7.魔王城にて
「これは一体どういうことだ?」
魔王城に冷たい声が響く。
私たち四天王は、魔王様によって叱責を受けていた。
「新たに傘下に加わるはずだった鬼族達との交渉は決裂。財政管理も荒い。
さらにその影響で各地にて反乱が起こっている。なぜなのだ?」
「も、申し訳ございません」
最近、突然今までやっていた業務が上手くいかなくなった。
私だけでなく、他の四天王達もだ。
私は傘下の種族たちとの交渉を担当している。交渉で失敗したことは一度もない。
……いや、なかった。
なぜだか突然、数年前から進めていた鬼族との話し合いでいきなり門前払いされるようになった。
理由を聞いても教えてもらえない上に、最近は目も合わせてもらえない。
理由がわからないため対処することができず、結局交渉は決裂してしまった。
「ナバラがいた頃の方が勢いもあってよかったではないか。其方らが言うからあやつを四天王の座から下ろしたのだぞ」
ナバラという名前を聞いて私の右眉がピクリと跳ね上がる。
周りを見れば他の四天王もナバラへの嫌悪感を隠そうともしていない。
分かっている。この不景気はナバラがいなくなったせいだ。
私達は今まで面倒な仕事は全てナバラに押し付けていたため、まともに業務をこなしたためしがないのだ。
だが、あんな半人が大きい顔をして四天王を名乗っているのが許せなかった。
私達はあんな奴と違って高貴な血の生まれなのだ。一緒にしないでほしい。
私は首を垂れて跪く四天王達を横目で見る。
4人とも、魔界では有名な名家だ。
もちろん私の家も由緒あるものなのだ。
その中で、ただの平民、さらに半人などという卑しい生き物が混じっていては四天王の印象が悪くなる。
私達のやったことは正しいのだ。
ナバラを追い払ったのは魔王様のためだ。
でも、ナバラがいれば私の仕事もささっと片付けてくれて楽だったのにな。
いや、大丈夫だ。あんな奴より私達の方が有能なんだ。魔王様もきっと分かってくださる。
そう決意する四天王を、魔王様は酷く冷たい目で見下ろしていた。
「どうしたものかなぁ」
定期市の真っ只中、俺は深いため息をついた。
「ナバラ、大丈夫か?」
「ナバラさん大丈夫か?
肉1つオマケしてやるから元気出しな」
肉屋のおばさんとユアナが心配そうな目で覗き込んでくる。
いつもなら肉をオマケしてもらえて超ラッキーってことで元気になるのだが、こればかりはどうしようもならない。
「この辺に売りに出ている家はないか? この辺りの家の2階までの高さの天井があるもので」
昨日巨大花を宿に連れ帰ったら、天井が低くて中に入れなかったのだ。
ユアナが増えたことで部屋も狭くなっていたし、そろそろ自分の家を買った方がいい。
「売りに出ている家はいくつかあるけど、天井がねぇ。お役に立てなくてごめんよ。お肉もう1つオマケしくね」
「やっぱりないか……。ありがとう、おばさん」
「あんがと、おばさん」
朝から街中のギルドを回って探しているのだが、全く見つかる様子がない。
やっぱり巨大花が入るサイズの家はなかなかない。
巨大花には外にいてもらうか?
いや、でもそれだと周りの人を驚かせてしまうし、ユアナが怒るからなぁ。
「ナバラ、元気出してー。なんとかなるなる! 今日は帰ろ!」
ユアナが俺の頭にぶら下がって顔を覗き込む。
頭を撫でているつもりのようだが、身長が足りなくて足が浮いている。首に重みがかかって痛い。
「まぁ、そうだな。気長に行こう!」
探していたらそのうち見つかるだろう。今日は宿に帰って美味しい物でも食べよう。
「今夜は奮発して高い肉にしたぞ!」
「やったー!うまいにくー」
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