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2.消費税という税金について

実はこの消費税エッセイ、書きためしている間にうっかり投稿してしまいまして。なので、あまり書き進んでいない状態です。残り2話+あとがき1話を予定してて、次の1話は数日中(2、3日中)には更新できると思います。

それ以降は少し時間がかかると思いますが、そこは気長にお待ちいただければと思います。


では、今話は正直あまり考え方とかが記載されておらず退屈かもしれませんが、目を通してもらえると嬉しく思います。

 と、ちょっと長い前置きも終わって、ここからが本題です。まずは消費税について、ちょっと数字を出して説明してみたいと思います。


……実は以前書いた文章の焼き直しです。見覚えのある方はご容赦願います。


 というわけで、農家の人が1個50円(税込55円)でリンゴを卸業者に売り、その卸業者はそのリンゴを果物屋さんに80円(税込88円)で売って、最後に果物屋さんがそのリンゴを100円(税込110円)で売った場合の各業者さんが負担する消費税額を以下のようになります。


・100円(+消費税10円)のリンゴの税負担

 農家: 50円(+消費税 5円-控除0円=税負担5円)

 卸業者: 80円(+消費税 8円-控除5円=税負担3円)

 果物屋:100円(+消費税10円-控除8円=税負担2円)


①消費税として売買時に支払われた金額の合計額:23円

②仕入れ時に払った消費税として控除される金額:13円

③実際に税金として国に納められる金額:10円


 日本の消費税は、一般的に付加価値税と呼ばれている、ヨーロッパでは一般的に採用されている方式で、消費者が払う消費税を関係する業者が分割して負担する形式です。上記の例だと、果物屋さんが受け取る消費税10円を、農家/卸業者/果物屋さんが分割して負担していると、そんな感じですね。


 実際には商品一つ一つに対してこういう計算をしている訳ではなくて、売上の合計から消費税を、仕入れの合計から控除額をそれぞれにまとめて算出しています。が、ちょっとわかりにくくなるので、あえて一つの商品(100円のリンゴ)を例として書いています。


 上記の形が基本的な形で、最も正確に消費税を計算する形でもあります。この形を本則課税といい、こうやって消費税を計算する業者を本則課税業者といいます。多分一般的に消費税の説明をする場合はこの本則課税で説明をされると思いますが、この方法、実はしっかりと帳簿をつけないと計算できなかったりします。


……実は昔、帳簿をつけなくても商売できる制度がありまして。その名残りか、今でも超簡単な記帳でも商売できる制度があります。免税事業者や簡易課税事業者と言われている制度です。


 インボイスでまず騒ぎになったのはこの、免税事業者の取り扱いですね。……まあ、今ではほとんど話題になっていないと思いますが。


  ◇


 というわけで、卸業者さんが免税事業者だった場合の例です。インボイス施行前、経過措置、経過措置完了後と金額が変わっていくので、まとめて書いてみます。


・リンゴ:100円(+消費税10円)

 農家: 50円(+消費税 5円-控除0円=納税額5円)

 卸業者: 80円(免税事業者のため計算しない)

 果物屋:100円(+消費税10円-控除8/6/4/0円=納税額2/4/6/10円)


①消費税として売買時に支払われた金額:15円

②仕入れ時に払った消費税として控除される金額:8/6/4/0円

③実際に税金として国に納められる金額:7/9/11/15円


 ※端数は切り捨てています。


 免税事業者というのは、一言で言うと「消費税の計算をしなくていい」業者のことです。売上1000万円以下の事業主だけが選択できます。ぶっちゃけて言うと、「まともに事業を継続できるか微妙な規模の事業者」です。


……まあ、売上だけで判断するのもアレですが。ただ、副業とか始めたばかりとか、いつやめてもおかしくないとか、そういう事業者さんが多く該当するとも思います。


 インボイス施行前は、免税事業者は消費税を計算しないので、税務署に消費税を納めることもありませんでした。そのため、消費税として税務署に納める金額が減っていたと、そんな感じになります。まあ、預かった消費税を税として納めなくてもいい代わりに、自分が払った消費税も戻ってこなくなるので、言うほど得でもなかったのですが。


 この、今までは「預かった消費税を税として納めなくてもいい」が、インボイス制度だと「消費税を納めない場合は消費税を価格に上乗せしない」に変わる訳です。それによって、実質的に仕入れ側が消費税を負担することになります。


 上記例だと、卸業者さんが消費税の計算/納付をしない代わりに、果物屋さんの控除額が減っています。本来なら控除が無くなるのですが、一気に無くすと影響が大きいので、少しずつ減らすという経過措置がとられています。元々は8円だった控除額が6円(端数切り捨て)→4円と減らされて、6年後の2029年10月には控除ができなくなります。


 で、それに伴って、最終的に税務署に納める額も7円→9円→11円→15円と増えていきます。


 納付額が元の消費税額(10円)を超えてしまうのは、卸業者さんが支払うべき消費税は果物屋さんが代わりに負担したのに、卸業者さんが受け取る(差し引くべき)消費税控除は誰も受け取っていないからです。

 この控除額は、卸業者さんが帳簿をつけて計算しないとわかりません。なので、卸業者が控除/還付できなかった消費税の分はどうしても余計に徴税されることになります。


 要するに、インボイス制度によって、それまで「免税事業者の分だけ税金が納められない」のが「免税業者の分だけ税金が余計に納められる」制度に変わると、そんな感じです。


  ◇


 最後に、卸業者さんが簡易課税業者だった場合の例です。みなし仕入れ率というのを使って仕入れにかかる消費税を計算するのですが、これが90%(卸売業)〜40%(不動産業)と変化します。これも、ちょっとまとめて書いてみたいと思います。


・リンゴ:100円(+消費税10円)

 農家: 50円(+消費税 5円-控除0円=税負担5円)

 卸業者: 80円(+消費税 8円-控除7〜3円=税負担1〜5円)

 果物屋:100円(+消費税10円-控除8円=税負担2円)


①消費税として売買時に支払われた金額:23円

②仕入れ時に払った消費税として控除される金額:15〜11円

③実際に税金として国に納められる金額:8〜12円


 消費税の簡易課税というのは、要するに「簡易的な帳簿を使う業者のために売上から消費税の概算値を算出して納付する」形の計算方法です。これも小規模な業者のための制度で、具体的には売上が5000万円以下の事業者が選ぶことができます。


 その計算方法は、売上と業種から仕入れにかかった費用を推計するという方法で、ぶっちゃけ「サービス業なら原価はだいたい半分くらいだと思うから消費税も半分くらいじゃね?」みたいなノリです。なので、当然のようにズレるのですが、全く計算しない免税事業者と比べれば、ズレは少なくなります。


 あと、簡易的とはいえ卸業者さん自身が消費税の処理をするので、果物屋さんは普通に処理できる(仕入れ消費税を控除できる)のもメリットになるかと思います。


  ◇


 基本的に、消費者が払う消費税はどれも10円です。なのに、国庫に消費税として納められる課税額には結構な差が出ています。


実際に税金として国に納められる金額

・本則課税事業者:10円

・免税事業者(インボイス施行前):7円

・免税事業者(インボイス施行後):9→11→15円

・簡易課税事業者:8〜12円


 この中で、一番課税額が少ないのがインボイス施行前の免税事業者(7円)で、一番多いのがインボイス施行後で経過措置も終了した免税事業者(15円)です。多い方も少ない方も、免税事業者が特出しているという形ですね。


 もちろんこれは、今回のモデルケースでたまたま出た数字でしかありません。ただ、誤差の傾向としては本則課税事業者が一番誤差が出にくく、次いで簡易課税事業者、免税事業者は一番誤差が大きくなるのは間違いないと思います。


 ちなみに、この例では見落としやすいのですが、本則課税事業者は赤字の場合、消費者から受け取った消費税よりも仕入れで払った消費税が上回ることもありえます。その場合、消費税が返ってきたりします。


 なので、売上規模に関わらず、赤字の場合は本則課税が一番オトクだったりします。


  ◇


 なお、これは余談になりますが、輸出する場合は、その商品には消費税がかかりません。なので、売上の大部分を輸出で稼いでいるような企業は、消費税分は徴収されず、さらに還付を受けるという状態になります。具体的には以下のような感じですね。


・リンゴ:100円(+消費税 0円)

 農家: 50円(+消費税 5円-控除0円=税負担5円)

 卸業者: 80円(+消費税 8円-控除5円=税負担3円)

 果物屋:100円(+消費税 0円-控除8円=税負担-8円)


①消費税として売買時に支払われた金額:13円

②仕入れ時に払った消費税として控除される金額:13円

③実際に税金として国に納められる金額:0円


 果物屋としては、消費税を徴収していないし税務署にも納めない。でも、消費税として支払った分の消費税は還付される。一瞬おかしいように見えますが、果物屋は今までと同じように、支払った消費税を還付してもらっているだけです。その結果、実質税抜価格の80円(税込み88円-控除8円=80円)で仕入れて100円で売っているわけで、なんらおかしくありません。


 これをゼロ税率と言って、免税とは異なる扱いになっています。……普通の人が考えるであろう免税や非課税って、むしろこっちのはずなのですけどね。


  ◇


 消費税というのは「消費者が負担して企業が税として納める」税金です。これは見方を変えると「企業は消費税を負担していない」と言うことになります。


 この「企業は消費税を負担していない」という前提は、冒頭に挙げた交通費を考えてみればわかりやすいのではないかなと思います。


 あなたが通勤定期を買う時、その定期代の中には消費税が含まれています。そのお金は最終的には企業が交通費の名目であなたに支払われ、その中には消費税分も当然含まれています。

 ですが、企業はその交通費に含まれる消費税の分だけ、税金が安くなります。結果として、企業はあなたの交通費にかかる消費税を負担していないことになります。


 そしてこれは、交通費だけでなく、控除可能な全ての支出に対して言えることです。


 消費税を正しく処理した事業者は、消費税を負担していません。自分が支払った消費税は返してもらって、同時にお客さんから受け取った消費税はそのまま税務署に納める。その際、基本的に「税務署に納める消費税>返却される消費税」になるので、納税時に初めから引き算して納付しようと、そういう話です。


 逆に言えば、免税事業者や簡易課税事業者は、不正確な計算を許容することで、事業者に税負担が発生しています。その税負担を納税額を調整することで相殺しようというのがこれらの制度の趣旨で、ぶっちゃけ「納税額の割に税務処理にかかる費用があまりにも大きいからどんぶり勘定の方がみんなお得になるよね」と、そんな感じの制度です。


……まあ、免税事業者に対する「どんぶり勘定」は、インボイスによって、「事業者が得をする」から「税務署が得をする」に方向転換することになりましたが。


  ◇


 と、ここまで説明してきましたが。免税事業者や簡易課税事業者というのは要するにどんぶり勘定で、消費者が払った税額と実際に納付される額に差が出てきます。で、それはおかしいのではないかと、裁判が起きます。インボイス施行前の話なので、基本的に「消費税として払ったのにどんぶり勘定のせいで事業者に利益が発生するのはおかしい」という感じの裁判ですね。


 もう少し詳しく原告(消費税に反対する市民側)の主張を書くと、「消費税が間接税なら事業者は消費者から預かった税金を国に納める義務がある。政府広報も、受け取った消費税を預かり金、支払った消費税は仮払い金として処理するよう指導をしている。が、消費税法で定められた制度では免税事業者や簡易課税事業者のような形で、消費税として支払われた消費税分を国庫に納めず事業者が取得することを認めている。これは、いわゆるピンハネを許すものであり、これらは税の公平や財産権を定めた憲法に違反している(要約)」と、そんな感じの主張です。(他にもあるけど割愛)


 で、それに対して彼告 (国側)の反論がふるっていて「消費税を納めるのは消費者ではなく事業者ではあるが、その消費税分は価格に転嫁することを予定しているものである。消費税は、我が国の企業にとって馴染みの薄いものであり、その実施に当たっては種々の事務負担が生ずるのでその軽減を図る必要があるところ、特に人的・物的設備に乏しく相対的に見て納税関係コストが高く付く零細事業者に対しては、特にこの面で配慮がなされなければならないと考えられる(要約)」と、何気に「消費税は(消費者ではなく)事業者が払う税金だ」とはっきり言っています。その上で、その消費税は価格に転嫁することが前提だけど、零細事業者に関しては配慮が必要と、そんな感じの反論をしています。

 原告の「ピンハネを許すのはどうか」という訴えに対して、「そのピンハネは必要な配慮だ」と、そんな感じの反論ですね。


 で、この裁判の判決ですが、ざっくりと以下のような感じです。


 消費税は、事業者が消費者から徴収すべき税額や消費者から徹収しなかったことに対する罰則も規定されておらず、消費者に納税義務、事業者に徴税義務を定めていない。そのため、消費税を払っているのは事業者であると言える。だが、それらは取引の各段階において、納税義務者である事業者に対して課税がなされ最終的な負担を消費者に転嫁するという消費税の考え方と矛盾するものではない。

 また、事業者が納税義務者である以上、支払っている消費税も商品の対価の一部としての性質しか有しない。そのため、事業者は消費税分を過不足なく国庫に納付する義務を負うものではないし、消費税の具体的な転嫁額については法に定められておらず事業者の取引上の意思決定に任されている。そのため、様々な配慮の結果として事業者が過剰転嫁(いわゆるピンハネをしたような結果になることも否定できない。が、消費税分の価格への転嫁が必然的に過剰転嫁を生ぜしめるともいいがたく、消費税法自体が過剰転嫁を積極的に認めるものではないことは明らかである。


 ざっくり言うと、「確かに消費税は消費者が支払った税金が全て国庫におさめられない設計になっているけど、ピンハネを積極的に認めるとまではいいがたい」と、ちょっと玉虫色な判断をしつつ、国の言い分を認めたような感じになっています。


 まあ、この裁判自体が消費税率3%の頃のものなので、ちょっと注意して見ないといけないのも事実です。免税事業者や簡易課税事業者の条件も、今よりもかなり緩かった。当時の消費税は、今よりもより一部の大企業に事務負担が集中する、不公平な制度だったのも事実だと思います。


 でもまあ、なんとなくわかりますよね。新しく始まった消費税という制度に対して、「どの事業者もきっちり計算しろ」みたいなことを言うと、混乱が起きる。それは確かに公平かもしれないけど、それが望ましいかどうかは別問題ですよねと。


 始めはゆるく始めて、少しずつ厳しくしていく。移行措置としては自然な考え方だと思います。


 ただ、この裁判によって、「消費税は間接税ではない」「消費税は売上の一部であり、預かり金ではない」「益税はない」という、消費税やインボイス反対派が掲げる「消費税の真実」とやらが明らかになったそうでして、ことあるごとに引用されることになりました。


……正直、なんでそうなるのか、私にはよくわからないのですけどね。


  ◇


 と、消費税を語るのに必要な知識はこの位でしょうか。制度も色々と複雑ですし、このくらいは知っておかないと、巷にあふれる消費税論にはちょっと触れられないと思います。


 正直ね、これをね、Twitterみたいな強い文字数制限があるのに拡散しやすい媒体で主張するのは無理があるんじゃないかなぁと。で、「巷の主張はデマばかり」と、そんな感じになってしまったと。


 ホント、なんだかなぁと思います。

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