そして、後ろを振り返った瞬間、私は悲鳴を上げた。


「きゃーーーーー」


 何と、大きな瞳が四つもこちらを向いて、凝視していたのだ。


(何、ここ?! 外の世界は、危険な場所だったの?!)


 これが、私が初めてレクナ王国に誕生した瞬間だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ