表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この復讐は100%うまくいく  作者: 柿井優嬉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/43

39

 その際に党内から引きとめる声は出たものの、かたちだけであり、例えば理がどう頑張っても覆せる状況ではなかった。

 すると保守党は、そもそも柴崎という男は問題があったのだといった発言をしだした。それはもう本当に選挙までのタイムリミットが迫るなか、もはや利用価値のない共生党ではなく、長年政党を運営してきて安定した支持基盤や票集めのノウハウを持っている調和党との連立を維持し、そのことを内外に明確にするのがベターだろうという判断からであった。消費税アップを公約に入れるかは、そのときになったら考えればよい。最近の揺さぶりが効いて調和党の態度が軟化するかもしれないし、やはり妥協してくれずに盛らざるを得なくなったとしても、守られない公約はいくらでもあるのだし、国民に対してそれらしいことを言ってお茶を濁すなど、いざとなればどうにでもできる。ただ、あまりにも露骨な手のひら返しは批判にさらされるだろうということで、党の幹部ではなく、一貫して隼人や共生党に否定的だった議員たちに語らせたのだった。

 そうして、富沢の最大の頭痛の種と言えた共生党が、気にする必要がないほど落ちていった今こそ絶好のタイミングだろうと考え、ついに彼が解散を口にしようとした間際であった。隼人の辞任は決定していたものの、後任をどうするか宙ぶらりんの状態だった共生党の党首の座に、理が名乗りをあげたのだ。

 その行動は多くの人に驚きを与えたのだった。隼人の「動」のイメージに対して、理は「静」。政治家である以上いずれはということはあっても、隼人のように若くして党の代表に立候補したりするとは思われていなかったのである。

 それに伴い、理は次のように述べた。

「社会ドラフトに関しましては、私も柴崎くんと語り合って一緒にアイデアを膨らませた身でございますので、彼がこれまで示したものと私の考えはほとんど変わらないと申し上げてよく、あれをこのまま構想で終わらせたくなかったので、熟慮のすえ党首を目指す決断をいたしました。一方で、ここのところ見られておりました柴崎くんの扇動者的な言動には賛同しかねます。本来ああいった人ではないのですが、本人が口にしていたように弱い立場の方たちをおもんぱかり、早くなんとかしたいという焦りがそうさせてしまったのだと思います。私も悠長に構えるつもりはございませんし、であるからこそ立候補したわけですけれども、原点に立ち返る気持ちで地道に謙虚に、社会ドラフトをはじめとする政策を実行できますよう、共生党を支持してくださっていた方々の信頼を取り戻せますように、頑張ってまいる所存です」

 理は隼人と小中学校時代の同級生で、その後それぞれ不遇な時期を迎えるなか再会し、自分たちのような苦しむ人々の力になれるように、ともに政治家を志した盟友であると、注目されるようになったさなかに隼人が語り、それが報道されたことで、理も有名になったと同時に二人の関係性までもが日本のかなりの人に知られるところとなったのだった。プラス奈穂子のサポートがあり、それによって人々の理に対する印象が良かったのはすでに述べた通りである。

 そんな隼人と二枚看板の地位を確立していた、少々大げさではあるが人によっては日本の政治における最後の希望というくらいの存在である理のその決断、そして他の立候補者は出ずに党首就任が決まったことにより、共生党の支持率の下落はぴたりと止まったのだった。また、よほどのことがなければ時間の経過とともに支持は再び上昇の軌道を描く雰囲気もあった。

 しかし、富沢を筆頭に、保守党はさすがにこれ以上の態度のひるがえしは無理と判断し、調和党とのタッグは揺るぎないことを鮮明にして、選挙戦の幕は開けたのだった。消費税に関しては、調和党のほうも連立の解消などはまっぴらごめんと思い至ったのであろうか、上げる方針であるというあいまいな文章にとどめるので、彼らの承諾を取りつけることに成功した。

 一方、もう選挙で負けることは許されない最大野党の民政党は、このままでは旗色が悪いために、やはり共生党と組むことを念頭に置き、それを考慮した候補者の調整をしていた。さらに隼人が党首の座から降り、早期の復帰も考えにくい状況になったことによって、以前猛反対したリベラル派議員たちを説得できる条件が整い、打診された理のほうも受け入れ、こちらも共生党と力を合わせて選挙戦に臨むと有権者にはっきり示すところにこぎつけたのだった。

 選挙期間に突入した当初は、ほぼ隼人を欠いた状態であっても、今回も共生党は相当議席を伸ばすのではとささやかれたが、理の手腕は未知数だし、隼人に比べて頼りない印象があるなどの声が聞かれ始め、世論調査では、保守党と調和党それぞれに投票するという人の合計と、民政党と共生党それぞれに投票すると答えた人の合計に差はほとんどなく、どちらが政権を獲るかまったく読めない展開となった。

 そして数週間が経ち、行われた投票の結果は、得票がすっかりバラけるかたちとなり、どこの政党どころか、連立与党の二党、民政と共生の二党、どちらの側の足した議席までも過半数に到達しない、異常とも言える事態となったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ